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2章 囚われの魔術師
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メインコンソールの赤い警告灯が一つ、また一つと緑へと切り替わっていく。
その作業を終えたナマエは、弾かれたように席を立った。
壁に掛けてあった、この星の白衣によく似た清潔な上着を羽織り、背後の居住区へと駆けていく。
甚爾「おい、どこ行くんだよ。逃げんじゃねぇぞ」
ナマエ「奥の異変を確認しに行くだけです。……甚爾さんは、そこから動かないでくださいね!」
投げかけられた言葉を鼻で笑い、甚爾は賑やかなカジノの画面から視線を外した。
主人が消えたリビングは、静寂が支配している。触れるなと言われれば、余計に触りたくなるのが野獣の性だ。
甚爾は借りた端末を片手に立ち上がり、まずは窓の外を見やった。
庭の周囲を囲む空気の揺らぎ。高専の古臭い景色とは比較にならないほど高度な遮蔽回路。
ちょうどその時、窓に投影されていたホログラムが切り替わった。
地中海を思わせる陽光の景色が、一瞬にして満天の星空が輝く南国の浜辺へと溶けていく。
寄せては返す波の音までが、どこからか優しく響いてきた。
甚爾「……ハッ。贅沢な箱庭だな。……外のゴミ溜めみたいな世界を、一秒たりとも見たくねぇってワケか」
甚爾は仕事机へと歩み寄った。
先ほどまでナマエが必死に操作していたパネル群。
その一枚に、この国の地図が表示されている。赤い点がいくつか打ち込まれ、そこには「地脈エネルギー値」という不穏な数字が並んでいた。
最初に出会ったマロンモールにも、未完了を示す赤い点が灯っている。あの日、逃げ場を失った彼女を自分たちが追い詰めた記憶。獲物としての彼女と、今ここで健気に働く彼女。
そのギャップを噛み締めながら視線を動かすと、一枚の写真が目に入った。
…銀色のフレームに収まった、黒髪で長髪の美しい男。
慈愛に満ちたその瞳は、どこか遠くを見据えている。
甚爾「……フン。あいつの心に、消えねぇ杭を打ち込んだのはお前か。……死んでまで、いい身分だな」
甚爾は写真の男を射抜くように睨みつけ、吐き捨てるように呟いた。
仕事机の奥に広がるキッチンを通り抜け、甚爾はさらに奥へと踏み込む。
そこは、ナマエの極めて私的な領域だった。
……寝室。
そこには、銀河の果てで集めたのか、丸いぬいぐるみが所狭しと置かれていた。
開きっぱなしのクローゼットには、出会った時に着ていた厳かな法衣が数着。その隣には、女の子らしいふわふわとした質感の部屋着や、不思議な燐光を放つアクセサリーたちが並んでいる。
甚爾「……伝説のヒーラーの舞台裏か。……存外、ただの小娘だな」
任務の際に使うであろう武具と、乙女チックな小物が同居する空間。
甚爾は特別な秘密を覗き見してしまったような、奇妙な優越感と後ろ暗さを感じていた。
彼は躊躇うことなくナマエのベッドに腰を下ろし、そのままドサリと寝転んだ。
甚爾「……これ、チャージってのを押せば、ブラックジャックに参加できんのか」
手元の端末を弄り、勝手にチャージボタンを押し込む。
シャラーンと小気味よいサウンドが流れ、カジノの画面に手持ち金が一気に増えた。
いよいよ銀河規模のギャンブルへと本格的に参入し始めた甚爾は、不敵な笑みを浮かべてカードの配分を見守った。
***
その頃ドームの奥、研究室の暗がりにいたナマエは、異変を処理しながら一つの企みを巡らせていた。
ナマエ(……このままでは、私はずっとあの人たちの掌の上。……どうにかして、また一人で任務をこなせる状況に戻らなければ)
すぐ近くの廊下には、甚爾という名の最強の番犬が控えている。だが、ここは自分の城だ。
ナマエ(……もし、甚爾さんをこのセトルドームから排出し、セキュリティを最高レベルまで引き上げたなら。……彼は物理的に、高専に帰るしかなくなるはずだわ)
彼は高専に帰れる。
住む場所も、仲間も、帰るべき場所があるのだから。
……問題は、あの大男をどうやって無力化し、時間を稼ぎ……この部屋からつまみ出すか。
ナマエは棚からストックしていたMP回復薬を取り出し、一気に煽った。喉を焼くような濃縮された魔力が全身を駆け巡る。
ナマエ(……魔法で眠らせるか。……それとも、薬を盛るか。……どちらにせよ、意識を失わせることができれば、このドームのシステムで彼をあの車まで転送できるはず。)
冷徹な計算。ナマエは震える手で、睡眠誘導効果のある高純度の抽出液を小瓶に分けた。
自分と関わってくれた時間の情はある。不器用な彼の温もりも覚えている。だが、自由を愛する異邦の魔術師にとって、首輪を付けられることは死よりも耐え難い屈辱だった。
ナマエ「……ごめんなさい、甚爾さん。……でも、私は私の運命を全うしなきゃいけないの」
暗い研究室で、色とりどりのネオン色の装置が不気味に明滅する。ナマエは小瓶を隠し持ち、平静を装ってリビングへと戻る手順を頭の中で反芻した。
一方、寝室のベッドで大勝ちし始めた甚爾は、そんな彼女の決意など露知らず、カジノの喧騒に身を委ねていた。
甚爾「……お、きたぜ! ……おい、お嬢ちゃん! 早くこっち来いよ、最高のツキが回ってきてるぞ!」
甚爾の呼び声が響く。それは、裏切りの準備を整えたナマエにとって、カウントダウンのような調べとなって耳に届いた。
ナマエ(……今よ。……今、行かなきゃ)
白衣のポケットに薬を忍ばせ、ナマエは静かに寝室へと向かう廊下を歩み始めた。
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