風邪
ある日カルミアは風邪を引いた。
ぼうとする頭で天井を見上げ、ベッドの中で横たわること早3日。ようやく熱も下がり、他バディーズ達との面会も許されたのだが。
そこに彼の姿はなかった。
「悪いな、カルミア。レッドの奴、今日はどうしても捕まらなくってよ」
「い、いえ!グリーンさんが謝る必要はないですよっ」
ベッド脇に寄せた椅子に腰掛け、グリーンは申し訳なさそうに頭を下げる。それを受け、慌てて顔を上げてくださいと声をかけた。
「ったく、どこ行ったんだアイツ」
「きっと何か用事があるんですよ。レッドさんもお忙しい方ですし、仕方ないです」
「忙しい〜?ただのバトルバカなだけだろ。あいつの用事は大体修行かバトルだぞ」
「ば、バカって……」
あははと苦笑いを浮かべる。確かにレッドはバトルにはいつだって全力だ。本当にポケモンバトルが好きなんだと思う。
カルミアは彼の好きなものを追い求める姿が好きだ。真っ直ぐ頂点を目指す瞳が。
だから彼のことを止めることはない。できない。
……それなのに。
(レッドさんに、会いたい)
咄嗟に浮かんだ言葉を振り払うように、カルミアは目を閉じた。
***
ぼんやりと意識が浮上する。
ゆっくり目を開くと、この3日ですっかり見慣れてしまった天井が映る。茜色の陽光が降り注いでいるところを見ると、あれからそれなりの時間が経ってしまったようだ。
「…………」
ふぅ、と息を吐き、サイドテーブルにある時計で時刻を確認しようと寝返りを打つ。と、その時。
「あれ」
時計以外に何かが置いてあることに気付き、確認しようと身体を起こす。
「……お花だ」
ブーケと呼ぶには小ぶりの、それでも目を引くには十分なほど綺麗に整えられた小さな花束がそこにあった。
白の花弁に淡いピンク色の星型の萼。その特徴を捉えた瞬間、カルミアは目を丸くする。
「これ……"カルミア"?」
母が好きな花。自分の名前の由来となった、大事な花。それがなぜか花束としてそこにある。
そして、その花束に添えられた二つ折りの紙が一枚。
「――っ」
『Red』
そう綴られた細い文字に心臓が大きく跳ねた。
一瞬にしてただの置き手紙から宝物へと変化したそれを、そっと手に取る。
思わずベッドの上で正座して、カルミアはゆっくりと手紙を開いた。
『カルミアへ
来るのが遅くなってごめん。君の花を探していたら、思ったより時間がかかって。
熱が下がって安心したよ。休んでいたから、僕はもう行くね。
また会いに来る。』
簡潔だけれど、温かい言葉たち。
それらを噛みしめるように何度も何度も読み返す。
「……レッドさん」
手紙を胸に抱き、愛しいその名を口にする。彼は今日、バトルでも修行でもなく、カルミアの花を探してくれていたのだ。
今すぐ彼の元へ駆け出して行きたい衝動を必死に宥めながら、カルミアはベッドへ潜り込んだ。身体をぐるぐる巡る熱い何かに動かされるまま、足をばたつかせる。
「ふふ……早く元気にならなくちゃ」
手紙を大事に胸に抱き、今日一番の笑顔を浮かべた。
ぼうとする頭で天井を見上げ、ベッドの中で横たわること早3日。ようやく熱も下がり、他バディーズ達との面会も許されたのだが。
そこに彼の姿はなかった。
「悪いな、カルミア。レッドの奴、今日はどうしても捕まらなくってよ」
「い、いえ!グリーンさんが謝る必要はないですよっ」
ベッド脇に寄せた椅子に腰掛け、グリーンは申し訳なさそうに頭を下げる。それを受け、慌てて顔を上げてくださいと声をかけた。
「ったく、どこ行ったんだアイツ」
「きっと何か用事があるんですよ。レッドさんもお忙しい方ですし、仕方ないです」
「忙しい〜?ただのバトルバカなだけだろ。あいつの用事は大体修行かバトルだぞ」
「ば、バカって……」
あははと苦笑いを浮かべる。確かにレッドはバトルにはいつだって全力だ。本当にポケモンバトルが好きなんだと思う。
カルミアは彼の好きなものを追い求める姿が好きだ。真っ直ぐ頂点を目指す瞳が。
だから彼のことを止めることはない。できない。
……それなのに。
(レッドさんに、会いたい)
咄嗟に浮かんだ言葉を振り払うように、カルミアは目を閉じた。
***
ぼんやりと意識が浮上する。
ゆっくり目を開くと、この3日ですっかり見慣れてしまった天井が映る。茜色の陽光が降り注いでいるところを見ると、あれからそれなりの時間が経ってしまったようだ。
「…………」
ふぅ、と息を吐き、サイドテーブルにある時計で時刻を確認しようと寝返りを打つ。と、その時。
「あれ」
時計以外に何かが置いてあることに気付き、確認しようと身体を起こす。
「……お花だ」
ブーケと呼ぶには小ぶりの、それでも目を引くには十分なほど綺麗に整えられた小さな花束がそこにあった。
白の花弁に淡いピンク色の星型の萼。その特徴を捉えた瞬間、カルミアは目を丸くする。
「これ……"カルミア"?」
母が好きな花。自分の名前の由来となった、大事な花。それがなぜか花束としてそこにある。
そして、その花束に添えられた二つ折りの紙が一枚。
「――っ」
『Red』
そう綴られた細い文字に心臓が大きく跳ねた。
一瞬にしてただの置き手紙から宝物へと変化したそれを、そっと手に取る。
思わずベッドの上で正座して、カルミアはゆっくりと手紙を開いた。
『カルミアへ
来るのが遅くなってごめん。君の花を探していたら、思ったより時間がかかって。
熱が下がって安心したよ。休んでいたから、僕はもう行くね。
また会いに来る。』
簡潔だけれど、温かい言葉たち。
それらを噛みしめるように何度も何度も読み返す。
「……レッドさん」
手紙を胸に抱き、愛しいその名を口にする。彼は今日、バトルでも修行でもなく、カルミアの花を探してくれていたのだ。
今すぐ彼の元へ駆け出して行きたい衝動を必死に宥めながら、カルミアはベッドへ潜り込んだ。身体をぐるぐる巡る熱い何かに動かされるまま、足をばたつかせる。
「ふふ……早く元気にならなくちゃ」
手紙を大事に胸に抱き、今日一番の笑顔を浮かべた。
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