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2章 囚われの魔術師
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高専の医務室は、深夜というのに重苦しい沈黙と、場違いなほど甘く清浄な香りに包まれていた。
家入硝子は、防護手袋をはめた指先で、屋上に残されていた1本の小瓶を検体台に置いた。
五条「どう、硝子。何か分かった?」
五条はパイプ椅子を逆向きに座り、背もたれに顎を乗せて硝子の手元を覗き込む。その隣では夏油が壁に寄りかかり、甚爾は窓際で月を眺めるふりをしながら耳を立てていた。
硝子「……結論から言うと、これは人間が作る『薬』の範疇を超えてるね。私達で言う呪力、あの魔術師さんなら魔力を強引に底上げして、回復させるための調合薬品だ」
硝子は分析結果のモニターを指し示した。
硝子「成分の中に、極微量のラピスラズリの粉末が検出された。それもただの石じゃない。精神を安定させ、エネルギーを循環させるための特別な処置が施されてる。……チベットの伝統医学『ソワ・リグパ』における『宝薬(リンチェン・リルブ)』の系譜だね、これは」
夏油「ソワ・リグパ。……東洋医学の中でも、特に神秘性が強い分野だ。だが、今の日本でそれを扱える場所なんて、限られているんじゃないかい?」
硝子「一箇所だけある。表向きは輸入雑貨と漢方を扱う店だけど、実態は高価な鉱物薬を専門に調合している窓口だ。……そこ以外で、このレベルの宝薬を入手するのは不可能だよ」
五条「ビンゴだね。硝子、愛してるよ」
五条が指を鳴らして笑うが、硝子は呆れたように煙草を咥えた。
硝子「愛さなくていいから、さっさと捕まえてきな。その魔術師、相当無理してるよ。この空き瓶に残った残留成分の濃度からして、一本で済むところを二本、三本と連続で煽ってるんだろ?…身体への負担は相当なはずさ。」
甚爾「無理してんのか。…ハンッ。……道理で、攻撃もして来なければ、最後の方は足元がふらついてたわけだ。避けるのが精一杯だったって事か。」
甚爾は低く笑い、拳を握り込んだ。
夏油「では、その店を私の呪霊に張らせよう。監視カメラよりも確実で、気配も殺せる。……彼が次に『薬』を求めて現れた時が、終着点だ」
***
その頃、山奥の深い静寂に包まれた白い半円型の移動式住居「セトルドーム」。
転送装置のパネルが鈍く光り、光の粒子が実体化すると同時に、アオの身体は冷たい床へと崩れ落ちた。
アオ「……っ、あ……」
立ち上がるどころか、指一本動かす気力も残っていない。男性化の魔法が解け、シルバーのショートボブが床に散らばる。
ナマエは、以前にも増して魔力の枯渇が早まっていることを痛感していた。
ナマエ(……おかしい。地球の地脈の浄化なんて、15年もやってきたことなのに)
地脈の負のエネルギーの泥に触れるたび、自分の内側にあったはずの清らかな魔力が、黒い何かに浸食され、削り取られていくような感覚。最近は痛みさえ感じるようになってきていた。
あの「真っ黒いヤツ」を浄化するたびに、彼女の根源的な生命力が磨り減っている。
ナマエ「……はぁ、はぁ。……薬、三本も使って……これか」
付け焼き刃の回復では、あの怪物たちから逃げるだけで精一杯だった。逃げ切れたのは奇跡に近い。
白い服の少年(乙骨)の呪力を利用するという、即興の賭けに勝っただけだ。
ナマエ「……ギリギリなんて、私らしくないな。……あんな、子供に……あんな顔、させて……」
乙骨の驚いた、そして真っ赤になった顔が脳裏をよぎる。利用したことへの罪悪感と、それ以上に、自分を追い詰める五条たちの異常な執着への恐怖が、ナマエの胸を締め付けた。
動かない身体。重い手足。
ナマエは這うようにしてソファの脚に縋り付き、自分を責めるように吐息を漏らした。
ナマエ「……あの男たちは、絶対に諦めない。……もし、次にあんな人数の精鋭に囲まれたら……もう、隠し玉なんて……」
ドーム内の光パネルが、彼女の衰弱を検知して柔らかな暖色に変わる。しかし、どれほど高度な文明の光も、今の彼女の孤独と焦燥を癒やすことはできなかった。
ナマエ「……めんどくさい、なんて……言ってられない状況だよね。……本当に、どうすればいいんだろう」
彼女の呟きは、暗い部屋の中に虚しく消えていった。
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