ピアス【仙道彰】
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「それ、似合ってないからやめなよ…」
『えっ…?』
私は、いつものように鏡を見ながらピアスを付けようとした手を止めた。
「◯◯ちゃんは、これ無しでも十分綺麗だよ」
歯の浮くようなセリフに説得力があるのもこの男、仙道彰の魅力の一つなのだろう。
私の手から、ひょいとピアスを取り上げたかと思うと、耳たぶをそっと撫でてくれた。
仙道くんとこんな風に朝を一緒に迎えたのは初めてだ。
一カ月前に別れた彼氏のことがようやく自分の中で蹴りがつき始め、もう恋愛するのはこりごりだと思っているのに、やっぱりどこか人恋しくて仕方がないと夜になる度に思っていた。
何かが変わると良いなと初めて一人でお酒を飲んで、帰り道にフラフラと良い気持ちで歩いているところにぶつかったのがこの仙道くんだ。
以前に同じ講義を取っていたことがあるというだけのただの顔見知りという仲ではあるけれど、仙道くんの方は大学バスケのエースで、学内でも有名人だ。
当然よくモテて、そんなに関わりのあるはずのない私ですら、仙道くん関連の色恋沙汰の話を聞いたことがあるくらいだ。
だから、お酒の入ったふわふわとした頭では後腐れなくお願いできそうというだけで、特に何をしたいという考えもなく、『一晩だけ、付き合って!』そんな風にお願いをしてしまったのだ。
「…まいったな」
ツンツンした頭の後ろをかきながら、困り顔をしているけれど、仙道くんの顔を見たら、このまま一人で誰もいない部屋に帰りたくないという気持ちがどんどん大きくなる。
『誰かに側にいて欲しいの!』
「俺、さっき振られたばっかりなんだけどな…」
『そ、それはごめん…でも、そういう時って一人の方が辛くない?私、何も言わないから、ただ、隣にいるだけだから…』
「そういうもんなのかな…」
『別にその…やましいことするつもりも…ないですし…』
「ははっ。そういうのって男のセリフだぜ」
ポンっと頭を撫でられて、何故か無性に安心する。
『やっぱり、一晩だけとはいえ一緒に過ごすの嫌かな?』
「そうだなぁ…気が変わった。良いよ」
『ありがとう』
二人並んで歩き出す。
改めて並んでみれば、仙道くんは背が高くて、街灯に照らされる影がべらぼうに長くて上がツンツンしている。
そんなことが何故か無性に面白くて、にこにこしてしまう。
「なんか面白い?」
『ごめん。頭がツンツンしてると思って』
「酔ってる?」
『うん。じゃなきゃ、こんんなこと、仙道くんにお願いできないよ』
「そっか。でも、◯◯ちゃんに誘ってもらえてよかったかもしれない。一人で家に帰る気分じゃなくなったから」
『ならよかった…』
私の家に帰って、お互いにシャワーを浴びて、来客用の布団を敷いて、電気を消した。
おやすみを言って寝るだけのはずが、仙道くんから声をかけられる。
「ごめん。手、繋いで寝てくれない?」
『いいよ…』
私が手を差し出すと仙道くんは思ったより力強くギュっと握ってくれる。
こうして手をつないだままだけれど、朝までぐっすり眠ることが出来た。
そして、ピアスのセリフに繋がる訳だ。
実はピアスホールは元彼と一緒に開けたものだ。
けれどその事はすっかり忘れていて、ピアスをつけるのが習慣になっていたから、仙道くんはもちろん元彼とかそういうのを知る由もないはずなのに、そんな風にいわれてめちゃくちゃ驚いている。
『たまにはピアスなしで出かけようかな』
「キラキラしたもんで彩らなくたって、○○ちゃんは大丈夫」
フワッと笑って言われて、急にグッとこみ上げて熱いものが頬を伝う。
「ゴメン、なんか変なこと言った?」
慌てて涙をぬぐう。
『ううん。なんか嬉しくて……仙道くんがモテるの分かる気がするよ』
「昨日振られたけどね…」
『きっと、すぐに良い人見つかるよ』
「◯◯ちゃんみたいな?」
『ふふ、本当に?』
「もっと一緒にいたいし、もっと喋ったりしたいって言ったら迷惑かな?」
鏡越しに真剣な表情の仙道くんと目が合う。
『私も同じこと、思ってる』
また涙が溢れそうになるのをこらえて、口角を上げる。
「よかったぁ…」
後ろから抱きすくめられて、耳たぶにキスを落とされる。
「これから、よろしくな…」
***
2022.7.24.
Inspired by 「ピアス」クボタカイ
『えっ…?』
私は、いつものように鏡を見ながらピアスを付けようとした手を止めた。
「◯◯ちゃんは、これ無しでも十分綺麗だよ」
歯の浮くようなセリフに説得力があるのもこの男、仙道彰の魅力の一つなのだろう。
私の手から、ひょいとピアスを取り上げたかと思うと、耳たぶをそっと撫でてくれた。
仙道くんとこんな風に朝を一緒に迎えたのは初めてだ。
一カ月前に別れた彼氏のことがようやく自分の中で蹴りがつき始め、もう恋愛するのはこりごりだと思っているのに、やっぱりどこか人恋しくて仕方がないと夜になる度に思っていた。
何かが変わると良いなと初めて一人でお酒を飲んで、帰り道にフラフラと良い気持ちで歩いているところにぶつかったのがこの仙道くんだ。
以前に同じ講義を取っていたことがあるというだけのただの顔見知りという仲ではあるけれど、仙道くんの方は大学バスケのエースで、学内でも有名人だ。
当然よくモテて、そんなに関わりのあるはずのない私ですら、仙道くん関連の色恋沙汰の話を聞いたことがあるくらいだ。
だから、お酒の入ったふわふわとした頭では後腐れなくお願いできそうというだけで、特に何をしたいという考えもなく、『一晩だけ、付き合って!』そんな風にお願いをしてしまったのだ。
「…まいったな」
ツンツンした頭の後ろをかきながら、困り顔をしているけれど、仙道くんの顔を見たら、このまま一人で誰もいない部屋に帰りたくないという気持ちがどんどん大きくなる。
『誰かに側にいて欲しいの!』
「俺、さっき振られたばっかりなんだけどな…」
『そ、それはごめん…でも、そういう時って一人の方が辛くない?私、何も言わないから、ただ、隣にいるだけだから…』
「そういうもんなのかな…」
『別にその…やましいことするつもりも…ないですし…』
「ははっ。そういうのって男のセリフだぜ」
ポンっと頭を撫でられて、何故か無性に安心する。
『やっぱり、一晩だけとはいえ一緒に過ごすの嫌かな?』
「そうだなぁ…気が変わった。良いよ」
『ありがとう』
二人並んで歩き出す。
改めて並んでみれば、仙道くんは背が高くて、街灯に照らされる影がべらぼうに長くて上がツンツンしている。
そんなことが何故か無性に面白くて、にこにこしてしまう。
「なんか面白い?」
『ごめん。頭がツンツンしてると思って』
「酔ってる?」
『うん。じゃなきゃ、こんんなこと、仙道くんにお願いできないよ』
「そっか。でも、◯◯ちゃんに誘ってもらえてよかったかもしれない。一人で家に帰る気分じゃなくなったから」
『ならよかった…』
私の家に帰って、お互いにシャワーを浴びて、来客用の布団を敷いて、電気を消した。
おやすみを言って寝るだけのはずが、仙道くんから声をかけられる。
「ごめん。手、繋いで寝てくれない?」
『いいよ…』
私が手を差し出すと仙道くんは思ったより力強くギュっと握ってくれる。
こうして手をつないだままだけれど、朝までぐっすり眠ることが出来た。
そして、ピアスのセリフに繋がる訳だ。
実はピアスホールは元彼と一緒に開けたものだ。
けれどその事はすっかり忘れていて、ピアスをつけるのが習慣になっていたから、仙道くんはもちろん元彼とかそういうのを知る由もないはずなのに、そんな風にいわれてめちゃくちゃ驚いている。
『たまにはピアスなしで出かけようかな』
「キラキラしたもんで彩らなくたって、○○ちゃんは大丈夫」
フワッと笑って言われて、急にグッとこみ上げて熱いものが頬を伝う。
「ゴメン、なんか変なこと言った?」
慌てて涙をぬぐう。
『ううん。なんか嬉しくて……仙道くんがモテるの分かる気がするよ』
「昨日振られたけどね…」
『きっと、すぐに良い人見つかるよ』
「◯◯ちゃんみたいな?」
『ふふ、本当に?』
「もっと一緒にいたいし、もっと喋ったりしたいって言ったら迷惑かな?」
鏡越しに真剣な表情の仙道くんと目が合う。
『私も同じこと、思ってる』
また涙が溢れそうになるのをこらえて、口角を上げる。
「よかったぁ…」
後ろから抱きすくめられて、耳たぶにキスを落とされる。
「これから、よろしくな…」
***
2022.7.24.
Inspired by 「ピアス」クボタカイ
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