トモダチこれくしょん?
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ナマエの指が、吸い寄せられるようにメニュー画面の一点を叩いた。
選んだのは、この島で最も希少価値の高い「最高級のステーキ」。それを甚爾のアイコンへとスライドさせる。システム音が軽快に響き、目の前のテーブルに、非現実的なほど見事なサシの入った肉が現れた。
その瞬間、室内の空気が凍りついた。
甚爾「……ハッ、ハハハハハッ! 見たかよ、傑、悟。結局はこれだ」
甚爾が、喉の奥から絞り出すような低い笑い声を上げた。彼は目の前の肉には目もくれず、獲物を仕留めた獣の目でナマエを凝視する。その瞳に宿るのは、純粋な歓喜というよりも、他を圧倒したという支配的な愉悦だ。
甚爾「やっぱりお前は、俺が一番なんだろ? 最初に作ったのも、今これを選んだのも、お前の本心だ」
甚爾はソファから立ち上がると、無造作にナマエの腰を抱き寄せ、軽々とその身体を宙に浮かせた。抗う間もない、圧倒的な腕力。ナマエの柔らかな腹部に、彼の硬い筋肉が押し付けられる。
ナマエ「うぁ…あ!甚爾さん……! ちょっと、下ろして――」
甚爾「下ろさねぇよ。今夜から俺の家で生活だ。直哉には悪いが、今日からそこが俺とお前の『自宅』になる」
甚爾は抗議の声を封じるように、ナマエの顎を強引に上向かせた。
そして、周囲の視線など意に介さず、深く、執拗なキスを落とした。
唇が押し潰され、肺の空気を奪われる。彼の熱い舌が侵入し、口内を蹂躙する。画面越しに眺めていたときには想像もできなかった、生々しい肉体の質量と、男の匂いがナマエの意識を混濁させた。
夏油「……甚爾、やりすぎだ。それは『合意』とは言わないよ」
夏油の声から温度が消える。五条もまた、いつもの軽薄な笑みを消し、ナマエを冷徹に見据えていた。
けれど、誰よりも深く傷ついたのは、目の前でその光景を見せつけられた恵だった。
恵「…………っ」
恵は、伸ばしかけていた手を力なく下ろした。
自分だけは、彼女を「システム」や「利用価値」で見たくなかった。一人の人間として、純粋に恋をしたのだと思っていた。けれど、ナマエ自身が選んだのは、自分を「モノ」として扱うような、狡猾な大人の男だった。
…恵の視界が歪む。
ナマエと目が合った瞬間、彼は耐えきれずに視線を地面へと落とした。その背中はあまりに小さく、絶望に打ちひしがれているのが一目でわかった。
恋のイベントが起きたあの瞬間の熱は、冷たい氷水を浴びせられたように消え去り、代わりにドロドロとした自己嫌悪と劣等感が彼を支配する。
五条「あーあ、恵が完全に折れちゃった。ナマエ、君ってば罪作りだね」
五条の皮肉が飛ぶ中、甚爾はナマエを肩に担ぎ直し、玄関へと歩き出す。
甚爾「文句があるならシステムに言え。……行くぞ、ナマエ。俺を『お気に入り』にした責任、たっぷり取らせてやるからよ」
夜の闇へと連れ出されるナマエ。背後に残されたリビングには、怒りを滲ませる夏油、底の知れない五条、そして、ただ立ち尽くす恵の、深く重い沈黙だけが残された。
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