息子に彼女が出来たらしいので、嬉しくなって尾行までしちゃう話【三井親】
『何ニヤニヤしてんの?さっさとご飯食べちゃいなさいよ!』
私は、スマホを見ながら夕食を食べる息子の寿に声をかけた。
「んだよ?ニヤニヤなんかしてねーし…」
そう言いながら、スマホを置いてガツガツとご飯をかき込む息子を眺めた。
昔から分かりやすい子だったけれど…これは彼女が出来たな。
これは母親の勘というより、これだけ嬉しそうな顔をしていたら、誰だって分かるだろう。
鈍い父親だって、おそらく気付くはずだ。
寿は足の怪我でバスケから挫折して、一時期は家にも寄り付かず、いつ警察から電話がかかってくるかと冷や冷やしていたが、ある日を境にバスケ部に復帰し更生した。
そのきっかけを本人の口からあえて聞くことはしなかったが、迷惑かけたと謝ってきたあの日…
私は笑顔で『気にすることない!それよりバスケまた頑張りなさいよ!』って笑い飛ばしたが、後からこっそり涙した。
一緒に食卓を囲んで、こうしてまた会話が出来るようになって心の底からよかったと、息子を見つめていると、
「まだ、何か言いてぇこと、あんのかよ?」
『ふふっ、あんた、髪切って昔のお父さんに似てきたなって思ってたのよ』
「親父と!?いや…俺の方がカッコいいだろ?」
『はいはい、そうねぇ…』
くだらない会話をしているうちに、ごちそうさんと綺麗にご飯を平らげて、寿はテーブルにスマホを置いたままお風呂に行ってしまった。
良くないないことだと分かってはいても、好奇心にあらがえない私は、寿のスマホをそっと持ち上げた。
ロックは…パスワードじゃなくて、パターンね…
自分と同じように三井のMのパターンを入れてみる。
これで、違っていたら諦めようと思っていたけれど、ロックが解除されてしまって心臓がドキッと跳ねる。
少しだけ…
そう思って、ドキドキと画面をスワイプすると、彼女と一緒に映った写真が設定されていた。
寿、良い子みつけたじゃない…その可愛らしい彼女に笑みがこぼれる。
嬉しくなって、さらに息子に興味がそそられた私はネットの検索履歴も覗いてしまう。
バスケ、彼女、デート、巨乳、抜ける、傷、…
ふーん、寿も男の子だしねぇ…
ブッブブッとバイブ音が響いてメッセージが目に飛び込む。
【明日、〇〇駅に11時ね!】
女の子の名前からのメッセージ…ということは、明日はデートなのね。
私の頭の中は、このデートを覗きたい気持ちでいっぱいになって、尾行することを思いつく。
「おふくろ!俺のパンツがねぇ!」
お風呂場からの寿の声に、私ははっとして、スマホを閉じて元の位置に戻した。
『今持っていくわよ!』
息子のパンツを手渡してからも、明日はどう尾行してやろうかと、頭を悩ませてしまい、その夜は中々寝付けなかった。
次の日。
いつもより念入りに鏡に向かう寿に、にやけそうになる顔を必死で抑えながら、
『今日、部活は?』
なんて白々しく聞いてみた。
「今日は、赤木ん家でベンキョーしてくっから!」
確か赤木という子はバスケ部のキャプテンなはずだ。
嘘までついちゃって、可愛いんだから…
『勉強ねぇ…』
「疑ってんのかよ?俺、高3だぜ…」
『ま、頑張って!これ、ちゃんと手土産でも買ってくのよ!』
少し多めにお金を渡すと、寿はばつの悪そうな顔で、
「いいのかよ…」
なんて言いながらもちゃっかりお金を受け取って、出かけて行った。
私は寿を見送ってから少し変装をして、寿たちが待ち合わせをするという駅に向かうと、目立つ二人はすぐに見つかった。
待ち合わせていた女の子が、スマホの写真の女の子と同じことにほっとする。
親の欲目が入っているが、中々の男前な息子と人目を惹く彼女の組み合わせは周りも気になるようでちらちらと視線を注がれている。
そんな周囲の視線には全く気付く様子もなく、デレデレと嬉しそうな寿と彼女は歩き始めた。
…この調子なら、私の存在にも気付かなそうだ。
手もつながないで歩いている二人にヤキモキしていると、一瞬触れあった小指だけを絡めた。
『ちょっ…!』
思わず、ちゃんと恋人繋ぎでつなぎなさいよ!と声が出そうになるのを何とか飲み込んだ。
もう、あのバカ息子…案外奥手なのかしら…
心の中で悪態をつきながら、二人の後をついていくと、ファミレスに入っていった。
ここで、お昼を食べるのだろう。
店の外で、二人が席に案内されるのを待って、店内へ入る。
二人からバレないかつしっかり見えるところに座れるよう店員さんにお願いをして、私は偵察を続けた。
向かい合わせに座った二人は、注文を終えると、お互いノートや参考書を出し始めた。
…ベンキョーするというのは、本当だったのね。
私は心の中で寿に謝ると、自分の分の注文も済ませて、一息ついた。
それにしても、あんなにかわいい彼女なんだから、もうヤルことヤってるのかしら…
いやでもさっきの初々しい感じだとこれからかしら…
途端に心配になってくる。
…今日は、ドラッグストアのポイント5倍デーだから、アレ、ついでに買っておいてあげようかしら。
そんなことに思いをめぐらせているうちに、食事を終えた二人はノートと参考書を広げて、勉強を始めた。
が、息子の寿は、全く集中している様子はない。
鼻の下を伸ばして彼女をちらちらと見ていると思ったら、シャーペンの後ろで、彼女のほっぺをつつき始めた。
嬉しそうに微笑む彼女に気を良くしたのか、今度は何と胸元をつつこうとシャーペンを下ろしている。
私は、思わずガタっと席を立ってしまう。
一瞬、店内のお客さんの視線が集まるが、そそくさとドリンクバーを取りに行くふりをして、その場をやり過ごした。
はぁ…これ以上は、心臓に悪いからダメだわ…
そう思っていると、スマホに夫からのメッセージが届く。
【仕事が早く終わりそうだから、たまには外で飯食わないか?】
寿もデートしていることだし、私もデート気分で行こうかしら?
【たまにはデートってことで!】
私はそうメッセージを返し、ウキウキした気分で、ファミレスを後にした。
***
翌日、洗濯物を洗濯機にいれていると、息子のズボンのポケットにかさかさと何かが入っていた。
『まったく…』
ゴミだと思いポケットから取り出したそれは…小さな四角い包み……未使用のコンドームだった。
きちんと持ち歩いていることに安堵しつつも、あの後はきちんと勉強しただけで、昨日は未遂だったのね…と少し哀れな気持ちになるのであった。
2022.2.20. cho (プライベッターより転載)
私は、スマホを見ながら夕食を食べる息子の寿に声をかけた。
「んだよ?ニヤニヤなんかしてねーし…」
そう言いながら、スマホを置いてガツガツとご飯をかき込む息子を眺めた。
昔から分かりやすい子だったけれど…これは彼女が出来たな。
これは母親の勘というより、これだけ嬉しそうな顔をしていたら、誰だって分かるだろう。
鈍い父親だって、おそらく気付くはずだ。
寿は足の怪我でバスケから挫折して、一時期は家にも寄り付かず、いつ警察から電話がかかってくるかと冷や冷やしていたが、ある日を境にバスケ部に復帰し更生した。
そのきっかけを本人の口からあえて聞くことはしなかったが、迷惑かけたと謝ってきたあの日…
私は笑顔で『気にすることない!それよりバスケまた頑張りなさいよ!』って笑い飛ばしたが、後からこっそり涙した。
一緒に食卓を囲んで、こうしてまた会話が出来るようになって心の底からよかったと、息子を見つめていると、
「まだ、何か言いてぇこと、あんのかよ?」
『ふふっ、あんた、髪切って昔のお父さんに似てきたなって思ってたのよ』
「親父と!?いや…俺の方がカッコいいだろ?」
『はいはい、そうねぇ…』
くだらない会話をしているうちに、ごちそうさんと綺麗にご飯を平らげて、寿はテーブルにスマホを置いたままお風呂に行ってしまった。
良くないないことだと分かってはいても、好奇心にあらがえない私は、寿のスマホをそっと持ち上げた。
ロックは…パスワードじゃなくて、パターンね…
自分と同じように三井のMのパターンを入れてみる。
これで、違っていたら諦めようと思っていたけれど、ロックが解除されてしまって心臓がドキッと跳ねる。
少しだけ…
そう思って、ドキドキと画面をスワイプすると、彼女と一緒に映った写真が設定されていた。
寿、良い子みつけたじゃない…その可愛らしい彼女に笑みがこぼれる。
嬉しくなって、さらに息子に興味がそそられた私はネットの検索履歴も覗いてしまう。
バスケ、彼女、デート、巨乳、抜ける、傷、…
ふーん、寿も男の子だしねぇ…
ブッブブッとバイブ音が響いてメッセージが目に飛び込む。
【明日、〇〇駅に11時ね!】
女の子の名前からのメッセージ…ということは、明日はデートなのね。
私の頭の中は、このデートを覗きたい気持ちでいっぱいになって、尾行することを思いつく。
「おふくろ!俺のパンツがねぇ!」
お風呂場からの寿の声に、私ははっとして、スマホを閉じて元の位置に戻した。
『今持っていくわよ!』
息子のパンツを手渡してからも、明日はどう尾行してやろうかと、頭を悩ませてしまい、その夜は中々寝付けなかった。
次の日。
いつもより念入りに鏡に向かう寿に、にやけそうになる顔を必死で抑えながら、
『今日、部活は?』
なんて白々しく聞いてみた。
「今日は、赤木ん家でベンキョーしてくっから!」
確か赤木という子はバスケ部のキャプテンなはずだ。
嘘までついちゃって、可愛いんだから…
『勉強ねぇ…』
「疑ってんのかよ?俺、高3だぜ…」
『ま、頑張って!これ、ちゃんと手土産でも買ってくのよ!』
少し多めにお金を渡すと、寿はばつの悪そうな顔で、
「いいのかよ…」
なんて言いながらもちゃっかりお金を受け取って、出かけて行った。
私は寿を見送ってから少し変装をして、寿たちが待ち合わせをするという駅に向かうと、目立つ二人はすぐに見つかった。
待ち合わせていた女の子が、スマホの写真の女の子と同じことにほっとする。
親の欲目が入っているが、中々の男前な息子と人目を惹く彼女の組み合わせは周りも気になるようでちらちらと視線を注がれている。
そんな周囲の視線には全く気付く様子もなく、デレデレと嬉しそうな寿と彼女は歩き始めた。
…この調子なら、私の存在にも気付かなそうだ。
手もつながないで歩いている二人にヤキモキしていると、一瞬触れあった小指だけを絡めた。
『ちょっ…!』
思わず、ちゃんと恋人繋ぎでつなぎなさいよ!と声が出そうになるのを何とか飲み込んだ。
もう、あのバカ息子…案外奥手なのかしら…
心の中で悪態をつきながら、二人の後をついていくと、ファミレスに入っていった。
ここで、お昼を食べるのだろう。
店の外で、二人が席に案内されるのを待って、店内へ入る。
二人からバレないかつしっかり見えるところに座れるよう店員さんにお願いをして、私は偵察を続けた。
向かい合わせに座った二人は、注文を終えると、お互いノートや参考書を出し始めた。
…ベンキョーするというのは、本当だったのね。
私は心の中で寿に謝ると、自分の分の注文も済ませて、一息ついた。
それにしても、あんなにかわいい彼女なんだから、もうヤルことヤってるのかしら…
いやでもさっきの初々しい感じだとこれからかしら…
途端に心配になってくる。
…今日は、ドラッグストアのポイント5倍デーだから、アレ、ついでに買っておいてあげようかしら。
そんなことに思いをめぐらせているうちに、食事を終えた二人はノートと参考書を広げて、勉強を始めた。
が、息子の寿は、全く集中している様子はない。
鼻の下を伸ばして彼女をちらちらと見ていると思ったら、シャーペンの後ろで、彼女のほっぺをつつき始めた。
嬉しそうに微笑む彼女に気を良くしたのか、今度は何と胸元をつつこうとシャーペンを下ろしている。
私は、思わずガタっと席を立ってしまう。
一瞬、店内のお客さんの視線が集まるが、そそくさとドリンクバーを取りに行くふりをして、その場をやり過ごした。
はぁ…これ以上は、心臓に悪いからダメだわ…
そう思っていると、スマホに夫からのメッセージが届く。
【仕事が早く終わりそうだから、たまには外で飯食わないか?】
寿もデートしていることだし、私もデート気分で行こうかしら?
【たまにはデートってことで!】
私はそうメッセージを返し、ウキウキした気分で、ファミレスを後にした。
***
翌日、洗濯物を洗濯機にいれていると、息子のズボンのポケットにかさかさと何かが入っていた。
『まったく…』
ゴミだと思いポケットから取り出したそれは…小さな四角い包み……未使用のコンドームだった。
きちんと持ち歩いていることに安堵しつつも、あの後はきちんと勉強しただけで、昨日は未遂だったのね…と少し哀れな気持ちになるのであった。
2022.2.20. cho (プライベッターより転載)
1/1ページ