トモダチこれくしょん?
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「仲良くなるためには、俺と部屋で過ごすのが一番効率的ですよね」
恵は広場に響くような、どこか「ゲームの住人」らしい爽やかな声音でそう言った。
周囲の五条や夏油には、純情な少年が勇気を出して意中の相手を誘っているようにしか見えなかっただろう。けれど、ナマエの腰に回された恵の指先は、まるで皮膚を突き破らんばかりに強く食い込んでいた。
それから連日、ナマエは恵の部屋に連れ込まれ続けた。
表向きは「親睦を深めるための室内デート」。しかし、扉が閉まり、鍵がかけられた瞬間、恵の「演技」は剥がれ落ちる。
恵「……俺達のこと、思い出しましたか? それとも、また俺が教え直してあげましょうか」
執拗な愛撫と、逃げ場のない熱。恵は「記憶を保持している自分」という絶対的な優位性を使い、ナマエの体に、精神に、自分以外の男が入り込む隙間がないほど深く生々しい「刻印」を刻みつけていった。
しかし、その不自然な「密室の教育」を、本能だけで嗅ぎ取った男がいた。
ある日の午後、恵が買い出しでわずかに席を外した隙だった。
ナマエの背後に、音もなく巨大な影が落ちる。
甚爾「……よぉ。今日は定型文を話に来たわけじゃねぇ」
振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべた甚爾が立っていた。リセットされたはずの彼の眼光は、出会ったばかりの住人のそれではない。血の匂いを嗅ぎ分ける野生動物の鋭さで、彼はナマエを射抜いた。
甚爾「お前、あいつにつけ回されてんだろ。何があった」
ナマエ「……っ。甚爾、さん」
ナマエは下唇を噛み、言い淀む。言えるはずがない。記憶を消されたはずの恵が、一人だけ「真実」を覚えていて、自分を陵辱し続けているなど。
甚爾「……隠すなよ。その首のアザはなんだ」
甚爾の大きな手が、ナマエの襟元を無造作に引き下げた。そこには、恵が昨夜、自分の所有権を主張するように執拗に吸い付いて残した、どす黒いほどに濃い鬱血の痕があった。
甚爾「……ハッ。お前相手なら、システムを越える事ができるってのか?」
甚爾が、凶暴な欲望を隠しようともせずに舌なめずりをした。彼はナマエの細い腰を強引に引き寄せると、そのアザがある首筋に、自身の熱い唇を寄せた。
甚爾「……なるほどな。結婚イベントを経なくても子作りできるって事かよ。……お前、何者だ?」
甚爾の鼻先が、恵の残した匂いを上書きするようにナマエの肌をなぞる。記憶は失われていても、甚爾の肉体は覚えているのだ。この女が、かつて自分を「お気に入り」として選び、特別な権限を与えた存在であることを。
甚爾「恵のガキに独り占めさせておくには、勿体ねぇ……。あいつにバラされたくねぇなら、俺にも『権限』をよこせよ。なぁ、管理者様よぉ?」
甚爾の低い笑い声が、ナマエの耳たぶを震わせる。その時だった。
「――何してるんですか、甚爾さん」
冷え切った声と共に、買い出しから戻った恵が部屋の入り口に立っていた。
恵の瞳は一瞬で怒りに濁ったが、彼はすぐにフッと冷めた笑いを浮かべ、甚爾とナマエの間に割り込んだ。
恵「ハッ、何が『管理者様』だ。頭湧いてるんじゃないですか。そんなこの島を操る神様だか管理者が直々に降臨するなんて、ただのゲームのやりすぎか夢物語でしょう」
甚爾「……あァ?」
恵「そいつはただの、新しくこの島にやってきた、ちょっと警戒心の強い普通の住人ですよ。俺がイベントの確率を上げるために必死に付きまとって、部屋に囲い込んでるだけだ。システム上のバグでもなんでもない。あんたの野生の勘だか何だか知らないけど、妄想で新入りを怖がらせるのはやめてくれませんか」
徹底的に冷淡な、トモコレの『ただの現実的な住人』としての正論。
恵のあまりに迷いのない完璧な演技に、甚爾は一瞬、つまらなそうに目を細めた。
甚爾「……チッ。夢物語、ねぇ。まぁ、恵のガキがそこまで必死になってるなら、今回は譲ってやるよ。興が削げた」
甚爾は首を鳴らしながら、それ以上追及することなく、ふらりと部屋を出て行った。
バタン、と扉が閉まり、再び二重に鍵がかけられる。
静寂が戻った途端、恵は持っていた買い物袋を床に投げ捨て、ナマエをベッドへと押し倒した。
その瞳には、先ほど甚爾を追い払った冷徹な演技の欠片もなく、ギラギラとした狂気的な独占欲だけが渦巻いている。
恵「……言ったでしょう。外の奴らとは関わるなって」
甚爾の触れた首筋の痕を、恵は自身の歯で血が滲むほど強く噛みちぎるように上書きした。
ナマエ「っ……あ、恵、くん……っ!」
恵「あの人たちにバレたら、またリセットされる。そしたら俺は、またアンタを他人に取られるのを指をくわえて見てなきゃいけないんだ。そんなの、絶対に御免だ……」
恵はナマエの両手首をシーツに縫い付け、逃げ場を完全に塞いだまま、耳元でドロドロとした執着の吐息を漏らす。
恵「アンタはここで、俺の『片想い』の相手として、一生俺だけに犯されていればいい。画面の外になんて、二度と帰さないから――」
上書きされた偽りの世界。その密室の中で、バグを抱えた少年の終わらない愛の監禁が、今日も生々しい熱を帯びて続いていく。
END
2026.5.22掲載
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