トモダチこれくしょん?
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リビングに満ちた男たちの殺気が臨界点に達しようとした、その瞬間だった。
「やかましいわ、どいつもこいつも……!」
低い怒鳴り声とともに、直哉が甚爾と五条のわずかな隙間に割り込んだ。彼は驚くほど鮮やかな手つきで、甚爾の腕の中にいたナマエの手首をひったくるように掴む。
甚爾「……あ? 直哉、てめぇ」
五条「おっと、意外な伏兵だね」
「こんな奴らと一緒にいたら、自分、壊れるで」
直哉は吐き捨てるように言うと、ナマエを背中に隠したまま、裏口から夜の闇へと飛び出した。
背後から五条や夏油の制止する声、そして恵の叫びが聞こえたが、直哉はこの島で最も速いと言わしめる脚力で、一気に住宅街を駆け抜ける。
たどり着いたのは、島の最果て。ナマエ自身が画面をタップし、時間をかけて島クリエイトで作られた、まだ他の誰も足を運ばない人里離れた灯台エリアだった。
波の音だけが響くベンチに、直哉はナマエを突き放すように座らせた。
ナマエ「……っ、直哉、君……」
直哉「……ハァ、ハァ……。ったく、甚爾君も悟君も、何考えとんねん。女一人に寄ってたかって、格好悪いにも程があるわ」
直哉は肩で息をしながら、苛立たしげに前髪をかき上げる。月光に照らされた彼の顔は、先ほどまでの攻撃的な冷たさとはどこか違う、余裕のない色が混じっていた。
彼はナマエの前に膝をつくようにして屈み込み、まだ掴んだままだった彼女の手首をじっと見つめる。そして、そのか細い手首から視線を上げ、初めてナマエの瞳を正面から直視した、その時だった。
直哉の息が、不自然に止まる。
(――なんなんや、この目は)
ただのうぶで無力な女だと思っていた。しかし、月光を反射してきらめくその瞳の奥には、自分たちのすべてを把握し、この島を創り上げ、上空から自分たちを慈しみ、弄んできた「神」の光が確かに宿っていた。
自分がどれだけ足掻いても決して届かない、圧倒的に高位の存在。その事実に気づいた瞬間、直哉の胸に強烈な劣等感と、それ以上の狂おしいほどの独占欲が突き刺さる。
甚爾のように最初から気に入られていたわけでもなく、五条のように無敵でもない自分が、この「世界の創造主」に逆らうことの恐ろしさと、背徳的な興奮。
直哉「……自分、何なん。神様かなんか知らんけど、あんな獣みたいな奴らに囲まれて、怖なかったんか。……俺は、嫌やねん。アンタがあんな連中に指一本触れられるんも」
ナマエ「直哉君、それは……甚爾さんと恋人設定だから?」
ナマエの問いに、直哉の指先がピクリと跳ねた。彼はゆっくりと顔を上げ、ナマエを睨みつける。けれど、その瞳には彼女を蔑んでいたはずの鋭さはなく、今にも崩れそうな、子供のような依存と執着が渦巻いていた。
直哉「設定、設定って……うるさいわ。そんな記号みたいな言葉で片付けんといて。俺はな、自分がここに現れる前から、ずっとあんたのこと見てたんや。画面の向こうで、俺を誰とくっつけようか、何食べさせようか……そんなことばっか考えてるあんたの視線を、ずっと肌で感じてたんや!」
直哉の手が、震えながらナマエの頬に伸びる。その掌は驚くほど熱い。
神である彼女に拒絶される恐怖に怯えながらも、その肌に触れずにはいられないのだ。
直哉「俺は、甚爾君みたいに図太くもなれんし、悟君みたいに無敵でもない……。あんたに選ばれんかったら、俺には何も残らへんのや。設定上の恋人? おお、ええよ。その設定に、俺の全人生を懸けて執着したる。神様なら、俺をこの不安な地獄から救ってや……!」
彼はナマエの膝の間に自分の体を割り込ませるようにして、完全に逃げ場を奪う。不自然なほど密着した距離で、直哉はナマエの首筋に顔を埋め、深く、深く、その香りを吸い込んだ。
直哉「……逃がさへん。他の奴らのところなんて、絶対行かせへんからな。…いつか消され放置される恐怖を知っている俺だけが、あんたを一番綺麗に愛してあげられるんや。自分、わかってるやろ? 頼むから……俺を、選んでや……」
傲慢な物言いとは裏腹に、ナマエを抱きしめる直哉の腕はガタガタと微かに震えていた。神を自分の腕の中に閉じ込めているという全能感と、いつか消えてしまうのではないかという生々しいまでの「脆さ」。
島クリエイトで創られた孤独な灯台の光が、一定の間隔で二人を白く照らし出し、また深い闇へと落としていく。
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