神くんとの一日【神宗一郎】
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【陽炎が揺らす帰り道】
「こんな時間に帰るの、久しぶりだな」
『そんな日に私なんかと帰る約束してよかったの?』
「迷惑だったかな?」
夕方とはいえまだまだ日差しが強くて、アスファルトにはゆらゆらと陽炎が見える。
神くんと一緒に帰ることになるとは今朝の私は微塵も思っていなくて、暑さで砂漠のオアシスの蜃気楼を見ているみたく、目の前の神くんは幻ではないだろうか?
そんな風に心の中では目まぐるしく考え事をして、暑さから来る汗と冷や汗が混ざって背中はぐっしょりだ。
そんなんだから、神くんの迷惑だったかの問いになんて返したらいいか分からなくなって、押し黙ってしまう。
もちろん、迷惑だなんて微塵も思っていないけど、神くんと一緒に帰れてうれしいと正直に話すには理由を聞かれた時に困ってしまう。
「大丈夫?」
心配そうに神くんに顔を覗き込まれて、もう心臓が飛び出るくらいにヒッと息を飲んでしまう。
「俺、嫌われてたのかな…?奈保ちゃんから、好意を寄せられてると思ってたんだけどな…」
『じじじ神くん!?』
「違った?」
違うも何も、私が神くんのこと好きだってバレてたということだろうか?
それにいきなり名前にちゃん付けで呼ばれてるし……
『ちょっと…待って、頭が、追い付かない…』
何とか絞りだした声は、めちゃくちゃ震えている。
「じゃ、せっかくだしどっか寄って帰ろうか?」
私と違って神くんは口元には余裕の笑みを携えて、涼しい顔で提案してくる。
海南生がよく行くファーストフード店に神くんが向かうというので、私はもうどうにでもなれという気持ちで後に続いた。
神くんは背が高いし、海南のバスケ部のレギュラーでそれなりに有名人だから、先に陣取っているいくつかのグループの物珍しそうな視線が痛い。
「ここでいい?」
幾分か奥まった席が空いているのにほっとしたけれど、ここで神くんとお喋りって…デートみたいじゃん!とドキドキが止まらない。
「初デートってことで俺におごらせて!」
この神くんのセリフは空耳だっただろうか?
私の願望が現実のものになっていくこの感じをどう表現すればいいのか分からないが、とにかく今日は一生分の運を使い果たしたに違いない。
神くんはハンバーガーのセットを二つトレイに乗せて戻ってきた。
「オレンジジュースでよかった?」
『う、うん』
「よかった。好きそうなイメージだったから」
『あ、ありがとう!』
神くんがジュースにストローを差すのを見て、私も同じようにして、ごくごくと飲んだ。
やっと少し涼しいと感じるまでになってきた。
「早速だけど、奈保ちゃんは俺と付き合うってことでいいよね?」
ハンバーガーはテリヤキでいいよね?と同じ雰囲気でなんてことないように聞かれて、ポテトに伸ばそうとした手が止まる。
「今日一日、俺にドキドキしてくれた?」
この問いにこくこくと頷くので精一杯だ。
私は手を引っ込めて両手でジュースのカップを持つ。
神くんは長いポテトを半分だけ食べて、私の口許に差し出す。
「付き合うのOKなら食べて…」
神くんの真剣な表情に私はそっと口を開けた。
嬉しそうに笑うと神くんはポテトを口にいれてくれる。
嬉しいのと恥ずかしいのと信じられない気持ちでごっちゃになって、熱いものが込み上げて、神くんとハンバーガーが乗ったテーブルが陽炎のように揺らめいて見えた。
こうしてあっという間に私と神くんは恋人同士になった訳だけれど、イタズラ好きでちょっと嫉妬深い彼氏に振り回される日々が始まるなんて、全く想像していなかったのはここだけの秘密だ。
***
2022.7.19.
「こんな時間に帰るの、久しぶりだな」
『そんな日に私なんかと帰る約束してよかったの?』
「迷惑だったかな?」
夕方とはいえまだまだ日差しが強くて、アスファルトにはゆらゆらと陽炎が見える。
神くんと一緒に帰ることになるとは今朝の私は微塵も思っていなくて、暑さで砂漠のオアシスの蜃気楼を見ているみたく、目の前の神くんは幻ではないだろうか?
そんな風に心の中では目まぐるしく考え事をして、暑さから来る汗と冷や汗が混ざって背中はぐっしょりだ。
そんなんだから、神くんの迷惑だったかの問いになんて返したらいいか分からなくなって、押し黙ってしまう。
もちろん、迷惑だなんて微塵も思っていないけど、神くんと一緒に帰れてうれしいと正直に話すには理由を聞かれた時に困ってしまう。
「大丈夫?」
心配そうに神くんに顔を覗き込まれて、もう心臓が飛び出るくらいにヒッと息を飲んでしまう。
「俺、嫌われてたのかな…?奈保ちゃんから、好意を寄せられてると思ってたんだけどな…」
『じじじ神くん!?』
「違った?」
違うも何も、私が神くんのこと好きだってバレてたということだろうか?
それにいきなり名前にちゃん付けで呼ばれてるし……
『ちょっと…待って、頭が、追い付かない…』
何とか絞りだした声は、めちゃくちゃ震えている。
「じゃ、せっかくだしどっか寄って帰ろうか?」
私と違って神くんは口元には余裕の笑みを携えて、涼しい顔で提案してくる。
海南生がよく行くファーストフード店に神くんが向かうというので、私はもうどうにでもなれという気持ちで後に続いた。
神くんは背が高いし、海南のバスケ部のレギュラーでそれなりに有名人だから、先に陣取っているいくつかのグループの物珍しそうな視線が痛い。
「ここでいい?」
幾分か奥まった席が空いているのにほっとしたけれど、ここで神くんとお喋りって…デートみたいじゃん!とドキドキが止まらない。
「初デートってことで俺におごらせて!」
この神くんのセリフは空耳だっただろうか?
私の願望が現実のものになっていくこの感じをどう表現すればいいのか分からないが、とにかく今日は一生分の運を使い果たしたに違いない。
神くんはハンバーガーのセットを二つトレイに乗せて戻ってきた。
「オレンジジュースでよかった?」
『う、うん』
「よかった。好きそうなイメージだったから」
『あ、ありがとう!』
神くんがジュースにストローを差すのを見て、私も同じようにして、ごくごくと飲んだ。
やっと少し涼しいと感じるまでになってきた。
「早速だけど、奈保ちゃんは俺と付き合うってことでいいよね?」
ハンバーガーはテリヤキでいいよね?と同じ雰囲気でなんてことないように聞かれて、ポテトに伸ばそうとした手が止まる。
「今日一日、俺にドキドキしてくれた?」
この問いにこくこくと頷くので精一杯だ。
私は手を引っ込めて両手でジュースのカップを持つ。
神くんは長いポテトを半分だけ食べて、私の口許に差し出す。
「付き合うのOKなら食べて…」
神くんの真剣な表情に私はそっと口を開けた。
嬉しそうに笑うと神くんはポテトを口にいれてくれる。
嬉しいのと恥ずかしいのと信じられない気持ちでごっちゃになって、熱いものが込み上げて、神くんとハンバーガーが乗ったテーブルが陽炎のように揺らめいて見えた。
こうしてあっという間に私と神くんは恋人同士になった訳だけれど、イタズラ好きでちょっと嫉妬深い彼氏に振り回される日々が始まるなんて、全く想像していなかったのはここだけの秘密だ。
***
2022.7.19.
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