Heavy Smoker【鉄三】R15
「吸いすぎだっつーの…」
眉間にしわを寄せた三井が俺の両手をがしっと掴んで、新しい煙草に手を伸ばそうとしたのを止められた。
「俺はいーんだよ」
そう言いながら、男にしては綺麗な三井の手を振りほどいて、四角い箱に手を伸ばしたけれど、あいにくそれは空っぽだった。
ちっと舌打ちして俺が立ち上がるより早く、三井は立ち上がって、煙草のカートンがしまってある棚へと向かった。
「取ってくれるのか?」
「ん?まぁな…」
新しい煙草の箱を三井が取り出すと慣れない手つきで封を切って、綺麗に並んだその中から、一本取りだした。
「なぁ、俺も吸っても良いだろ?火、着けてくれよ」
そう言って、三井は煙草を咥えて俺の方へと顔を向けたので、その煙草を取り上げる。
「てめぇはまだ子どもだからダメだ…」
「ちぇっ…鉄男は意外と固いよな…」
口をとがらせて、三井は文句を言った。
「おめーには吸って欲しくないんだよ」
そう言って、取り上げた煙草に火をつけて、その煙を深く吸い込んで、ふぅっと三井とは逆の方を向いて細く吐き出した。
「なんだよ、それ…」
三井はふてくされて、煙草の箱を持ったまま、どかっと腰を下ろした。
出会った頃より大分伸びた髪がさらさらと揺れるのを見て、思わずその髪に触れたくなって手を伸ばす。
そっと触れるのははばかられて、父親が子供を褒めるみたいに、わしゃわしゃとその頭を撫でた。
「子ども扱いすんな…」
きっと睨みつける態度に思わず笑みが漏れる。
「子どもだろ?」
「鉄男もそんなに変わらないだろ?」
「どうだろうな…」
「俺はもっと鉄男のこと知りてぇって思ってるんだけど…」
伏し目がちに三井はつぶやく。
近頃の三井は、俺とダチ以上の関係になることを望んでいるんじゃないかって感じることが増えた。
俺は、そんな三井のことを気持ち悪いとかそういう感情はなく素直に嬉しいと思っている。
でも、三井は寂しい心の隙間を俺に埋めて欲しいだけだっていうことも分かっている。
いつかは俺のことが必要なくなる時が来るのもそう遠い話じゃねぇだろうっつうのも何となく…
吸い殻がたまった銀色の灰皿に、短くなったタバコをこすりつけて火を消す。
「鉄男、俺のこと嫌いか?」
「なんだ?」
「嫌いかって聞いてんだよ」
「おめーはどうなんだよ?」
「俺は……」
三井が押し黙ったので、部屋に気まずい空気が流れるのが嫌で煙草を吸おうとするけれど、箱は三井に握られたままだ。
「そんなにこれがいいのかよ…」
すぐにその箱を渡してくれると思ったが、箱は三井の手によってゴミ箱に向かって投げられた。
箱は綺麗な弧を描いて、コンっと静かな音を立ててゴミ箱に入る。
「な…」
何すんだと文句を言おうとした俺の口は、三井の唇に塞がれた。
ちゅっと音を立ててすぐ唇は離れたけれど、三井は熱っぽい目で俺を見つめる。
「鉄男のこと、好きだっつったらもう、ここには来れねぇ?」
「んなことねぇよ…おまえが来たい時に来ればいい」
「よかった…」
三井の安堵の表情に吸い寄せられるように、俺は三井の唇を奪った。
お互い味わう様に深く唇を合わせて、貪りあう。
最初たどたどしかった舌は、どんどん大胆になって俺を求めるけれど、その想いにヒリっと胸が痛んで、やや強引に唇を離した。
不満そうな三井の表情に気付かないふりをして俺は立ち上がって、新しい煙草の箱を取りに行く。
「もう、今日は帰れ…」
「泊ってく」
「親は?」
「鉄男ともっと一緒にいてぇ…」
こいつのまっすぐな気持ちをどう受け止めていいのか…
もちろん、抱いてやることだって出来なくはねぇが、危なっかしいこいつにセックスを教えるのは早い気がする。
まだ、俺の気持ちだって、ただの情けなのか愛情なのか確証を持てずにいる。
でも、不安そうな三井についつい甘くなってしまう。
「今日は泊っていけ。明日は帰んだぞ」
「鉄男、ありがとな」
これからも俺はこいつに振り回されることになるのかもしれない。
そんな日々も良い気がして、新しい煙草に火をつけて、苦笑いをした。
***
2021.11.27.
Inspired by に/しな「ヘビース/モーク」
眉間にしわを寄せた三井が俺の両手をがしっと掴んで、新しい煙草に手を伸ばそうとしたのを止められた。
「俺はいーんだよ」
そう言いながら、男にしては綺麗な三井の手を振りほどいて、四角い箱に手を伸ばしたけれど、あいにくそれは空っぽだった。
ちっと舌打ちして俺が立ち上がるより早く、三井は立ち上がって、煙草のカートンがしまってある棚へと向かった。
「取ってくれるのか?」
「ん?まぁな…」
新しい煙草の箱を三井が取り出すと慣れない手つきで封を切って、綺麗に並んだその中から、一本取りだした。
「なぁ、俺も吸っても良いだろ?火、着けてくれよ」
そう言って、三井は煙草を咥えて俺の方へと顔を向けたので、その煙草を取り上げる。
「てめぇはまだ子どもだからダメだ…」
「ちぇっ…鉄男は意外と固いよな…」
口をとがらせて、三井は文句を言った。
「おめーには吸って欲しくないんだよ」
そう言って、取り上げた煙草に火をつけて、その煙を深く吸い込んで、ふぅっと三井とは逆の方を向いて細く吐き出した。
「なんだよ、それ…」
三井はふてくされて、煙草の箱を持ったまま、どかっと腰を下ろした。
出会った頃より大分伸びた髪がさらさらと揺れるのを見て、思わずその髪に触れたくなって手を伸ばす。
そっと触れるのははばかられて、父親が子供を褒めるみたいに、わしゃわしゃとその頭を撫でた。
「子ども扱いすんな…」
きっと睨みつける態度に思わず笑みが漏れる。
「子どもだろ?」
「鉄男もそんなに変わらないだろ?」
「どうだろうな…」
「俺はもっと鉄男のこと知りてぇって思ってるんだけど…」
伏し目がちに三井はつぶやく。
近頃の三井は、俺とダチ以上の関係になることを望んでいるんじゃないかって感じることが増えた。
俺は、そんな三井のことを気持ち悪いとかそういう感情はなく素直に嬉しいと思っている。
でも、三井は寂しい心の隙間を俺に埋めて欲しいだけだっていうことも分かっている。
いつかは俺のことが必要なくなる時が来るのもそう遠い話じゃねぇだろうっつうのも何となく…
吸い殻がたまった銀色の灰皿に、短くなったタバコをこすりつけて火を消す。
「鉄男、俺のこと嫌いか?」
「なんだ?」
「嫌いかって聞いてんだよ」
「おめーはどうなんだよ?」
「俺は……」
三井が押し黙ったので、部屋に気まずい空気が流れるのが嫌で煙草を吸おうとするけれど、箱は三井に握られたままだ。
「そんなにこれがいいのかよ…」
すぐにその箱を渡してくれると思ったが、箱は三井の手によってゴミ箱に向かって投げられた。
箱は綺麗な弧を描いて、コンっと静かな音を立ててゴミ箱に入る。
「な…」
何すんだと文句を言おうとした俺の口は、三井の唇に塞がれた。
ちゅっと音を立ててすぐ唇は離れたけれど、三井は熱っぽい目で俺を見つめる。
「鉄男のこと、好きだっつったらもう、ここには来れねぇ?」
「んなことねぇよ…おまえが来たい時に来ればいい」
「よかった…」
三井の安堵の表情に吸い寄せられるように、俺は三井の唇を奪った。
お互い味わう様に深く唇を合わせて、貪りあう。
最初たどたどしかった舌は、どんどん大胆になって俺を求めるけれど、その想いにヒリっと胸が痛んで、やや強引に唇を離した。
不満そうな三井の表情に気付かないふりをして俺は立ち上がって、新しい煙草の箱を取りに行く。
「もう、今日は帰れ…」
「泊ってく」
「親は?」
「鉄男ともっと一緒にいてぇ…」
こいつのまっすぐな気持ちをどう受け止めていいのか…
もちろん、抱いてやることだって出来なくはねぇが、危なっかしいこいつにセックスを教えるのは早い気がする。
まだ、俺の気持ちだって、ただの情けなのか愛情なのか確証を持てずにいる。
でも、不安そうな三井についつい甘くなってしまう。
「今日は泊っていけ。明日は帰んだぞ」
「鉄男、ありがとな」
これからも俺はこいつに振り回されることになるのかもしれない。
そんな日々も良い気がして、新しい煙草に火をつけて、苦笑いをした。
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2021.11.27.
Inspired by に/しな「ヘビース/モーク」
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