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2章 囚われの魔術師
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五条は医務室の棚と薬の見た目を伝えると甚爾から1つの青く透けるガラス瓶のクリームケースを受け取った。
医務室の狭いベッドの上、ナマエの意識はもはや混濁の極みにあった。右手の指先からピリピリとエネルギーが流し込まれるのは、五条が塗りつけた「高専秘蔵の特殊な治療薬」だ。
呪力を強制的に活性化させ、細胞を繋ぎ合わせるその薬は、傷を癒やすと同時に、電気のようなエネルギーの奔流の刺激が彼女の脊髄を駆け抜ける。
五条「あはは。顔、真っ赤だよ。ナマエ、もしかして気持ちよくなっちゃった?」
五条の蕩けたような、悦びに満ちた声が耳元で弾ける。彼は抵抗する力のないナマエの反応を慈しむように眺めると、薬の刺激で熱を帯びたその耳の中に、濡れた舌を強引に捩じ込んだ。
ナマエ「ん、……ッ、あ……ッ」
脳を揺さぶる鼓膜に直接響く湿った音。現代最強を自称する男の舌によって蹂躙されていく。生理的な涙が溢れ、視界が白く霞む中で、ナマエは自分の身体が自分のものでなくなっていく恐怖に震えた。
追い打ちをかけるように、スカートの中では夏油傑の大きな手が、執拗に太腿の内側を撫で回していた。
夏油「いい反応だね。……魔力がないと、こんなにも敏感になるのか。君の身体は、言葉とは裏腹に、私たちの接触を待ち望んでいるように見えるよ」
夏油の指先が、下着の端、もっとも繊細な境界線をわざと掠めるように動く。そのたびにナマエの腰がビクリと跳ね、喉の奥から切ない嬌声が漏れ出した。
ナマエ「……ッあっ、うぅ、ぁ、……ッやめろ、っ」
絞り出した拒絶の言葉は、熱に浮かされた吐息に溶けて消える。自分を律してきた誇りも、異星の使者としての矜持も、男たちが放つ濃厚な情欲の渦に飲み込まれて霧散していく。
甚爾は、壁に背を預けたまま、若い二人の「教育」を眺めていた。呪術界の重鎮たちが天文学的な懸賞金をかけ、血眼になって行方を追っていた伝説のヒーラー。
その正体が、今やベッドの上で無様に喘ぎ、指先一つ動かせずに男たちの慰みものになっている。
甚爾「……ハッ。魔力がなきゃ、ただの女ってワケだ。上のアホどもが見たら腰抜かすぜ。……あのアホどもが必死に探してる獲物が、目の前でこんな情けねぇ声出してんだもんな」
甚爾は低く笑い、自身もその「獲物」に触れようと、大きな手をナマエの頭へと伸ばしかけた。
その時、医務室の扉が勢いよく開き、冷ややかな空気が流れ込んだ。
硝子「おい、テメーら。寄ってタカって女の子いじめてんじゃないわよ。そこをどきなさい」
家入硝子が、呆れたような、それでいて底知れない怒りを含んだ声で言い放った。
五条「えー。いーじゃん硝子。ナマエがバカなことして怪我したからさ、ボクが親切に特級の治療薬を浸透させてあげてただけだよ」
五条はナマエの耳からゆっくりと舌を引き抜くと、悪びれもせずに肩をすくめた。その唇には、ナマエの肌に残した熱がまだ付着している。
硝子「……それだけじゃないでしょ。薬を塗るのに、なんで相手を泣かせる必要があるわけ? バカが。傑もその手を離しなさい。解剖の刑に処すわよ」
夏油「おっと、それは怖いね。……硝子、私たちはただ、彼女を落ち着かせていただけだよ」
夏油は不遜な笑みを浮かべて、ナマエのスカートからゆっくりと手を引き抜いた。甚爾もまた、面白くなさそうに舌打ちをして手を引っ込める。
ナマエにとって、硝子の登場は文字通りの救世主だった。
覆い被さっていた五条の巨躯が離れ、身体を侵食していた夏油の手のひらも消える。ナマエは荒い息を整えながら、震える手で目元の涙を拭った。
ナマエ「はぁ、……はぁ、……っ。ありがとう、ございます……」
安堵のあまり、ナマエの全身から力が抜ける。
硝子「気にしなくていいわよ。こいつらは放っておくと、すぐに自分の領土を主張し始める獣みたいなもんだから。……ほら、お前ら。用が済んだならさっさと出ていきな。この子はまだ安静が必要なの」
硝子はナマエと男たちの間に割って入ると、五条の背中を無造作に叩いて出口へと促した。
五条「冷たいなぁ、硝子。……ナマエ、また後でね。次はもっと『隅々まで』薬を塗り込んであげるから」
五条は去り際に、ナマエの頬に指先で触れ、挑発的なウインクを残していった。
夏油「ゆっくり休むといい。……ナマエ、君がどこへ行こうとしても、結局は私のところに戻ってくることになるのだから」
夏油は聖職者のような穏やかな声で、呪いにも似た執着を告げて背を向ける。
甚爾「……お嬢ちゃん、次は邪魔が入らねぇところで遊んでやるよ。精々、今のうちにその震えを止めとくんだな」
甚爾の重厚な足音が遠ざかり、ついに医務室の扉が閉まった。
室内には、硝子の使った消毒液の香りと、ナマエの乱れた呼吸音だけが残される。
ナマエ「……助かった。……私は、どうすればいいのですか」
ナマエは膝を抱え、自身の身体に残る男たちの感触を消し去るように強く抱きしめた。
硝子「どうもしなくていいわよ。……しばらくは私の目が届くところに居なさい。あのバカどもからあんたを守れるのは、ここじゃ私くらいのもんだから」
硝子はそう言って、ナマエの乱れた服を整えてやり、温かなタオルを差し出した。
異邦の魔術師を巡る情欲の争いは、一時的な停戦を迎えたに過ぎなかった。
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