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2章 囚われの魔術師
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嵐のような出来事の後、医務室に残されたのは、けぶるような沈香と、かすかな血の匂いだけだった。
家入硝子は、深く溜息をつくと、手慣れた動作で用意したホットタオルを絞った。
硝子「……はぁ、ったく。とんでもないもん見せつけられたわね。三十路手前の女に見せる余興にしては、毒気が強すぎるわよ」
硝子は、意識を失ってうなされている ナマエ の肌を、慈しむように丁寧に拭っていく。
宿儺が残した不浄な痕跡、そして彼女の純潔の証であった朱。それらを温かなタオルで絡めとり、彼女を起こさないようタオルを敷きシーツを整えて布団を掛け直した。床に無残に脱ぎ捨てられていたハイネックのノースリーブとスカートを拾い上げ、皺を伸ばして畳む。
その傍らには、彼女が大切にしていたであろうレザージャケットを静かに置いた。
五条、夏油、甚爾の三人は、医務室の隅で所在なげに立ち尽くしていた。普段の傲岸不遜さはどこへやら、彼らの頬は一様に朱を帯びている。
最強の術師も、教祖も、術師殺しも、目の前で繰り広げられた「千年前の神話」の生々しさに、毒を当てられたようだった。
虎杖悠仁にいたっては、意識が戻るなり顔を真っ赤にして、逃げるように医務室を飛び出していった。
自分の身体が犯した罪、そして手に残る感触に耐えられなかったのだろう。
硝子「あんたたちも、さっさと出ていきなさい。これ以上ここにいられても、空気の循環が悪くなるだけだわ。……悟、傑、甚爾。特にあんたたちは、少し頭を冷やしてきなさい」
硝子の冷ややかな声に、三人は反論することもなく、各々の執着を瞳に宿したまま部屋を後にした。
***
翌朝。
呪術高専の食堂は、朝から異様な熱気に包まれていた。
硝子の懸命なケアと、宿儺による強引な「浄化」が功を奏したのか、 ナマエ の顔色は昨日よりも幾分か良くなっていた。
硝子に連れられ、少し頼りなげな足取りで食堂に現れた彼女を見て、場が静まり返る。
昨夜の出来事――虎杖の中の宿儺が、あの「幻のヒーラー」を蹂躙したという噂は、瞬く間に高専内を駆け巡っていた。一年生も二年生も、好奇と困惑、そして言いようのない羨望が混ざり合った複雑な視線を彼女に注ぐ。
虎杖「……っ、おはよう、ございます……」
虎杖が、トレイを持つ手が震えるのを必死に抑えながら声をかける。その隣で、伏黒恵は気まずそうに目を逸らし、釘崎野薔薇は「あんた、大丈夫なの?」と言いたげに唇を噛んでいた。
大人たちの視線は、より実利を孕んだ執着に満ちている。五条はアイマスク越しに彼女のバイタルを確認し、夏油は隣に座る隙を伺い、甚爾は壁に背を預けて、彼女の歩調を獲物のように見定めている。
硝子「はいはい、野次馬はそこまで。今は病人なんだから、静かに食べさせてあげなさい」
硝子は寄ってくる生徒たちを片手で制止し、 ナマエ を自分の向かいの席に座らせた。提供されたのは、消化に良い和食と、硝子が用意した温かいスープだ。
ナマエ 「……ありがとう、ございます」
ナマエ の声はまだ細く、消え入りそうだ。彼女は周囲の視線に怯えるように肩を窄め、スープを一口ずつ、大切そうに口に運む。
硝子に対しては、昨夜の介抱のおかげか少しだけ警戒を解いているようだったが、それでも絶妙な距離感――いつでも逃げ出せるような緊張感が消えていない。
五条「ねぇ ナマエ 、朝ごはんは口に合う? 嫌いなものがあったら僕が全部食べてあげるけど?」
五条がヌッと横から顔を出した。その軽薄な声が、 ナマエ の肩をびくりと震わせる。
夏油「悟、彼女を怖がらせてはいけないよ。…… ナマエ 、ここの食事は安全だ。毒も薬も入っていない。安心して栄養を摂るといい」
夏油が微笑みを浮かべてフォローを入れるが、その瞳の奥には「二度と毒(宿儺)を喰らわせたくない」という昏い独占欲が渦巻いている。
甚爾「ケッ、どいつもこいつも偽善者ぶって。……おい、魔術師。さっさと食って力つけろ。……まだ、身体の節々が痛むんじゃねぇのか?」
甚爾の直球すぎる言葉に、 ナマエ の顔が途端に真っ赤に染まる。昨夜、宿儺に貫かれた際の鈍い痛みと、身体の奥に刻まれた違和感が蘇ったのだろう。
ナマエ 「……っ、……うるさい、です……。あっちに、行ってください……」
消え入るような反論。だが、それは拒絶というにはあまりに弱々しく、男たちの加虐心をさらに煽るものだった。
硝子「ほら、あんたたち。彼女が食欲を無くすでしょう。…… ナマエ 、気にしなくていいわ。こいつらはただの重度のストーカー予備軍だから。後で私が、特製の睡眠薬でも盛っておいてあげる」
硝子が冗談めかして言うと、食堂の空気は少しだけ和らいだ。しかし、 ナマエ は知っている。この穏やかな朝食の裏側で、自分を繋ぎ止めようとする見えない鎖が、より強固に、より深く、自分の足首に絡みついていることを。
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