トモダチこれくしょん?
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「……それは、画面用に決まってるじゃないですか」
「アンタはここで、俺の『片想い』の相手として、一生俺だけに犯されていればいい。画面の外になんて、二度と帰さないから――」
…まさか、こんな事になるなんて。
─── …
窓の外では、ぬるい春の夜風が揺れていたはずだった。
ナマエの手元にあったのは、懐かしさに惹かれて手に取った『トモダチコレクション』の新作。
画面の中ではデフォルメされた「彼ら」が、シュールな動きで日常を謳歌している。
お気に入りのキャラクターを登録し、好物を与え、人間関係を眺める――そんな穏やかな娯楽に耽っていたはずが、突如として視界が歪んだ。
「……っ、なに、これ……」
強烈な眩暈が脳を揺らす。画面から溢れ出したような暴力的な光が視神経を焼き、ナマエはたまらず目を閉じた。…意識が急速に遠ざかる。まるで、重力の軸がすり替わったような、不気味な浮遊感。
次に瞼を持ち上げたとき、網膜に飛び込んできたのは液晶の光ではなかった。
突き抜けるような青空。そして、背中に伝わる柔らかな芝生の感触。
五条「こんにちは、初めましてかな?」
鼓膜を叩いたのは、驚くほど耳に馴染む、けれど背筋が震えるほど艶っぽい声音だった。
影が落ちる。
ナマエが視線を上げると、そこには白銀の髪を揺らし、碧眼長身の男が立っていた。五条悟。そのビジュアルは、漫画やアニメで見た通りの、完成された「本物」だ。
しかし、彼が浮かべている軽薄な笑みと、どこか緊張感の欠けた空気感は、先ほどまで遊んでいたあのゲームの住民そのものだった。
ナマエ「……ごじょう、さとる……?」
五条「正解! サービスでウインクしちゃう。はい、パチンッ」
大仰に片目を閉じ、指先でピストルの形を作ってみせる五条。その動作一つ一つが、モデルのような外見に反して絶望的にチャラい。
彼は呆然とするナマエの脇に手を差し入れると、赤ん坊でも持ち上げるかのような軽やかさで彼女を抱き起こした。
五条「いやあ、いきなり空から降ってくるから驚いたよ。新しい住人さんかな。名前、教えてくれる?」
ナマエ「……ナマエ。ナマエ、です」
五条「ナマエね。オッケー、覚えた。いい名前じゃん、響きが可愛い。ねえ、立ちくらみとか大丈夫? 傑に『変な女の子拾った』って報告したら怒られそうだし、一応エスコートしてあげなきゃね」
五条の大きな手が、ナマエの背中を支える。薄い生地越しに伝わる体温が、ここが仮想現実ではないことを生々しく突きつけてくる。
そこへ、背後からザッ、ザッ、と芝を踏みしめる規則正しい足音が近づいてきた。
恵「五条先生、また騒がしいですよ。それと、あんまり女性をベタベタ触らないでください。通報されますよ」
現れたのは、黒髪をツンツンと跳ねさせた少年――伏黒恵だった。ゲームの都合上20歳という設定の彼は、少年のような危うさと、大人の男になりつつある骨格の逞しさを同居させている。
五条「ひどいなー恵! 通報だなんて。僕はこう見えて紳士なんだよ? ほら見て、この子が新しい仲間のナマエ。可愛いでしょ?」
恵「新しい、仲間……?」
恵の視線が、五条に支えられたナマエへと向く。
その瞬間。
カーーーーーンッ!!
空耳ではない、明確なビブラスラップの乾いた音が恵の脳内に鳴り響いた。それはゲームの中で何度も聞いた、キャラクター同士に「恋の予感」が発生した際のエフェクト音そのものだった。
恵「…………っ!」
恵の足が止まる。
彼はナマエの顔を直視したまま、言葉を失って大きく目を見開いた。緑がかった瞳が激しく揺れ、みるみるうちに耳朶まで真っ赤に染まっていく。
五条「おや……? 恵、どうしたの? 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してさ。もしかしてナマエのあまりの美しさに魂抜かれちゃった?」
恵「っ……な、……違……っ、うるさい、です……!」
ナマエ「あの、恵……くん?」
ナマエが戸惑いながらその名を呼ぶと、恵は弾かれたように一歩後退した。心臓の鼓動がこちらまで聞こえてきそうなほど、彼の呼吸は乱れている。まだ一言も、まともな自己紹介すら交わしていないというのに。
恵「……伏黒、恵、です。……すみません、少し、その……風が強いので……」
五条「風? 無風だよ? 恵、君、今めちゃくちゃ動揺して赤くなってるよね。面白いなあ、これ。ねえナマエ、こいつね、普段は仏頂面で可愛げのない教え子なんだけど、今は茹で上がったタコみたいになってる。写真撮っていい?」
恵「やめてください!! 五条先生、本当に……黙っててくれ……」
恵は顔を覆うようにして視線を逸らしたが、指の隙間から覗く視線は、磁石に引き寄せられるようにナマエを追っている。その眼差しは、単なる好奇心にしてはあまりに熱く、不器用な情熱を孕んでいた。
ナマエ(……何、この状況。本当に『トモコレ』の世界なの?)
混乱するナマエの肩を、五条がこれ見よがしに抱き寄せる。
五条「まあいいや! とりあえず……みんなが待ってる家の方に行こうか。傑とか硝子が見たら、恵のこの顔だけで一晩中酒の肴にするだろうなあ。楽しみ!」
恵「……絶対、連れて行かせません。五条先生みたいなデリカシーのない人に、彼女を任せられるわけないでしょう」
五条「お、言うねえ。独占欲の塊かよ。でもナマエは僕が最初に見つけたんだから、僕に優先権があると思わなーい?」
恵「そんな権利、認めるわけない。……ナマエさん、こっちへ。その……怪しい男からは離れたほうがいい」
恵の手が、五条とは反対側のナマエの腕を掴んだ。
強くはない。けれど、拒絶を許さないような必死さが、その掌から伝ってくる。
右側には、余裕たっぷりに笑いながらも、その指先がナマエの腰をなぞるように愛撫する五条。
左側には、顔を真っ赤にしながらも、縋るような力強さで彼女を繋ぎ止める恵。
異世界から来たばかりのナマエを待っていたのは、平穏なスローライフとは程遠い、あまりに熱い執着の世界だった。
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「アンタはここで、俺の『片想い』の相手として、一生俺だけに犯されていればいい。画面の外になんて、二度と帰さないから――」
…まさか、こんな事になるなんて。
─── …
窓の外では、ぬるい春の夜風が揺れていたはずだった。
ナマエの手元にあったのは、懐かしさに惹かれて手に取った『トモダチコレクション』の新作。
画面の中ではデフォルメされた「彼ら」が、シュールな動きで日常を謳歌している。
お気に入りのキャラクターを登録し、好物を与え、人間関係を眺める――そんな穏やかな娯楽に耽っていたはずが、突如として視界が歪んだ。
「……っ、なに、これ……」
強烈な眩暈が脳を揺らす。画面から溢れ出したような暴力的な光が視神経を焼き、ナマエはたまらず目を閉じた。…意識が急速に遠ざかる。まるで、重力の軸がすり替わったような、不気味な浮遊感。
次に瞼を持ち上げたとき、網膜に飛び込んできたのは液晶の光ではなかった。
突き抜けるような青空。そして、背中に伝わる柔らかな芝生の感触。
五条「こんにちは、初めましてかな?」
鼓膜を叩いたのは、驚くほど耳に馴染む、けれど背筋が震えるほど艶っぽい声音だった。
影が落ちる。
ナマエが視線を上げると、そこには白銀の髪を揺らし、碧眼長身の男が立っていた。五条悟。そのビジュアルは、漫画やアニメで見た通りの、完成された「本物」だ。
しかし、彼が浮かべている軽薄な笑みと、どこか緊張感の欠けた空気感は、先ほどまで遊んでいたあのゲームの住民そのものだった。
ナマエ「……ごじょう、さとる……?」
五条「正解! サービスでウインクしちゃう。はい、パチンッ」
大仰に片目を閉じ、指先でピストルの形を作ってみせる五条。その動作一つ一つが、モデルのような外見に反して絶望的にチャラい。
彼は呆然とするナマエの脇に手を差し入れると、赤ん坊でも持ち上げるかのような軽やかさで彼女を抱き起こした。
五条「いやあ、いきなり空から降ってくるから驚いたよ。新しい住人さんかな。名前、教えてくれる?」
ナマエ「……ナマエ。ナマエ、です」
五条「ナマエね。オッケー、覚えた。いい名前じゃん、響きが可愛い。ねえ、立ちくらみとか大丈夫? 傑に『変な女の子拾った』って報告したら怒られそうだし、一応エスコートしてあげなきゃね」
五条の大きな手が、ナマエの背中を支える。薄い生地越しに伝わる体温が、ここが仮想現実ではないことを生々しく突きつけてくる。
そこへ、背後からザッ、ザッ、と芝を踏みしめる規則正しい足音が近づいてきた。
恵「五条先生、また騒がしいですよ。それと、あんまり女性をベタベタ触らないでください。通報されますよ」
現れたのは、黒髪をツンツンと跳ねさせた少年――伏黒恵だった。ゲームの都合上20歳という設定の彼は、少年のような危うさと、大人の男になりつつある骨格の逞しさを同居させている。
五条「ひどいなー恵! 通報だなんて。僕はこう見えて紳士なんだよ? ほら見て、この子が新しい仲間のナマエ。可愛いでしょ?」
恵「新しい、仲間……?」
恵の視線が、五条に支えられたナマエへと向く。
その瞬間。
カーーーーーンッ!!
空耳ではない、明確なビブラスラップの乾いた音が恵の脳内に鳴り響いた。それはゲームの中で何度も聞いた、キャラクター同士に「恋の予感」が発生した際のエフェクト音そのものだった。
恵「…………っ!」
恵の足が止まる。
彼はナマエの顔を直視したまま、言葉を失って大きく目を見開いた。緑がかった瞳が激しく揺れ、みるみるうちに耳朶まで真っ赤に染まっていく。
五条「おや……? 恵、どうしたの? 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してさ。もしかしてナマエのあまりの美しさに魂抜かれちゃった?」
恵「っ……な、……違……っ、うるさい、です……!」
ナマエ「あの、恵……くん?」
ナマエが戸惑いながらその名を呼ぶと、恵は弾かれたように一歩後退した。心臓の鼓動がこちらまで聞こえてきそうなほど、彼の呼吸は乱れている。まだ一言も、まともな自己紹介すら交わしていないというのに。
恵「……伏黒、恵、です。……すみません、少し、その……風が強いので……」
五条「風? 無風だよ? 恵、君、今めちゃくちゃ動揺して赤くなってるよね。面白いなあ、これ。ねえナマエ、こいつね、普段は仏頂面で可愛げのない教え子なんだけど、今は茹で上がったタコみたいになってる。写真撮っていい?」
恵「やめてください!! 五条先生、本当に……黙っててくれ……」
恵は顔を覆うようにして視線を逸らしたが、指の隙間から覗く視線は、磁石に引き寄せられるようにナマエを追っている。その眼差しは、単なる好奇心にしてはあまりに熱く、不器用な情熱を孕んでいた。
ナマエ(……何、この状況。本当に『トモコレ』の世界なの?)
混乱するナマエの肩を、五条がこれ見よがしに抱き寄せる。
五条「まあいいや! とりあえず……みんなが待ってる家の方に行こうか。傑とか硝子が見たら、恵のこの顔だけで一晩中酒の肴にするだろうなあ。楽しみ!」
恵「……絶対、連れて行かせません。五条先生みたいなデリカシーのない人に、彼女を任せられるわけないでしょう」
五条「お、言うねえ。独占欲の塊かよ。でもナマエは僕が最初に見つけたんだから、僕に優先権があると思わなーい?」
恵「そんな権利、認めるわけない。……ナマエさん、こっちへ。その……怪しい男からは離れたほうがいい」
恵の手が、五条とは反対側のナマエの腕を掴んだ。
強くはない。けれど、拒絶を許さないような必死さが、その掌から伝ってくる。
右側には、余裕たっぷりに笑いながらも、その指先がナマエの腰をなぞるように愛撫する五条。
左側には、顔を真っ赤にしながらも、縋るような力強さで彼女を繋ぎ止める恵。
異世界から来たばかりのナマエを待っていたのは、平穏なスローライフとは程遠い、あまりに熱い執着の世界だった。
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