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強さは決して心配しない理由にはなり得ないということ

レッドが姿を消してからというもの、カルミアの調子が悪い。
バトルだけではない。日常生活でもどこか憔悴した顔をしていて、目を離せば寝る間も惜しんでレッドの捜索に当たるであろうことは皆が想像できた。

(まぁ、仕方ないか……カルミアはパシオでレッドに出会ったんだから)

グリーンは小さくため息をつきながら、少し俯いたカルミアの横顔を見やる。
突然山篭りを始める男だ。今までのレッドを見ていたら、多少の不在程度では慌てる気にはならないだろう。
しかし、カルミアはそんなレッドの過去の行動を見てきた訳ではない。心配するのは当たり前だし、何より。

(ロケット団と戦った直後に行方不明ってのがな)

勿論、カルミアはレッドが負けたとは思っていないだろう。
レッドの強さは皆が知っている所だ。グリーンだってレッドの勝利は疑っていないし、何か別の理由があって今の不在なのだろう、と頭では分かっている。
けれど、頭では分かっていても、心配する気持ちがなくなる訳ではない。

(……早く帰ってこいよ、レッド)

不器用な幼馴染は、心の中で呟いた。




ロケット団のアジトを叩く作戦の最中だった。
不意にレッドが姿を現したのだ。
皆が無事を喜ぶ中、カルミアだけは、一度泣きそうなほど顔を歪めた後で、厳しい表情を浮かべたのだった。




「レッドさん、私、怒ってます」

そう切り出したカルミアの表情は、宣言通り厳しいものだった。
思わず帽子のツバを握るレッド。
ちらと横目でグリーンとリーフを見やるも、2人はすでに少し離れた場所へ避難していた。

「…………」
「どうして、ですか?そんなの、決まってるじゃないですか」

大股でレッドへと近付くカルミアの、今まで見たことのない覇気に、汗が一筋流れる。

「どうして」

キッとレッドの目を真っ直ぐに見上げる。

「どうして、たったひとりでロケット団を相手にしたんですか!?」

もう耐えられない、という様子でカルミアの語気が荒くなる。

「レッドさんがとってもとっても強いことは知ってます!前にロケット団を解散させたことも!でも!あなたは怪我をしました!それも数日間動けなくなるほどの怪我を!!それはグリーンさん達と一緒に立ち向かっていればすることのなかった怪我じゃないんですか!?」

レッドの手がおろおろと揺れる。
カルミアの両目から涙がボロボロとこぼれ落ちる。

「私がっ皆さんがっどれだけ心配したか……!何度も言います、レッドさんの強さは知ってます!!でも、怪我をしたら……意味ないじゃないですか……っ!もしも、その怪我が、し、しんじゃうくらいの怪我だったら……私……!!」

うぅ〜〜と声にならないうなり声を上げ、両手で顔を覆う。
肩を震わせ泣くカルミアの姿を見て、レッドは目を大きく見開いた。

昔、まだレッドが1桁の年齢だった頃。
母親に同じような理由で怒られたことがある。
真正面からぶつかってきた大きな大きな怒りという愛に、レッドは言葉を失った。

「…………」

しばし帽子を深く被り俯いていたレッドだったが、ゆっくりと手を伸ばした。
ひどく迷った後、そっと触れた薄い肩の震えをなだめようとゆっくり擦る。

「…………ごめん」
「だっだめ……です……!わた、し……っおこって……るんです……!!」

涙でしゃくりあげながら、尚怒っていると主張するその姿に途方にくれる。それと同時に、カルミアの感じた恐怖の大きさを思い知らされたようで。
レッドはなんだか鼻の奥がツンとした。

「………………ごめん」

それでも、謝るしかない。
そうすることしか今の彼女の愛に応える術をしらない。
数年にも感じた数分の間。少し涙が落ち着いたカルミアが、レッドの目を真っ直ぐ見上げた。

「や、やくそく……して、ください……っもう、こんな……むちゃ、しない……って!」
「…………うん」

震える小指が差し出され、己の小指を絡める。

「ゆ、ゆびきり……しました、からね……!うそついたら……ハリーセン、ですからね……!」
「…………うん」

レッドが小指を解こうとするも、カルミアは離さない。

「……………った」
「……?」
「よか、った……レッドさんが、ぶじで…………よかったぁ……!!」

再び大きな声を上げて泣きだしてしまったカルミアと、その様子を見つめておろおろと焦るレッド。
2人の様子を少し離れた場所から見つめながら、グリーンとリーフは目を合わせ、困ったように笑いながら肩をすくめた。
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