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妖怪ウォッチ


※当代エンマ大王が先代だと思ってた頃の妄想




正直なところ、私はあの大蛇が嫌いだった。


エンマ大王と暴れ大蛇の決闘を見届けた翌日、私の後ろには小柄の少年が付いて歩いている。物珍しそうにきょろきょろと辺りを見渡すこの者が、あの悪名高い大蛇だとは誰も思わないだろう。
三日三晩に及ぶ決闘は、当然ながら大王の勝利だった。時々劣勢に追い込まれそうな局面もあったが、ただ暴れるだけの奴に負けるはずがなかった。
決闘後、大王は大蛇とある約束を交わした。「妖魔界と人間界を見守ること」このために大王が持ち掛けた話、それは――


「な、あの者を側に置く、ですと…!?」

「あぁ。あの落ち込みようじゃ、もう勝手に暴れることはないだろうが、近くに置いておく方が見張れるだろ?それに、アイツはけっこうココがいいぜ」


こめかみを叩きながらニッと不敵に笑う彼を見て、私は不服だが閉口する。どうも私はこの笑顔に弱い。


一通り説明をし終えたところで、私は振り返り大蛇を見る。


「おい、大蛇。この場で暴れようものなら即刻処分するからな」

「俺もここがどんな場所か知っている。そんなことをする程馬鹿じゃない」


それに、と大蛇はつけ加え、


「初めてこんな俺を必要だと言ってくれた奴のためだ、期待に添えるようどんな仕事でもやってやる」



それからの大蛇の働きはめざましいものだった。書類整理から現場の指揮まで様々な仕事をこなし、確実に評価を高めていった。また元来の妖力の高さも相まって、エリートと呼ぶに相応しい風格も備えていった。
…その頃からだろうか、大王に反感を抱く者、裏取引など暗い噂が流れていた者が消えたのは。“どんな仕事でもやる”というのはあながち間違いではなかったようだ。


「やはり大王が選んだだけのことはある。私が間違っていたようだ」


私が詫びると、大蛇は気にしていないと言う。私一人が敵視していただけというのは少々恥ずかしいものだ。
私は大蛇に手を差し出す。彼は少し戸惑っていたが、握り返してきた。


「これからもよろしく頼むぞ、オロチ」




過去の記憶がふと浮かび、そんな話をすると分身である影は懐かしそうに聞いているが、当の本人は顔を真っ赤にし「その話は…」と遮ろうとする。どうやら大蛇時代のことは忘れてしまいたいらしい。昔の名残すらない同志の姿に、私は思わず苦笑した。





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