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3章 星を継ぐ希求
!!必読!!夢小説名前設定
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歴史に残るだろうな、アクアラインの崩落なんて大災害は。
だが、あれだけの大事件をやらかした割に、結果としちゃ怪我人すら一人も出なかった。
呪術高専だの総監部だのの"救う側"の連中にとっちゃ、歴史的な大快挙の任務だったわけだ。
…だが、そんな綺麗事はどうでもいい。
俺の目の前で、すべての魔力を絞り出して泥のように眠りこけているコイツがいなけりゃ、今頃どうなっていたことやら。…東京湾の底に、特級の呪霊共と一緒に五条も夏油もまとめて沈んでいたかもしれない。
俺は、自分のベッドに横たわるナマエの、陽の光を浴びてきらめく銀髪にそっと大きな手を伸ばした。指先を絡めると、サラリとした絹糸のような感触が、俺の無骨な指の隙間を滑るように撫でていく。
甚爾「……本当、ありえねぇ身体しやがって」
最初はただの金、懸賞金に釣られて興味を持っただけだった。呪術界の上層部が血眼になって探している『伝説のヒーラー』。そいつを捕まえりゃ、一生遊んで暮らせるだけの端金が手に入る。ただそれだけの動機で、俺はコイツの前に現れた。
だが、いざナマエの纏う、あの世のどの女とも違う甘やかで清廉な空気に一瞬でも触れた瞬間、金なんてどうでもよくなった。
ーー身体の芯から、コイツが欲しい、手に入れたいという強烈な飢えが湧き上がってきたんだ。
口では「捕まえてやる」だの、乱暴な事もいくらでも言ったかもしれない。だが、一番最初、あの廃モールで俺の指先がアイツの服を掠めた瞬間…そして廃モールを抜けた森でコイツの放った未知の魔法をまともに打ち込まれ、抗えない快楽に脳髄まで飲まれたあの瞬間に俺は…姿もまともに知らなかったコイツという存在に、魂の根底へ深く杭を打たれていた。
その後、薄暗い廃校でついに姿を現したナマエを見た時、俺は本気で心臓が跳ねるのを自覚した。この世にこんな、光そのものみたいなやつがいるのかって、脳が理解を拒否した。言葉にならない、暴力的なまでの磁力を感じて、目が離せなくなった。
もう誰も好きにならない。誰にも興味を持たない。いや、持てないし、なんなら十数年前にとっくに捨てちまったと思っていた『心』という厄介な代物が、コイツの前に立つだけで勝手に激しく反応し始めている。
その事実に、俺はこれまでにないほどの危機感を感じざるを得なかった。また誰かを特別に思えば、あの時みたいにすべてを失って壊れるだけだ。そんなの、俺のガラじゃない。
だが、そんななんでもないフリ、ただの捕食者のフリを必死に気取っていた俺の前に、コイツはあろうことか「俺に毒を盛る」なんて可愛らしいお膳立てをして、自ら隙を晒して転がり込んできたんだ。
…あんな完璧なチャンスを目の前に出されちゃ、男として、ナマエを文字通り骨の髄まで食い尽くすしかねぇだろ。
甚爾「……抗えるわけねぇだろ、こんなの」
いざ身体を重ね、その最も柔らかい内側に触れて完全に繋がって仕舞えば、もう言い訳なんて通用しなかった。俺は自分の中に、あの薄汚い忘却の彼方に沈めたはずの「愛おしい」と感じる心が、また醜くも優しく顔を覗かせていることに、嫌でも気付かざるを得なかった。
しかも、だ。あのアホみたいに賢いAIソフィアとやらが、世界中の男の中から勝手にこの俺をコイツの「夫」に指名したんだ。
そりゃあ……いくらひねくれた俺だって、嬉しくないワケないだろ。世界から拒絶されたこの俺が、宇宙の至高の存在の特別になれたんだからな。
柄にもなく、好きだ、愛してるなんて、甘っちょろい言葉を何度も何度も口走ってしまうくらいには、俺はナマエのことを、狂おしいほどに愛おしく思っちまってる。
俺のベッドで、俺のバカでかい黒いTシャツ一枚だけを身に纏って眠る、世界で一番愛おしい女。
襟元からはだけた白い鎖骨から、湯上がりの甘い香りが部屋の空気中にふわりと漂っている。その香りにどうしようもなく誘われて、俺は背後からナマエの華奢な身体を抱きしめたまま、唇でその柔らかい首筋の肌をなぞった。
甚爾「……おい、ナマエ。そろそろ起きろ」
唇が触れた瞬間、ナマエの長い睫毛が震え、「んん……」と小さな声を漏らした。目覚めが近いことが分かり、俺は耳元で低く声を掛けた。
ナマエは微睡みの中で、ゆっくりと俺のほうへと身体を反転させてくる。正面から向き合った瞬間、コイツの紫色の瞳がじっと俺を見つめた。
ナマエ「……あれ、……甚爾さん……。僕は……」
甚爾「あぁ、あれからずっと眠ってたんだよ、お前。ここは俺の部屋だ。誰も入ってこねぇから安心しろ」
俺はナマエの潤んだ瞳を見つめ返し、愛おしさを堪えきれずにその白い額へ深く唇を押し当てた。
そのまま、布団の中でナマエの細い腰から、なだらかな太ももにかけて、自らの手のひらでゆっくりと感触を確かめるように撫で上げていく。コイツが俺を求めて、じっとその熱を受け入れているのが手に取るように分かって、胸の奥がカッと熱くなる。
甚爾「ナマエ……」
お前のすべてが愛おしくてたまらない。俺はコイツの放つ甘い匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、擦れた声でその名を呼び、唇で彼女の顔の輪郭を優しくなぞった。
すると、ナマエは重い腕を無理に動かして、俺の首の後ろへと回してきたんだ。初めてナマエの側から俺を抱きしめ返してくれた、その不器用な温かさに、俺の心臓はドクンと大きく脈打った。愛撫を止め、じっとその濡れた瞳を見つめる。
ナマエ「甚爾……さん。……あなたにこうして強く抱きしめられると、僕の胸の奥から、言葉にできないほど温かくて、嬉しくて、それなのに少しだけ切ない気持ちが、全身を駆け巡るようになったんです。……もしかして、これが、人間の言う……『好き』という気持ちなんでしょうか」
少し戸惑うような、けれど一点の曇りもない真っ直ぐな視線が俺を射抜く。
俺は一瞬、本当に驚いて目を見開いた。宇宙で二千年も生きてきたっていうこの高潔な少女が、初めて抱いた『好き』という感情を、この俺に向けて差し出してくれている。
俺は静かに口の端を弓なりに釣り上げると、これ以上ないほど低く、落ち着いた声色で応えた。
甚爾「……あぁ、そうだ。それが『好き』って感情だ。……そして、どうしようもなく相手が愛おしい、って言う気持ちだ。他の誰でもねぇ、俺に対してそれを持ったんだ。一生忘れるな、…覚えとけ」
俺はナマエの唇を塞いだ。今度はさっきまでとは違う、明確な独占の意思を込めて、分厚い舌をコイツの小さな口内へと深く、深く侵入させる。
ナマエが驚いたように小さく息を呑み、すぐに俺の舌を受け入れるようにその細い舌を絡めてきた。粘膜が擦れ合い、互いの体液が混ざり合うたび、コイツの脳が甘く痺れていくのが、抱きしめた身体の震えから生々しく伝わってくる。
すべてを融かして一つになりたいと願うように、俺たちは何度も、何度も激しく唇を重ねた。
ーー俺がお前の最初で最後の『愛おしい人』になろう。
窓の外から差し込む夕方の斜陽が、抱き合う俺たちの身体をどこまでも赤く、優しく包み込み、俺はただ、腕の中にある確かな生命の熱を、二度と離さないと誓うように強く、強く抱きしめ続けた。
甚爾「愛してる。ナマエ」
END
2026.6.13
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