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イナズマイレブン


・数年後パラレル


フェーダ一の美貌の持ち主と謳われていた少女は、見る者全てを魅了する女性へと成長していた。
窓から射し込む日差しに少し重たい瞼を持ち上げ、目を覚ます。澄んだ空と、少しのんきな風にすら感じられる穏やかな光に、今日もいい天気、と目を細めた。
起き上がると同時にドアがノックされる。どうぞ、と返事すると、入ってきたのは彼女の最愛の人物。


「おはようメイア、よく眠れたかい?」

「おはようギリス、今日はとてもいいお天気ね。ねぇ、ちょっと外に出てみない?」


その一言を聞いたギリスの表情が一瞬曇るが、すぐに微笑みを浮かべる。


「それは名案だね、さすがはボクのメイア」








力を使うたび、さらさらと音もなく時間が削れていくのを感じていた。強大すぎる人智を超えた力は、自分達が世界から選ばれた存在であると自惚れるものであったが、この世に存在出来る期限付きの諸刃の剣だった。その短い期間の中で腐った世界を作り変えようと、世界に戦争を仕掛けた。
そして数年前、決着はついた。大人側の用意したチームに勝利し、この世界は彼らのモノとなり、あらゆるものを破壊し尽くした。その行動に意味はない、と全員が心のどこかで思いながら。




メイア達が外に出ると、かつてセント・エルダと呼ばれていた市街地は、その頃の姿を留めておらず、無惨な瓦礫の山と化していた。かつて自分達にたてついた無謀な大人達、その活動拠点だった場所のため見せしめとして、あえてそのままにしてあるのだ。
足場の悪い道なき道を二人はただただ歩き続ける。目的など無く、黙々と。
やがて行き当たった瓦礫の山に登り、下方に広がる世界を見下ろす。透き通った綺麗な青と、くすんで汚れた灰のコントラストを、二人は心から美しいと思った。

メイアは目を伏せ、とうに去っていった仲間達のことを思い馳せる。この数年間、徐々に、だが確実に、リミットが近づいてきているのを感じられるようになった。仲間の中には、力を使用している最中に命尽きる者、徐々に体力が衰え穏やかに息を引き取る者、さまざまな最期だった。組織の皇帝である少年も、ここ最近は体調が芳しくなく、床に臥せがちである。そう長くはないのだろう。
メイアも、同志が減っていく度に涙を流していたが、あまりにも多すぎる別れに次第に表情が減り、以前ほどの明るさはなくなっていた。

そういえばあの日もこんな天気だった、と最後に戦った過去からの助っ人を思い出す。彼らの表情は苦しそうだがどこか楽しそうで、真剣にボールを追いかける姿が印象的だった。選ばれなかった時間軸では、彼らと同じように何かに夢中になれ、心から楽しいと思えるだろうか。


「ねぇギリス、もし、もしもよ?あの時彼らが勝っていれば、もっと違う未来だったのかしら…?」

「いいやメイア、力を捨てた時点で、ボク達は普通の存在に成り下がってしまう。それは死と同義だ、美しい結末とは言えない」


かぶりを振るギリス。彼は何よりも美しさを優先させる節がある。
その象徴ともいえる最愛の女性を見つめながら微笑んだ。


「でも、例えそんな未来になったとしても、ボクは君のこと、愛しているよ」

「…そう、よね。安心したわ」


メイアも微笑み返し、どちらからともなく繋いでいた手を固く握り直した。やはり、どんな世界になろうとも互いがいれば幸せだ、と確信しながら。

最期の砂が落ちた時、待っているのは幸福か絶望か。





(前サイトより転載)
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