トモダチこれくしょん?
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「こっちが一軒家が並ぶエリアなんだよね」
五条に肩を抱かれ、恵に腕を引かれるという奇妙な陣形で歩かされながら、ナマエは目の前の光景に目を丸くした。そこには『トモダチコレクション』の最新ハード版で見たような、個性的でモダンな住宅が立ち並んでいる。
ナマエ「本当に、普通のお家がいっぱい並んでる……。あの、二人とも、ちょっと近すぎて歩きにくい、です……」
五条「あ、見えてきた。あそこが僕と傑の愛の巣ね」
恵「……変な言い方しないでください、反吐が出る。ただの同居でしょう」
恵が不機嫌そうに吐き捨てた先、一際大きなデザイナーズハウスの庭先に、三人の男女が集まっていた。
夏油「おや、悟。随分と賑やかなお帰りだね。……それと恵、そんなに顔を真っ赤にしてどうしたんだい?」
長い黒髪を緩くまとめ、カジュアルなジャケットを纏った夏油傑が、細められた瞳に好奇心の色を浮かべて近づいてくる。その隣には、気だるげに煙草を燻らす家入硝子。そして、庭のベンチに我が物顔で座り、筋骨逞しい肢体を投げ出している伏黒甚爾の姿があった。
硝子「……へぇ。悟がナンパしてきたにしては、随分とまともそうな子じゃない」
甚爾「おい恵、お前。そのツラ……ハッ、なるほどな。おめでてーな、お前にも春が来たか」
甚爾の野太い声が響くと、恵の肩がびくりと跳ねた。
恵「っ……親父、黙っててくれ。そういうのじゃ、ない……」
甚爾「『そういうの』だろうが。隠せてねえんだよ、ガキが」
甚爾は鼻で笑うと、のっそりと立ち上がりナマエの前に立った。見上げるような体躯、首筋に浮かぶ血管、そして独特の雰囲気。
彼はナマエの顎を指先でクイと持ち上げると、至近距離からその瞳を覗き込んできた。
ナマエ「っ……!? あの、あの……急に近いです……っ」
あまりの威圧感に身を竦めるナマエ。しかし甚爾は怯む様子もなく、楽しげに口元を歪める。
甚爾「ナマエ、っつったか。……悪くねえ。恵には勿体ねえくらいだな」
恵「触るな! ……ナマエさん、離れてください。この人はろくな人間じゃない」
恵が割って入ろうとするが、甚爾はその大きな手で息子の頭を無造作に押さえつけ、さらにナマエへと顔を近づける。その距離、わずか数センチ。彼の熱い吐息がナマエの頬をかすめ、不自然なほどの密着感に心臓が跳ねる。
夏油「甚爾、あまり怖がらせてはいけないよ。彼女はまだ、この場所がどこかも分かっていないんだから」
夏油が静かな足取りで割って入り、甚爾の手を優しく、けれど拒絶を込めて退けた。代わりに彼が、ナマエの手をそっと掬い上げる。指先がナマエの指の隙間に滑り込み、絡めるような深い握り方だ。
ナマエ「……? え、あの、手の握り方が、おかしいです……っ」
夏油「初めまして、ナマエ。私は夏油傑。混乱しているだろうけれど、安心していい。ここでは誰も君を傷つけない。……少なくとも、目に見える形ではね」
夏油の微笑みは慈愛に満ちているようでいて、その奥底には執着に近い粘り気が潜んでいる。彼はナマエの手の甲に、唇が触れるか触れないかの距離まで顔を寄せ、深くその香りを吸い込んだ。
五条「ちょっと傑! 僕が最初に見つけたんだよ? 抜け駆け禁止!」
夏油「悟、独占は醜いよ。……それにしても、いい香りだ。この島の空気とは違う、懐かしい匂いがするね」
ナマエ「匂いって……そんな、近づかないでください……! もう、本当に何なんですか、この世界……!」
硝子「……どいつもこいつも、新入りをいびるな。ナマエ、だったか。こいつらは放っておいて、私の家に来るか? 酒くらいならあるぞ」
ナマエ「あ、硝子さん……! 助けて、…じゃなくて、えっと、お酒はちょっと……」
硝子が呆れたように煙草の灰を落とすと、五条と夏油が同時に「それはダメ」と声を揃えた。
一方の恵は、大人たちの余裕ある、それでいて生々しいアプローチの応酬を前に、何もできない自分に歯噛みしている。
恵「……っ、俺が……俺が一番に、彼女を……」
絞り出すような恵の呟きは、大人たちの軽薄な笑い声にかき消されていく。
しかし、彼がナマエを見つめる瞳だけは、誰よりも切実に、そして暗い情熱を孕んで濁っていた。
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