バレンタインが大変すぎて家出する話【流川親】
冬という季節は特別だ。
小さい頃からスキーなんかのウィンタースポーツが得意だったし、冬の冷たい澄み切った空気が大好きだ。
結婚式を挙げたのも、雪の積もった教会で、大切な我が子を授かったと分かったのは、もう春だと言うのに雪がちらつく日だった。
我が子は、お腹にいる時からとってもマイペースで、予定日を過ぎてもちっとも生まれる気配がなく、このままお正月明けないと産まれないかな…と思っていた矢先、なんと大みそかに陣痛が来て、年明けと共に我が子は産まれた。
大切な我が子が生まれてから、冬という季節がますます好きになった。
我が子を楓と名付けたのは、新婚旅行で行ったカナダの雪が積もった美しいメープルを見て、子どもが生まれたら、「楓」と名付けたいと決めていた。
楓の花言葉は「調和」「美しい変化」「大切な思い出」「遠慮」
そんな花言葉も気に入っていた。
しかし「調和」や「遠慮」の花言葉とは真逆で、マイペースで、自我が強い我が子は、おむつが取れたころから、一人で寝たがり、小学校でバスケに出会ってからは食う・寝る・バスケ以外のことには興味がないようで、息子の口から友達の話を聞いたことがない。
友達がいなくても、好きなことを見つけて、それに一生懸命な息子を応援してやるのは親の務めだと思うことにしている。
私の給料は、食費、バッシュ、トレーニングウエア、バスケットボール、プロテイン…あげればきりがないほどにあっという間に消えていくけれど、日本代表として活躍するほどの実力の息子を誇らしく思う。
そして、現在、高校三年生。
今日は、節分。
見ているこっちが呆れるくらいよく食べる息子の分は、安い恵方巻を二本だけでは足りないと思い、具だくさんの汁物にサラダチキンを乗せたサラダ…足りなければ、バナナやお菓子を摘まむだろう。
私と夫は楓より少し値のはる恵方巻を一本ずつ。
流行りに習って恵方を向いて、黙々と食べる。
ちょうど恵方の方には、カレンダー。
2月のカレンダーをみて、私は心の中でため息をついた。
ーー2月14日。
世の中の女の子たちは、この日を心待ちにしていることだろう。
けれど、親の欲目を除いても、イケメンに属するであろう息子を持つ母親にとっては、最悪な日なのだ。
冬が大好きなのに、このイベントのせいで2月は憂鬱だ。
高校に入ってから、全日本に選ばれ、テレビや雑誌に載るくらい有名になった息子は、羨ましいくらい…いや、うんざりするくらいよくモテるのだ。
私は、恵方巻を食べながら、
(今年こそは、この日一日、心安らかにすごせますように…)
叶うはずの無い願いを唱えながら、恵方巻を食べ終えた。
私の心中なんて知る由もない楓は、さっさと食事を終え、
「ごちそーさん…」
ぼそっと一言、言い残して部屋へと行こうとするので、
『あっ!豆は?』
「食う…」
そう言うので、豆の袋を渡すと、そのまま全部持って、部屋へと消えていった。
『やっぱり…もう一袋買っておいてよかった』
「本当にあいつはよく食べるよなぁ…」
夫ものんきなことを言って、お風呂に行ってしまう。
『まったく…私の気も知らないで…』
私のバレンタインデーの嫌な思い出は、楓が小学校の頃から始まった。
楓が小学生の頃は、親と一緒に家まで来た女の子に、有名店の高級チョコレートを渡されることもあり、毎年ホワイトデーのお返しに頭を悩ませた。
中学では、チョコレート禁止で渡せないからと、夕方からひっきりなしにインターフォンが鳴り、その度に女の子達からチョコレートを受け取った。
高校1年生のバレンタインは、朝から晩まで自宅に来る女の子が絶えず、遠方からも宅配便でチョコが届き、さらに学校から大量のチョコをマネージャーの子と抱えて帰宅した時には絶句した。
大量のチョコレートはそのままゴミにするわけにもいかず、ごみを分別し、食べられそうなものはおすそ分けし、寄付をしたりして、3月に入る頃まで、バレンタインのチョコレートと格闘した。
昨年も覚悟していた以上にチョコレートの量が増え、頭を抱えた。
そして、今年…
9月にはアメリカの大学に入学することが決まっているため、楓に直接渡せるバレンタインは今回が最後だ。
どんな量のチョコレートが届くのか……考えるだけでもぞっとする。
今年のバレンタインは平日のため、当日と次の日は有給を取ったが…まだその時の事は考えたくない…
『バレンタインなんてどっか行っちゃえ!』
と小声で何度も唱えながら、外に豆をまいたのだった。
そして、何の考えも思いつかないまま、2月13日の夜を迎えてしまった。
朝からため息しか出ない私と違い、夫も楓もいつも通り、のんびりとしていた。
はぁ…全く…
何度目か分からないため息をついて、もう腹をくくるしかないと、洗濯なんかを終えて、布団に入った。
先にいびきをかいて寝ている夫にも腹が立ってくる。
私はなかなか寝付けず、トイレに行こうと寝室を出ると、楓の部屋からは音楽の音が漏れ聞こえてきた。
また、音楽も電気もつけっぱなしで寝てる…!
仕方なく、部屋に入り、音楽を切り、ずれた布団を直し、電気を消して部屋を出たところで、私はひらめいた。
『家出!』
家にいなければ、バレンタインのチョコを受け取ったり、持って帰ってきたチョコレートの仕分けをしなくてすむじゃない!
私は、急いで着替えて、必要最低限のものを持ち、置手紙をし、家を飛び出した。
【家出します。探さないでください。15日中には戻ります】
0時を過ぎた住宅街は、しんとしていて、冷たい空気が肌を刺すけれど、それが反って心地良い。
私は、この年になって家出することになるなんて…と、楽しくなってウキウキしてくる。
携帯の電源を切り、駅に急ぎ足で向かい、終電に滑り込んで都心へと向かった。
適当な駅で降りるが、こんな時間にホテルを探すのももったいない気がして、近くのマンガ喫茶で仮眠をとることにした。
明日は、何しようかしら…
朝から暗かった気持ちが嘘のように晴れ晴れとして眠りについた。
マンガ喫茶での眠りは決して快適ではなかったが、バレンタインの憂鬱から解放された今朝は目覚めはいい。
ドリンクバーのコーヒーを飲んで、気になっていた雑誌やマンガを漁り、街へと繰り出した。
テレビでやっていたオシャレなカフェでランチをして、優雅な気分に浸る。
そして、ウィンドウショッピングをしようと、デパートに入った。
長年の習性で、最初にメンズのコーナーに自然と足が向いてしまう。
そういえば、また普段着がキツクなったって言ってたわね…
高校生になっても着る服に無頓着な楓は、私が量販店で適当に見繕っている。
スタイルも顔もいい息子は、シンプルな服でも十分似合う。
たまには少し良いものをと、大きいサイズの紳士服売り場を覗くと、ネクタイや小物売り場はそれなりに混んでいた。
バレンタインなんだよな…
急に現実に引き戻されるが、頭を振って気持ちを切り替える。
息子と夫の服を購入し、自分の分もと、比較的すいている婦人服売り場、雑貨や本屋など一通り回った。
夕食に居酒屋に入り、ビールで喉を潤した所で、急に心配になってきた。
我が家は、大丈夫かしら…
でも、今日も帰らないって決めたし…
迷った末、私は電源を切っていた携帯電話を入れた。
夫からは、何通ものメッセージと不在着信。
普段、連絡を寄越さない楓からも、【学校いけねぇ】とメッセージがきている。
私の不安は的中したようで、とうとう今年は、学校へ行けないくらいだったのね…
ということは、まだ、今帰るのは早いかもしれない。
夫と楓に【22時頃には帰ります】と送り、不安を払拭するように、追加でビールを頼んだ。
ほろ酔いで帰った方が、ショックも少ないだろう。
まぁ、来年からは楓もいないし、バレンタインの憂鬱からも解放されるだろうし…
前向きな気分になったところで、お会計をして、帰路に着いた。
自宅に着くと、家の電気がついていない。
二人とも家にいない…?
そう思いながら玄関に近づくと、
『えぇっ!?』
玄関だけでなく庭にまで大量のチョコレートや贈り物…
ポストには、大量の不在票まで…
一体、夫も楓も何やってたの!?
慌ててカギを開けて、中に入ると、暗闇に懐中電灯をともして、カップ麺をすする二人の姿が…
『どうしたの!?』
「おお…」
「帰ってきてくれたか!」
げっそりした二人の顔が輝くのを見て、申し訳なくなってしまう。
『家出して…ごめん。大変だったでしょう?』
「俺、仕事で家出ようとしたら、すでに何人もの女の子が待ち伏せしてて、怖くなって、会社行くのやめたんだ…楓もあんな殺気だった女の子たちがいっぱいの中、登校させられねぇよ…」
『そ…そんなに!?』
「インターホンも電話も、電源、切った…」
『そうだったの…でも、来年は楓もアメリカだし、来年は大丈夫よ!』
「俺、一人でバレンタイン大丈夫か…?」
不安そうな息子に、
『向こうではあんたのこと知ってる子なんてほとんどいないし、大丈夫よ!』
力強く言うと、楓は嬉しそうに、
「おお…早く行きてぇ…」
「そうだな…早くアメリカ行った方がいいぞ!」
どちらかというとアメリカ行きを反対していた夫まで、賛成し始めた。
寂しいけれど、来年のバレンタインはゆったり過ごせるはず。
そう思って、私は大量のチョコと格闘する覚悟を決めた。
――この時の私は、まだ来年の大変さを知る由もないのだった。
***
2022.2.13. cho (プライベッターより転載)
小さい頃からスキーなんかのウィンタースポーツが得意だったし、冬の冷たい澄み切った空気が大好きだ。
結婚式を挙げたのも、雪の積もった教会で、大切な我が子を授かったと分かったのは、もう春だと言うのに雪がちらつく日だった。
我が子は、お腹にいる時からとってもマイペースで、予定日を過ぎてもちっとも生まれる気配がなく、このままお正月明けないと産まれないかな…と思っていた矢先、なんと大みそかに陣痛が来て、年明けと共に我が子は産まれた。
大切な我が子が生まれてから、冬という季節がますます好きになった。
我が子を楓と名付けたのは、新婚旅行で行ったカナダの雪が積もった美しいメープルを見て、子どもが生まれたら、「楓」と名付けたいと決めていた。
楓の花言葉は「調和」「美しい変化」「大切な思い出」「遠慮」
そんな花言葉も気に入っていた。
しかし「調和」や「遠慮」の花言葉とは真逆で、マイペースで、自我が強い我が子は、おむつが取れたころから、一人で寝たがり、小学校でバスケに出会ってからは食う・寝る・バスケ以外のことには興味がないようで、息子の口から友達の話を聞いたことがない。
友達がいなくても、好きなことを見つけて、それに一生懸命な息子を応援してやるのは親の務めだと思うことにしている。
私の給料は、食費、バッシュ、トレーニングウエア、バスケットボール、プロテイン…あげればきりがないほどにあっという間に消えていくけれど、日本代表として活躍するほどの実力の息子を誇らしく思う。
そして、現在、高校三年生。
今日は、節分。
見ているこっちが呆れるくらいよく食べる息子の分は、安い恵方巻を二本だけでは足りないと思い、具だくさんの汁物にサラダチキンを乗せたサラダ…足りなければ、バナナやお菓子を摘まむだろう。
私と夫は楓より少し値のはる恵方巻を一本ずつ。
流行りに習って恵方を向いて、黙々と食べる。
ちょうど恵方の方には、カレンダー。
2月のカレンダーをみて、私は心の中でため息をついた。
ーー2月14日。
世の中の女の子たちは、この日を心待ちにしていることだろう。
けれど、親の欲目を除いても、イケメンに属するであろう息子を持つ母親にとっては、最悪な日なのだ。
冬が大好きなのに、このイベントのせいで2月は憂鬱だ。
高校に入ってから、全日本に選ばれ、テレビや雑誌に載るくらい有名になった息子は、羨ましいくらい…いや、うんざりするくらいよくモテるのだ。
私は、恵方巻を食べながら、
(今年こそは、この日一日、心安らかにすごせますように…)
叶うはずの無い願いを唱えながら、恵方巻を食べ終えた。
私の心中なんて知る由もない楓は、さっさと食事を終え、
「ごちそーさん…」
ぼそっと一言、言い残して部屋へと行こうとするので、
『あっ!豆は?』
「食う…」
そう言うので、豆の袋を渡すと、そのまま全部持って、部屋へと消えていった。
『やっぱり…もう一袋買っておいてよかった』
「本当にあいつはよく食べるよなぁ…」
夫ものんきなことを言って、お風呂に行ってしまう。
『まったく…私の気も知らないで…』
私のバレンタインデーの嫌な思い出は、楓が小学校の頃から始まった。
楓が小学生の頃は、親と一緒に家まで来た女の子に、有名店の高級チョコレートを渡されることもあり、毎年ホワイトデーのお返しに頭を悩ませた。
中学では、チョコレート禁止で渡せないからと、夕方からひっきりなしにインターフォンが鳴り、その度に女の子達からチョコレートを受け取った。
高校1年生のバレンタインは、朝から晩まで自宅に来る女の子が絶えず、遠方からも宅配便でチョコが届き、さらに学校から大量のチョコをマネージャーの子と抱えて帰宅した時には絶句した。
大量のチョコレートはそのままゴミにするわけにもいかず、ごみを分別し、食べられそうなものはおすそ分けし、寄付をしたりして、3月に入る頃まで、バレンタインのチョコレートと格闘した。
昨年も覚悟していた以上にチョコレートの量が増え、頭を抱えた。
そして、今年…
9月にはアメリカの大学に入学することが決まっているため、楓に直接渡せるバレンタインは今回が最後だ。
どんな量のチョコレートが届くのか……考えるだけでもぞっとする。
今年のバレンタインは平日のため、当日と次の日は有給を取ったが…まだその時の事は考えたくない…
『バレンタインなんてどっか行っちゃえ!』
と小声で何度も唱えながら、外に豆をまいたのだった。
そして、何の考えも思いつかないまま、2月13日の夜を迎えてしまった。
朝からため息しか出ない私と違い、夫も楓もいつも通り、のんびりとしていた。
はぁ…全く…
何度目か分からないため息をついて、もう腹をくくるしかないと、洗濯なんかを終えて、布団に入った。
先にいびきをかいて寝ている夫にも腹が立ってくる。
私はなかなか寝付けず、トイレに行こうと寝室を出ると、楓の部屋からは音楽の音が漏れ聞こえてきた。
また、音楽も電気もつけっぱなしで寝てる…!
仕方なく、部屋に入り、音楽を切り、ずれた布団を直し、電気を消して部屋を出たところで、私はひらめいた。
『家出!』
家にいなければ、バレンタインのチョコを受け取ったり、持って帰ってきたチョコレートの仕分けをしなくてすむじゃない!
私は、急いで着替えて、必要最低限のものを持ち、置手紙をし、家を飛び出した。
【家出します。探さないでください。15日中には戻ります】
0時を過ぎた住宅街は、しんとしていて、冷たい空気が肌を刺すけれど、それが反って心地良い。
私は、この年になって家出することになるなんて…と、楽しくなってウキウキしてくる。
携帯の電源を切り、駅に急ぎ足で向かい、終電に滑り込んで都心へと向かった。
適当な駅で降りるが、こんな時間にホテルを探すのももったいない気がして、近くのマンガ喫茶で仮眠をとることにした。
明日は、何しようかしら…
朝から暗かった気持ちが嘘のように晴れ晴れとして眠りについた。
マンガ喫茶での眠りは決して快適ではなかったが、バレンタインの憂鬱から解放された今朝は目覚めはいい。
ドリンクバーのコーヒーを飲んで、気になっていた雑誌やマンガを漁り、街へと繰り出した。
テレビでやっていたオシャレなカフェでランチをして、優雅な気分に浸る。
そして、ウィンドウショッピングをしようと、デパートに入った。
長年の習性で、最初にメンズのコーナーに自然と足が向いてしまう。
そういえば、また普段着がキツクなったって言ってたわね…
高校生になっても着る服に無頓着な楓は、私が量販店で適当に見繕っている。
スタイルも顔もいい息子は、シンプルな服でも十分似合う。
たまには少し良いものをと、大きいサイズの紳士服売り場を覗くと、ネクタイや小物売り場はそれなりに混んでいた。
バレンタインなんだよな…
急に現実に引き戻されるが、頭を振って気持ちを切り替える。
息子と夫の服を購入し、自分の分もと、比較的すいている婦人服売り場、雑貨や本屋など一通り回った。
夕食に居酒屋に入り、ビールで喉を潤した所で、急に心配になってきた。
我が家は、大丈夫かしら…
でも、今日も帰らないって決めたし…
迷った末、私は電源を切っていた携帯電話を入れた。
夫からは、何通ものメッセージと不在着信。
普段、連絡を寄越さない楓からも、【学校いけねぇ】とメッセージがきている。
私の不安は的中したようで、とうとう今年は、学校へ行けないくらいだったのね…
ということは、まだ、今帰るのは早いかもしれない。
夫と楓に【22時頃には帰ります】と送り、不安を払拭するように、追加でビールを頼んだ。
ほろ酔いで帰った方が、ショックも少ないだろう。
まぁ、来年からは楓もいないし、バレンタインの憂鬱からも解放されるだろうし…
前向きな気分になったところで、お会計をして、帰路に着いた。
自宅に着くと、家の電気がついていない。
二人とも家にいない…?
そう思いながら玄関に近づくと、
『えぇっ!?』
玄関だけでなく庭にまで大量のチョコレートや贈り物…
ポストには、大量の不在票まで…
一体、夫も楓も何やってたの!?
慌ててカギを開けて、中に入ると、暗闇に懐中電灯をともして、カップ麺をすする二人の姿が…
『どうしたの!?』
「おお…」
「帰ってきてくれたか!」
げっそりした二人の顔が輝くのを見て、申し訳なくなってしまう。
『家出して…ごめん。大変だったでしょう?』
「俺、仕事で家出ようとしたら、すでに何人もの女の子が待ち伏せしてて、怖くなって、会社行くのやめたんだ…楓もあんな殺気だった女の子たちがいっぱいの中、登校させられねぇよ…」
『そ…そんなに!?』
「インターホンも電話も、電源、切った…」
『そうだったの…でも、来年は楓もアメリカだし、来年は大丈夫よ!』
「俺、一人でバレンタイン大丈夫か…?」
不安そうな息子に、
『向こうではあんたのこと知ってる子なんてほとんどいないし、大丈夫よ!』
力強く言うと、楓は嬉しそうに、
「おお…早く行きてぇ…」
「そうだな…早くアメリカ行った方がいいぞ!」
どちらかというとアメリカ行きを反対していた夫まで、賛成し始めた。
寂しいけれど、来年のバレンタインはゆったり過ごせるはず。
そう思って、私は大量のチョコと格闘する覚悟を決めた。
――この時の私は、まだ来年の大変さを知る由もないのだった。
***
2022.2.13. cho (プライベッターより転載)
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