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2章 囚われの魔術師
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寝室の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、あまりに不遜な光景だった。
甚爾にはソファから動くなと指示していたはずなのに、いつ移動したのか……ナマエのベッドのど真ん中で、お気に入りのぬいぐるみを枕にして寝そべっている。
しかもだ。カジノを見学するだけではなく、ナマエの端末内にあった銀河通貨をカジノにチャージしたのだろうか。
ゲームに参加している様子が見えた。
銀河カジノの派手な演出に目を細める伏黒甚爾。
その姿を見つめながら、ナマエはひゅっと息を吸い込むと白衣のポケットに忍ばせた小瓶をぎゅっと握りしめた。
甚爾「おいお嬢ちゃん! 見ろよこれ、ブラックジャックで21!!ツキが回りすぎて怖いくらいだぜ!」
甚爾はナマエの方を振り返りもせず、片手で端末を高く掲げて勝利を誇示した。
その無防備な彼に向かって、ナマエは努めて平静を装い、端末を操作し飲料を用意すると一歩ずつ歩み寄る。
ナマエ「……おめでとうございます。大勝ちしたなら、これでお祝いしませんか」
彼女が差し出したのは、先ほど甚爾が気に入って煽っていた琥珀色の酒だ。
……ただし、その中には彼女が調合した高純度の睡眠導入剤がたっぷりと溶け込んでいる。
甚爾「あぁ? お祝いねぇ。……気が利くじゃねぇか、お嬢ちゃん」
甚爾は画面から視線を外し、ゆっくりと起き上がった。
その
彼は何も言わず、差し出されたコップを手に取った。
ナマエは心臓が口から飛び出しそうなほどの動悸を抑え、彼がそれを飲み干す瞬間を待った。
…だが、甚爾の口角が、獲物を罠にかけた時のような不吉な形に吊り上がる。
甚爾はあえてその飲み物を一口含んだ。
喉を鳴らして飲み込むかと思いきや、彼はそのままコップをサイドテーブルへと置く。
ナマエ「……飲まないの、ですか?」
問いかけた次の瞬間、視界が激しく回転した。
がしりと細い手首を掴まれ、ナマエの身体は重力のままにベッドへと引き摺り込まれた。
シーツの冷たさが背中に伝わるよりも早く、甚爾の巨大な影が彼女を覆い尽くす。抗う暇もなく、彼の熱い唇がナマエの口を強引に塞いだ。
ナマエ「ん、……ッ!? む……」
驚きに目を見開くナマエの口内へ、甚爾が含んでいたはずの琥珀色の液体が、彼の巧みな舌の動きと共に流し込まれる。
喉を直接蹂進されるような官能的な手触りと、薬品特有のわずかな苦み。
ナマエは咽せながらも、自らが用意した「毒」を強制的に飲み込まされてしまった。
…甚爾は満足げに唇を離すと、顎から滴る雫を手の甲で拭い、冷徹な瞳で彼女を見下ろした。
ナマエ「……なぜ……気づいて……」
甚爾「誰だと思ってんだよ。お前、こういう裏工作は慣れてねぇだろ。指先は震えてるし、殺気はダダ漏れだ。バレバレだぜ。……だからお前は甘ぇっつってンだろうが」
ほんの一口ではあったが、ナマエの純度の高い魔力回路に睡眠薬が作用し始める。
強い酒のアルコールと相まって、思考の糸が解けるように頭がボーッとし始めた。
甚爾「……ふーん? 毒ではなさそうだな。……さしずめその眼つきからして、睡眠薬ってとこか。なぁ、俺を眠らせてどーする気だったんだ? ……答えろ!」
甚爾の声が低く、重く響く。
彼はナマエの細い首筋に大きな手をかけ、親指で喉仏のあたりをキュッと圧迫した。
彼にとっては加減しているつもりの力であっても、ナマエにとっては呼吸を奪うのに十分な、死の予感を伴う暴力だった。
ナマエ「くっ……ぁ……っ」
視界が歪み、アメジスト色の瞳にじわりと涙が浮かぶ。抗おうとする手は力なくシーツを掴むだけで、自分を支配する野獣の腕をどかすことはできない。
甚爾「裏切りには罰が必要だろ。……なぁ、ナマエ。俺をこの家から追い出して、また独りぼっちの任務に戻るつもりだったのか」
甚爾は低い声で囁きながら、ナマエの顔にぐっと自分の顔を寄せた。鼻と鼻が触れ合う距離で、彼の剥き出しの熱気が肌を焼く。
甚爾「……お仕置きだ」
そう言うと、甚爾はナマエの鼻筋から額にかけて、じっとりと舌で舐め上げた。獰猛な肉食獣が、極上のご馳走をいただく前に、その味を丁寧に確認するかのような、悍ましくも熱を帯びた愛撫。
ナマエ「やめ、て……っ、甚爾、さん……」
ナマエの声は震え、睡眠薬の影響で力が入らない身体は、彼の執拗な舌の動きに抗うどころか、その異様な熱に反応して微かな震えを返してしまう。
甚爾「やめるわけねぇだろ。……お前が俺に仕掛けた毒の分、たっぷりとその身体で返してもらうぜ」
甚爾はさらに深く彼女の首筋に顔を埋め、獲物の頸動脈を狙う牙のように、その鋭い犬歯を白い肌に立てた。
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