ハンター【河田雅史】
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Side. 麻紀麻紀
昔から、人一倍の怖がりで、お化けが出るんじゃないか、泥棒が来るんじゃないか、怖い思いをするんじゃないかと怯えていた。
幼いころは、怖がってよく泣く私を両親は心配して、ぎゅっと抱きしめたりしてくれたが、大きくなってさすがにそんなことを親に求めるのは恥ずかしくて、ヒーローが登場する本や冒険の本なんかを読んで気を紛らわし、いつか私を守ってくれる人が現れてほしいと願っていた。
友達がいないわけではなかったけれど、中学にもなると私はどうも人目を惹くらしく、男子からは告白されたり、女子からはやっかみをうけたりすることが増えた。
そのため、なるべく目立たないようメガネをかけ、顔を隠すような髪型をして、中高と過ごした。
大学に入って、やっとそんな狭い世界から解放され、好きな髪形をして、好きな格好をして生活できるようになった。
大学生にもなれば、それほど友人とつるむ必要もなく、講義をまじめに受けて、バイトをして、少しずつ自立した大人に近づいているのが嬉しかった。
自分が好きなように生活できるようになって、また、告白されることも増えてきた。
怖がりで寂しがりやな自分を受け入れてくれる人がいるのではないかという淡い期待もあるが、告白された人にそれを見出すことができず、断ってばかりいた。
私の見た目だけで判断されていると感じたからだ。
どんな人なら、OKしようかと考えていたら、狩りができるくらい逞しい人がいいと、思いたった。
どんな状況になっても、サバイバル出来そうな男の人…
そうして、また告白されたとき、ちょうど目にした鴨を見て思い立って聞いてみた。
『鴨、仕留められる?』
さすがに告白してきた男の子は驚いたようで、黙ってしまい、私はちょっとがっかりして、告白を断った。
変な事言っちゃったかな…そう後悔し始めたころ、木陰から音を立てて大きな男の子が姿を表してびっくりした。
講義が一緒の彼は大きくて否応なしに目立っていたので存在は知っていた。
ちょっとした知り合いに、告白を断ったところも聞かれてたなんて…と思いながら、会話をしているうちに、鴨を仕留められるというのにさらに驚いた。
…こんなところに運命の人がいた。
そう思わずにはいられなかった。
実際に仕留めた彼を見て、もうこの人しかいないと思った。
自分かこんなに積極的な人間だとは思わなかったけれど、この機会を逃したら、一生後悔しそうな気がして、告白した。
実際、彼のバスケをしている姿を見て、どうしようもないくらいかっこよくて、あふれる気持ちを止められなくなった。
強引に家に押しかけて、ご飯を作って、食べ始めてから、私はやっと我に返った。
うまいうまいとおいしそうにご飯を平らげている雅史くんを見て、急に恥ずかしくなってきた。
雅史くんなんて気やすく呼んで、しかも彼の気持ちを考えずに彼女気分で…
考えれば考えるほど、自分がなんてことしちゃったんだろうという気になってしまう。
彼は私の勢いで流されただけに決まってる。
「麻紀?ど…どうした?」
慌てたような雅史くんの声に、私の目から涙がこぼれた。
『ご…ごめんなさい。私、雅史くんの気持ちも考えないで、勝手な事ばっかして。今考えたら、なんだか悪いことしちゃったと急に思えてきちゃって…』
私は、立ち上がって荷物をまとめ始めた。
雅史くんは、呆然としている。
『本当にごめんなさい』
靴を履いて、玄関を出ようとする私に雅史くんは待ってといったような気がしたけれど、これ以上迷惑にならないうちに早く帰らなきゃと焦った私には分からなかった。
鍵を開けて、ドアノブに手をかけたとき、
「待てって!」
そう雅史くんの声がして、彼の手が私の腕をつかんだ。
『私の思いばっかりぶつけて、雅史くん…あっ、河田さんの気持ちも考えずに本当に迷惑かけてごめんなさい!』
そう言って、帰ろうとするけれど、彼は離してくれなかった。
「俺の話も聞いて」
そう言われても、振り向くことが出来ずにいると、抱きしめられた。
逞しい雅史くんの腕の中に閉じ込められて、やっと落ち着いてきた。
『本当に…ごめんなさい…』
また雅史くんに迷惑をかけたと思うと涙が浮かんできた。
「謝ってほしい訳じゃない。俺も急展開すぎて色々頭が追い付いてないけど、一つだけはっきりしてることがあるから聞いてほしい」
『…なあに?』
涙をぬぐって、雅史くんと向き合った。
本当は迷惑だとか、もう家に来るなとか言われるんだろうと思い、拳をぎゅっと握って雅史くんを見上げた。
「今日初めて会話したばかりで、麻紀のこと、まだ知らないことばっかだけど、俺は…俺は、麻紀のことが好きだ!」
そう力強く言われた。
『えっ…』
迷惑がられてるものだと思っていた私は、好きという言葉が信じられなかった。
『雅史くんが、私を…す…き?』
気が抜けた私は、玄関でへなへなと座り込んでしまった。
「麻紀、大丈夫か?」
こくこくと頷いてはいるが、私はまだ雅史くんの言葉を信じきれずにいた。
『私の事…迷惑じゃないの?』
「はっ?迷惑って、麻紀が?」
『私、勝手なこといっぱいしちゃったし…』
雅史くんは、にかっと笑って、私の頭をポンポンすると、
「うはっ、変な奴だな。あんなに積極的だったのに急にめそめそしだして…大丈夫。どんな麻紀でも俺は好きだ」
『本当に?ずっと一緒にいてもいい?』
「もちろんだべ!まぁ…バスケで忙しいかもしれんが…」
『大好き!』
私は、嬉しくなって、雅史くんに抱きついた。
雅史くんの私への気持ちを聞いて、私の頭の中はまた暴走し始めた。
ここに転がり込もう!そうすれば、ずっと一緒にいられる!
親は…きっとうるさく言わないだろう。
『雅史くん、私、今日からここに住んでいい?今から家に荷物取りに行くから付いてきて!』
「へっ?」
『そうと決まれば、行こう!』
そう言って、私は雅史くんの手を取って、家を出ようとした。
雅史くんはあきれたような顔をしていたが、何を言っても無駄だと思ったのか、
「麻紀の気がすむようにしたらいいが…さすがにご両親にあいさつした方がいいだろうし…ちょっと着替えるの待っててくれ」
そういって、急いで準備してくれた。
私は嬉しくて、腕を絡めて歩く。
今日は…今夜からは、いつも明るくないと怖くて眠れなかった夜も大丈夫だと思えた。
ずっと彼がいてくれるから。
***
こぼれ話→ハンター【河田雅史】
昔から、人一倍の怖がりで、お化けが出るんじゃないか、泥棒が来るんじゃないか、怖い思いをするんじゃないかと怯えていた。
幼いころは、怖がってよく泣く私を両親は心配して、ぎゅっと抱きしめたりしてくれたが、大きくなってさすがにそんなことを親に求めるのは恥ずかしくて、ヒーローが登場する本や冒険の本なんかを読んで気を紛らわし、いつか私を守ってくれる人が現れてほしいと願っていた。
友達がいないわけではなかったけれど、中学にもなると私はどうも人目を惹くらしく、男子からは告白されたり、女子からはやっかみをうけたりすることが増えた。
そのため、なるべく目立たないようメガネをかけ、顔を隠すような髪型をして、中高と過ごした。
大学に入って、やっとそんな狭い世界から解放され、好きな髪形をして、好きな格好をして生活できるようになった。
大学生にもなれば、それほど友人とつるむ必要もなく、講義をまじめに受けて、バイトをして、少しずつ自立した大人に近づいているのが嬉しかった。
自分が好きなように生活できるようになって、また、告白されることも増えてきた。
怖がりで寂しがりやな自分を受け入れてくれる人がいるのではないかという淡い期待もあるが、告白された人にそれを見出すことができず、断ってばかりいた。
私の見た目だけで判断されていると感じたからだ。
どんな人なら、OKしようかと考えていたら、狩りができるくらい逞しい人がいいと、思いたった。
どんな状況になっても、サバイバル出来そうな男の人…
そうして、また告白されたとき、ちょうど目にした鴨を見て思い立って聞いてみた。
『鴨、仕留められる?』
さすがに告白してきた男の子は驚いたようで、黙ってしまい、私はちょっとがっかりして、告白を断った。
変な事言っちゃったかな…そう後悔し始めたころ、木陰から音を立てて大きな男の子が姿を表してびっくりした。
講義が一緒の彼は大きくて否応なしに目立っていたので存在は知っていた。
ちょっとした知り合いに、告白を断ったところも聞かれてたなんて…と思いながら、会話をしているうちに、鴨を仕留められるというのにさらに驚いた。
…こんなところに運命の人がいた。
そう思わずにはいられなかった。
実際に仕留めた彼を見て、もうこの人しかいないと思った。
自分かこんなに積極的な人間だとは思わなかったけれど、この機会を逃したら、一生後悔しそうな気がして、告白した。
実際、彼のバスケをしている姿を見て、どうしようもないくらいかっこよくて、あふれる気持ちを止められなくなった。
強引に家に押しかけて、ご飯を作って、食べ始めてから、私はやっと我に返った。
うまいうまいとおいしそうにご飯を平らげている雅史くんを見て、急に恥ずかしくなってきた。
雅史くんなんて気やすく呼んで、しかも彼の気持ちを考えずに彼女気分で…
考えれば考えるほど、自分がなんてことしちゃったんだろうという気になってしまう。
彼は私の勢いで流されただけに決まってる。
「麻紀?ど…どうした?」
慌てたような雅史くんの声に、私の目から涙がこぼれた。
『ご…ごめんなさい。私、雅史くんの気持ちも考えないで、勝手な事ばっかして。今考えたら、なんだか悪いことしちゃったと急に思えてきちゃって…』
私は、立ち上がって荷物をまとめ始めた。
雅史くんは、呆然としている。
『本当にごめんなさい』
靴を履いて、玄関を出ようとする私に雅史くんは待ってといったような気がしたけれど、これ以上迷惑にならないうちに早く帰らなきゃと焦った私には分からなかった。
鍵を開けて、ドアノブに手をかけたとき、
「待てって!」
そう雅史くんの声がして、彼の手が私の腕をつかんだ。
『私の思いばっかりぶつけて、雅史くん…あっ、河田さんの気持ちも考えずに本当に迷惑かけてごめんなさい!』
そう言って、帰ろうとするけれど、彼は離してくれなかった。
「俺の話も聞いて」
そう言われても、振り向くことが出来ずにいると、抱きしめられた。
逞しい雅史くんの腕の中に閉じ込められて、やっと落ち着いてきた。
『本当に…ごめんなさい…』
また雅史くんに迷惑をかけたと思うと涙が浮かんできた。
「謝ってほしい訳じゃない。俺も急展開すぎて色々頭が追い付いてないけど、一つだけはっきりしてることがあるから聞いてほしい」
『…なあに?』
涙をぬぐって、雅史くんと向き合った。
本当は迷惑だとか、もう家に来るなとか言われるんだろうと思い、拳をぎゅっと握って雅史くんを見上げた。
「今日初めて会話したばかりで、麻紀のこと、まだ知らないことばっかだけど、俺は…俺は、麻紀のことが好きだ!」
そう力強く言われた。
『えっ…』
迷惑がられてるものだと思っていた私は、好きという言葉が信じられなかった。
『雅史くんが、私を…す…き?』
気が抜けた私は、玄関でへなへなと座り込んでしまった。
「麻紀、大丈夫か?」
こくこくと頷いてはいるが、私はまだ雅史くんの言葉を信じきれずにいた。
『私の事…迷惑じゃないの?』
「はっ?迷惑って、麻紀が?」
『私、勝手なこといっぱいしちゃったし…』
雅史くんは、にかっと笑って、私の頭をポンポンすると、
「うはっ、変な奴だな。あんなに積極的だったのに急にめそめそしだして…大丈夫。どんな麻紀でも俺は好きだ」
『本当に?ずっと一緒にいてもいい?』
「もちろんだべ!まぁ…バスケで忙しいかもしれんが…」
『大好き!』
私は、嬉しくなって、雅史くんに抱きついた。
雅史くんの私への気持ちを聞いて、私の頭の中はまた暴走し始めた。
ここに転がり込もう!そうすれば、ずっと一緒にいられる!
親は…きっとうるさく言わないだろう。
『雅史くん、私、今日からここに住んでいい?今から家に荷物取りに行くから付いてきて!』
「へっ?」
『そうと決まれば、行こう!』
そう言って、私は雅史くんの手を取って、家を出ようとした。
雅史くんはあきれたような顔をしていたが、何を言っても無駄だと思ったのか、
「麻紀の気がすむようにしたらいいが…さすがにご両親にあいさつした方がいいだろうし…ちょっと着替えるの待っててくれ」
そういって、急いで準備してくれた。
私は嬉しくて、腕を絡めて歩く。
今日は…今夜からは、いつも明るくないと怖くて眠れなかった夜も大丈夫だと思えた。
ずっと彼がいてくれるから。
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