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時刻はモストロ・ラウンジの開店30分前。
期間限定のパフェを昨日からスタートさせたばかりで、仕込みに大忙しのオクタヴィネル寮生たちの指揮を執るアズール、ジェイド、フロイドの3人。
そのバーカウンターの上には、小さな木箱が1つおいてあった。
フロイドが興味津々でその木箱を開けると、中にはきれいな形をした瓶が入っていて、その瓶の中には液体が詰まっていた。
どうやら、魔法薬のようだ。
「ねぇねぇアズール。この薬はなあに?」
左手でひょいっとその瓶を取り出すフロイド。
高さは15cmくらいだろうか。
魔法薬の色は赤に近いピンク色だった。
「それは、まだ試作段階の魔法薬ですよ。モストロ・ラウンジの閑散期に打開策として調合したものです。」
一瞬だけフロイドに目をやったが、忙しさのあまりにすぐ自分の作業に戻るアズール。
海の中では手足が10本となる彼にとっても、まさに「猫の手も借りたい」状況であった。
「それは頼もしいですね。一体どんな効果が?」
フロイドの手に保持されたままの瓶をまじまじと見つめるジェイドは、いつものように自身のあごに右手を軽く添え、フロイドと一緒に液体を覗き込んだ。
小瓶のコルク製のフタはしっかりされているようだったが、近づくとかすかに匂いがする。
とても良い匂いだ。
「その魔法薬の効果は―」
アズールが説明をし出すと、ジェイドとリーチはその鋭いぎざぎざした歯を見せながら不敵に笑い、何かを企むように顔を見合わせた。
---------
鐘の音が鳴り響く。
昼休みを知らせる音だ。
午前の授業を終えた生徒たちが一斉に教室から出てくる。
その後多くの生徒たちは大食堂へ向かう。
急に賑わいを見せる外廊下は、すでに昼食の注文待ちで列をなしていた。
有栖も例外なく、今ではお馴染みになったエース・デュース・グリム・ジャックの5名で大食堂で昼食を取ろうとしているところだった。
今日は何にしようかと各々でメニューを覗き込む。
それぞれ注文したものを受け取ると、5人分の席を確保できる場所をエースがすぐに見つけ、手を挙げて合図を示す。
ジャックがその合図に気づき、近くにいた有栖とグリムに声をかけた。
さっきの授業は眠かった、覚えることがたくさんだ、次のテストはどうしよう、などと愚痴を漏らすエース・デュース・グリムの3名。
その頭のてっぺんから”例のイソギンチャク”が取れてからはそんなに時間が経過していない。
「いたいたぁー小エビちゃん♡」
「こちらにいらっしゃったのですね。」
今まさに口に入れたばかりのパスタを吹き出しそうになるエースとデュース。
有栖も身体をビクっとさせた。
「ジェイド先輩、フロイド先輩……」
「本当に小エビちゃんは小エビちゃんだね。ぎゅーってしてもいい?」
してもいい?と許可を取ろうとする姿勢は見せるものの、まるで拒否権はなく、すでに有栖はフロイドにされるがまま後ろから強く抱きしめられていた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。私たちは契約を遵守する方には何もしませんから。」
顔はニコっと笑って見せるが、その瞳の奥が笑っていないように見えるのがこの二人。
「く、苦しい……です……フロ、イド先輩……」
「ああ、ごっめーん。」
フロイドの有栖を抱きしめる腕に対し、強めに彼女はギブアップを訴えた。
パっと一瞬で力を抜いて有栖を解放してやると、ジェイドが彼女の肩を優しく抱き支えた。
「それよりフロイド。お話があったでしょう。」
「そうそう、小エビちゃん♡ 一昨日からモストロ・ラウンジで期間限定の美味しーいパフェが始まってるんだけど、放課後食べに来ない?もちろん、ポイントもつくよ。」
「行くんだゾ!」
フロイドのその言葉に、間髪を入れずにグリムが嬉しそうに飛び跳ねた。
エースとデュースも目を輝かせている。
どうやら、3人(2人と1匹)はポイントカードのポイント集めが狙いらしい。
「お前ら……懲りないな……」
ジャックは大きくため息をつくと、有栖と目を見合わせた。
放課後、例によって5名は鏡の間から通ずるオクタヴィネル寮のモストロ・ラウンジへと向かった。
しっとりとしたBGMが流れる空間に、寮服を身に纏ったアズール・ジェイド・フロイドの姿があった。
「皆さんお揃いで。ようこそおいでくださいました。」
あの一件から、嫌味のなくなったアズールの笑顔。
しかしアズール本人はどうやら多忙を極めているらしく、すぐに席を外さねばならないようだった。
「僕はここをしばらく離れますが、どうぞごゆっくりお過ごしくださいね。」
「そんなに忙しいんだな」と小声でデュースは有栖に話しかけた。耳のいいジャックにもそれが聞こえたのか、耳をピクっとさせたのが分かった。
有栖もそんなアズールを見てラウンジ内を見渡してみると、確かに空席はそれほど無かった。
だが、オクタヴィネル寮生たちもかなりの数を捌ききれるようになっているようで、パンク寸前という状態ではなさそうだ。
「さあ、皆様の席はこちらです。ご案内いたしますね。」
ジェイドに連れられて海底の眺めの良い席へ通された。ラウンジ内でも、VIPルームを除けば一番良い席なのではないかと安易に想像がつく。
言われるがまま席についた5名。
クラゲのランプに照らされメニューを覗き込もうとすると、オクタヴィネル寮生が期間限定のパフェを5つ運んできた。どうやら、ジェイドが気を利かせてすでにオーダーを済ませてくれたようだ。
「陸の果実をふんだんに使用したパフェです。貴方もきっと、気に入ってくださると思います。」
「あとでオレにも一口ちょーだいね、小エビちゃん♡」
有栖の後ろでニコっと笑うジェイドとフロイド。
いつものように見えるが、有栖は何となくいつもと違う雰囲気を二人から感じ取っていた。
なんだろうか。
何か、違和感を覚える。
もしかして、何かこの中に入ってるんじゃ……?
パフェ用の長いスプーンを手に取ったが、なかなか口に運ぼうとしない有栖を見て、ジェイドは何も入っていませんよとだけ告げ、フロイドとともにその場を後にした。
「どうぞ、ごゆっくり……」
パフェを食べ始めてから、30分ぐらい経っただろうか。
全員がすでにパフェを食べ終わり、エースとデュースとグリムはポイントのことを気にして次に何を頼もうかなどと話し合っている。
すると、ジャックが眉を寄せながら自身の鼻を押さえた。
「なあ、なんだか変な匂いがしねえか?」
その言葉に対し、彼以外全員が首を横に振る。
周辺を見渡してみても、自分たち以外の客も特別変わった様子を見せていない。
「ジャック、お前は鼻が特別いいからな。どーせ誰か屁でもしたんだろ。」
「エース、お前はこういう場でデリカシーってものはないのか。」
またエースとデュースが言い合っている。
有栖もジャックの言う”変な匂い”には気づいていない。
だが、
「私には変な匂いというか、良い匂いはするなぁとは思うよ。アロマというか、そういう感じの……」
「そう言われてみればオレもそれは感じるな。ルームフレグランスって言うの?そんなようなやつじゃないのか?」
調子よくエースが有栖に言葉を重ねる。
鼻がよさそうなグリムはというと、パフェの食べ過ぎで顔中に生クリームが付着しているせいで、今は鼻が機能していないらしい。
「ジャック、私たちには大丈夫でも、きっと鼻つらいでしょう?先戻ってても良いよ。」
有栖がジャックの心配をして、まだ長引きそうなこの場からの離脱を促した。ただジャック自身も、この3名に有栖を預けるのも心配だった。しばらく残ることを伝え、また5人で談笑を続けた。
ジャックが匂いに気づいてから程なくして、再びジェイドとフロイドが彼らのテーブルへとやってきた。
二人とも何から上機嫌な様子だ。不気味なほどに。
「ねぇねぇ、小エビちゃんに味見してもらいたいものがあるんだけど、これから奥に一緒に来てくれない?」
「VIPルームにお通し致しますよ。」
ジェイドが左手を有栖に差出し、まるで高貴な姫をエスコートするかのように手の甲に口づけをした。
オレもオレも、と急かすフロイドにジェイドは焦らないでと諭す。
「さあてカニちゃんサバちゃんウニちゃん達は帰った帰った~」
「ポイントはすでに押してありますから、ご安心くださいね。」
双子に背中をぐいぐいと押され、気づけば有栖以外はモストロ・ラウンジの会計の場へ。
確かモストロ・ラウンジはテーブルチェックだったと思ったが、なぜか今日は違った。
「また、お越しください。」
ジェイドは含みのある笑顔を見せ、フロイドと共に有栖の肩を抱いてVIPルームへと消えていった。
~後編へ続く~
期間限定のパフェを昨日からスタートさせたばかりで、仕込みに大忙しのオクタヴィネル寮生たちの指揮を執るアズール、ジェイド、フロイドの3人。
そのバーカウンターの上には、小さな木箱が1つおいてあった。
フロイドが興味津々でその木箱を開けると、中にはきれいな形をした瓶が入っていて、その瓶の中には液体が詰まっていた。
どうやら、魔法薬のようだ。
「ねぇねぇアズール。この薬はなあに?」
左手でひょいっとその瓶を取り出すフロイド。
高さは15cmくらいだろうか。
魔法薬の色は赤に近いピンク色だった。
「それは、まだ試作段階の魔法薬ですよ。モストロ・ラウンジの閑散期に打開策として調合したものです。」
一瞬だけフロイドに目をやったが、忙しさのあまりにすぐ自分の作業に戻るアズール。
海の中では手足が10本となる彼にとっても、まさに「猫の手も借りたい」状況であった。
「それは頼もしいですね。一体どんな効果が?」
フロイドの手に保持されたままの瓶をまじまじと見つめるジェイドは、いつものように自身のあごに右手を軽く添え、フロイドと一緒に液体を覗き込んだ。
小瓶のコルク製のフタはしっかりされているようだったが、近づくとかすかに匂いがする。
とても良い匂いだ。
「その魔法薬の効果は―」
アズールが説明をし出すと、ジェイドとリーチはその鋭いぎざぎざした歯を見せながら不敵に笑い、何かを企むように顔を見合わせた。
---------
鐘の音が鳴り響く。
昼休みを知らせる音だ。
午前の授業を終えた生徒たちが一斉に教室から出てくる。
その後多くの生徒たちは大食堂へ向かう。
急に賑わいを見せる外廊下は、すでに昼食の注文待ちで列をなしていた。
有栖も例外なく、今ではお馴染みになったエース・デュース・グリム・ジャックの5名で大食堂で昼食を取ろうとしているところだった。
今日は何にしようかと各々でメニューを覗き込む。
それぞれ注文したものを受け取ると、5人分の席を確保できる場所をエースがすぐに見つけ、手を挙げて合図を示す。
ジャックがその合図に気づき、近くにいた有栖とグリムに声をかけた。
さっきの授業は眠かった、覚えることがたくさんだ、次のテストはどうしよう、などと愚痴を漏らすエース・デュース・グリムの3名。
その頭のてっぺんから”例のイソギンチャク”が取れてからはそんなに時間が経過していない。
「いたいたぁー小エビちゃん♡」
「こちらにいらっしゃったのですね。」
今まさに口に入れたばかりのパスタを吹き出しそうになるエースとデュース。
有栖も身体をビクっとさせた。
「ジェイド先輩、フロイド先輩……」
「本当に小エビちゃんは小エビちゃんだね。ぎゅーってしてもいい?」
してもいい?と許可を取ろうとする姿勢は見せるものの、まるで拒否権はなく、すでに有栖はフロイドにされるがまま後ろから強く抱きしめられていた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。私たちは契約を遵守する方には何もしませんから。」
顔はニコっと笑って見せるが、その瞳の奥が笑っていないように見えるのがこの二人。
「く、苦しい……です……フロ、イド先輩……」
「ああ、ごっめーん。」
フロイドの有栖を抱きしめる腕に対し、強めに彼女はギブアップを訴えた。
パっと一瞬で力を抜いて有栖を解放してやると、ジェイドが彼女の肩を優しく抱き支えた。
「それよりフロイド。お話があったでしょう。」
「そうそう、小エビちゃん♡ 一昨日からモストロ・ラウンジで期間限定の美味しーいパフェが始まってるんだけど、放課後食べに来ない?もちろん、ポイントもつくよ。」
「行くんだゾ!」
フロイドのその言葉に、間髪を入れずにグリムが嬉しそうに飛び跳ねた。
エースとデュースも目を輝かせている。
どうやら、3人(2人と1匹)はポイントカードのポイント集めが狙いらしい。
「お前ら……懲りないな……」
ジャックは大きくため息をつくと、有栖と目を見合わせた。
放課後、例によって5名は鏡の間から通ずるオクタヴィネル寮のモストロ・ラウンジへと向かった。
しっとりとしたBGMが流れる空間に、寮服を身に纏ったアズール・ジェイド・フロイドの姿があった。
「皆さんお揃いで。ようこそおいでくださいました。」
あの一件から、嫌味のなくなったアズールの笑顔。
しかしアズール本人はどうやら多忙を極めているらしく、すぐに席を外さねばならないようだった。
「僕はここをしばらく離れますが、どうぞごゆっくりお過ごしくださいね。」
「そんなに忙しいんだな」と小声でデュースは有栖に話しかけた。耳のいいジャックにもそれが聞こえたのか、耳をピクっとさせたのが分かった。
有栖もそんなアズールを見てラウンジ内を見渡してみると、確かに空席はそれほど無かった。
だが、オクタヴィネル寮生たちもかなりの数を捌ききれるようになっているようで、パンク寸前という状態ではなさそうだ。
「さあ、皆様の席はこちらです。ご案内いたしますね。」
ジェイドに連れられて海底の眺めの良い席へ通された。ラウンジ内でも、VIPルームを除けば一番良い席なのではないかと安易に想像がつく。
言われるがまま席についた5名。
クラゲのランプに照らされメニューを覗き込もうとすると、オクタヴィネル寮生が期間限定のパフェを5つ運んできた。どうやら、ジェイドが気を利かせてすでにオーダーを済ませてくれたようだ。
「陸の果実をふんだんに使用したパフェです。貴方もきっと、気に入ってくださると思います。」
「あとでオレにも一口ちょーだいね、小エビちゃん♡」
有栖の後ろでニコっと笑うジェイドとフロイド。
いつものように見えるが、有栖は何となくいつもと違う雰囲気を二人から感じ取っていた。
なんだろうか。
何か、違和感を覚える。
もしかして、何かこの中に入ってるんじゃ……?
パフェ用の長いスプーンを手に取ったが、なかなか口に運ぼうとしない有栖を見て、ジェイドは何も入っていませんよとだけ告げ、フロイドとともにその場を後にした。
「どうぞ、ごゆっくり……」
パフェを食べ始めてから、30分ぐらい経っただろうか。
全員がすでにパフェを食べ終わり、エースとデュースとグリムはポイントのことを気にして次に何を頼もうかなどと話し合っている。
すると、ジャックが眉を寄せながら自身の鼻を押さえた。
「なあ、なんだか変な匂いがしねえか?」
その言葉に対し、彼以外全員が首を横に振る。
周辺を見渡してみても、自分たち以外の客も特別変わった様子を見せていない。
「ジャック、お前は鼻が特別いいからな。どーせ誰か屁でもしたんだろ。」
「エース、お前はこういう場でデリカシーってものはないのか。」
またエースとデュースが言い合っている。
有栖もジャックの言う”変な匂い”には気づいていない。
だが、
「私には変な匂いというか、良い匂いはするなぁとは思うよ。アロマというか、そういう感じの……」
「そう言われてみればオレもそれは感じるな。ルームフレグランスって言うの?そんなようなやつじゃないのか?」
調子よくエースが有栖に言葉を重ねる。
鼻がよさそうなグリムはというと、パフェの食べ過ぎで顔中に生クリームが付着しているせいで、今は鼻が機能していないらしい。
「ジャック、私たちには大丈夫でも、きっと鼻つらいでしょう?先戻ってても良いよ。」
有栖がジャックの心配をして、まだ長引きそうなこの場からの離脱を促した。ただジャック自身も、この3名に有栖を預けるのも心配だった。しばらく残ることを伝え、また5人で談笑を続けた。
ジャックが匂いに気づいてから程なくして、再びジェイドとフロイドが彼らのテーブルへとやってきた。
二人とも何から上機嫌な様子だ。不気味なほどに。
「ねぇねぇ、小エビちゃんに味見してもらいたいものがあるんだけど、これから奥に一緒に来てくれない?」
「VIPルームにお通し致しますよ。」
ジェイドが左手を有栖に差出し、まるで高貴な姫をエスコートするかのように手の甲に口づけをした。
オレもオレも、と急かすフロイドにジェイドは焦らないでと諭す。
「さあてカニちゃんサバちゃんウニちゃん達は帰った帰った~」
「ポイントはすでに押してありますから、ご安心くださいね。」
双子に背中をぐいぐいと押され、気づけば有栖以外はモストロ・ラウンジの会計の場へ。
確かモストロ・ラウンジはテーブルチェックだったと思ったが、なぜか今日は違った。
「また、お越しください。」
ジェイドは含みのある笑顔を見せ、フロイドと共に有栖の肩を抱いてVIPルームへと消えていった。
~後編へ続く~
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