女性時(ノーマル)の名前と、男装時の名前を入力してお楽しみください。
1章 幻を追って
!!必読!!夢小説名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
==虎杖・恵・釘崎Side==
マロンモールに「帳」が降りた瞬間、虎杖悠仁はいつも通りの呪力の重さを覚悟していた。ジメジメとしたカビの匂いと、へばりつくような負の感情。それが「仕事場」の常識だ。だが、一歩踏み出した先の光景は、彼の知る呪術界の常識を根底から覆した。
虎杖「なあ、恵、釘崎。ここ、本当に呪霊の巣か? すっげーいい匂いしねー?」
釘崎「あんたの鼻がバカになったんじゃないの。……と言いたいけど、何よこれ。高級ブランドの香水でもぶちまけたみたいな、嫌味じゃない花の香りがするわね」
恵「……静かすぎる。一級呪霊の気配が霧散している。まるで、最初から何もいなかったみたいだ」
三人は、五条や夏油の後ろを警戒しながら歩を進める。吹き抜けの広場に出たとき、虎杖の視界に飛び込んできたのは、RPGゲームの魔法を彷彿とさせる青白い光の奔流だった。
そこにいたのは、人ではない何か。
魔法陣の中心で、祈るように背中を向けていた「エイ」の姿を見た瞬間、虎杖の心臓はいつもとは違うリズムで脈打った。
虎杖「……キレ〜……」
無意識に零れた呟き。それは恐怖でも驚きでもなく、純粋な憧憬に近かった。振り返ったエイの紫色の瞳と視線がぶつかったとき、虎杖はただその美しさに魂を抜かれた。
エイが逃げ出した瞬間、一番に身体が動いたのは虎杖だった。
虎杖「おい! まてよ! 行くなよ!」
恵「虎杖、一人で行くな! 釘崎、左から回れ!」
釘崎「言われなくても! アンタたち、あの子を逃したら末代までの恥よ! 絶対捕まえるわよ!」
マロンモールでのギリギリのチェイス。捕まえられそうでなかなか触れることさえできない。
エイが帳に穴をあけてフィールドを森へと移した。
森の中、三人は必死にエイの背中を追っていた。
透明化魔法によってなかなか捉えにくい状況に、釘崎は苛立ちを隠さずに叫んだ。
釘崎「ふざけんじゃないわよ! 姿を隠して逃げるなんて卑怯じゃない! 正々堂々と私に拝ませなさいよ!」
恵「釘崎、叫ぶな。……虎杖、そっちはどうだ」
虎杖「匂いだ! 香りだけは消えてねえ! 恵、四時の方角、木が揺れた!」
虎杖の並外れた嗅覚と動体視力は、不可視のエイが空気を切り裂く微かな歪みを捉えていた。必死に追いかけるうちに、虎杖の胸には「捕まえたい」という義務感以上の熱が宿っていた。
虎杖(あんな綺麗な人、見たことねえ。手首掴んだら、どんな感触なんだろう。冷たいのか、それとも俺たちよりずっと熱いのか)
恵「『脱兎』! 退路を塞げ! 虎杖、そのまま押し込め!」
恵の合図で、無数の兎がエイを追い詰める。恵自身も冷静を装ってはいたが、内心ではエイが放つ清浄な魔力に当てられ、理性が揺らいでいた。呪術師として生きてきた彼にとって、その「光」は毒のように甘美で、触れれば二度と戻れなくなるような、危険な香りがしていた。
恵(あれは呪いじゃない。正反対のものだ。だからこそ、高専が管理下に置かなければならない。……それ以上に、俺がこの手で確かめたい)
釘崎「あーもう! 捕まえられそうで捕まんないわね! 悠二、あんたもっとスピード上げなさいよ!」
虎杖「やってるよ! 釘崎こそ、足腰ガタついてんじゃないの!」
釘崎「はあ!? アンタ、死にたいの!?」
口論をしながらも、三人の連携はさらに加速する。行き止まり、行き止まりを重ねてエイを包囲網へと誘い込む。ついに、五条や夏油、誠に甚爾までもがエイを取り囲んだとき、三人は勝利を確信した。
だが、その確信はエイの最後の一撃によって、跡形もなく消し飛んだ。
エイ「――ハートレスサークル!」
虎杖「え、……何、これ……」
青白い魔法陣が足元から溢れ出した瞬間、虎杖の意識は宇宙の果てまで飛ばされたような感覚に陥った。
それは、今まで感じたことのない種類の「快感」だった。
虎杖(ああ……、気持ちいい。体が溶ける。……俺、今まで何をそんなに必死になってたんだっけ。全部、どうでもいい。ただ、この光の中にいたい)
膝から崩れ落ち、草の匂いとエイの残香が混ざり合う地面に顔を埋める。
恵は自分の背骨を一気に駆け抜ける熱いエネルギーに、喉を鳴らして喘いだ。
恵「っ、あ……。く、そ……」
抗いたいのに、指先ひとつ動かない。脳内が真っ白に塗りつぶされ、強烈な多幸感が心臓を鷲掴みにする。恵は、自分がこれまで負ってきた呪いの重みが、すべて消えていくような錯覚に囚われていた。
釘崎にいたっては、もう言葉すら出てこなかった。ただ、うっとりとした表情で、去りゆくエイの「空気」を感じていた。
釘崎(……何よ、これ。あんなことして、勝手にいなくなるなんて。……絶対、許さない。捕まえて、何回でも、これを、……やらせて、やるんだから)
***
伊地知に発見され、高専に連れ戻された後も、三人の「余韻」は消えなかった。
医務室のベッドで並んで座っている三人の顔は、呪術師としては失格と言えるほどに、だらしなく蕩けていた。
虎杖「……恵さあ。あの人、……また会えるかな」
恵「……。さあな。だが、五条先生たちが黙っていないだろう。……俺も、あのまま終わるつもりはない」
釘崎「当然よ。あんな気持ちいい思いをさせといて、一人で逃げようなんて、一億年早いわよ。……ねえ悠二、あの人の瞳、何色だった?」
虎杖「……綺麗な紫だった。アメジストみたいな、さ」
虎杖は天井を見つめながら、自分の掌を見つめた。
あの時、エイに触れる寸前だった指先が、まだ微かに熱を持っている気がする。
虎杖(次に会ったら、もう絶対離さねえ。……ごめんな、魔術師さん。俺、あんたのこと、もう忘れられねえよ)
三人の心には、エイが放った「聖なる毒」が、深々と根を張っていた。
それは五条や夏油のような歪んだ独占欲とはまた少し違う、純粋で、それゆえに真っ直ぐな、若さゆえの狂気を含んだ執着だった。
next
5/5ページ
