出会い
大切なパートナーが大きくよろめき、私は悲鳴にも似た声を上げた。
「クコちゃん!!」
思わず駆け寄ろうとしたが、それを阻み、男が立ちはだかった。
「お前の負けだ!大人しくこのフシギダネを渡すんだな!!」
「そんな……っ」
そんな無茶苦茶な。
けれど目の前の男はそんな暴挙を力づくで通そうとしていた。
――ここ人工島パシオでは、現在ワールドポケモンマスターズ、通称WPMが開催されている。トレーナーとポケモンが一対一でコンビを組み、バディーズとして他のトレーナーと競い、手を取り、栄光の座を目指す。
そんなトレーナー達の祭典に参加することになった私は、パートナーのフシギダネと共にチームメイトを探していた。……そんな私に声をかけたのが、この男だ。
怪しい仮面を付けた「ブレイク団」と名乗るこの男は、私を見るなり信じられない言葉を放ったのだ。
『そのフシギダネを渡せ』と。
勿論反抗した、のだが……問答無用の勝負の末に、こうして私はパートナーを力づくで奪われかけている。
「ふざけないで……!他人のポケモンを盗るなんて犯罪よ!!第一この子は物じゃない!!渡すとか渡さないとかそういう問題じゃっ」
「うるせぇ!!お前はもう勝負に負けてるんだよ、わーわー喚くな!!」
「な……っ」
話にならない。無茶苦茶だ。
頭に血が上って目の前が真っ赤だ。心臓が耳に移動したのではないかと思ってしまう程の煩さで気が狂いそう。
けれど身体の芯はどこまでも冷たく、握り締めた拳の痛みがこれは現実だと訴えかけてくる。
――このままじゃ、本当に
男が傷ついた私のパートナーに近づいていく。咄嗟に私は男へと飛びかかった。
「やめて!!」
「チッ!邪魔だ!!」
「っ!!」
力任せに振り払われ、大きくバランスを崩す。
大きく視界が傾ぐ様がまるでスローモーションのように流れていく。
――くやしい、くやしい。
急激に視界が歪み、鼻がツンとする。
このままなす術なく地面に叩きつけられるのだ――痛みを予感してキツく目を閉じた。
……けれど。予想に反して、私は温かな何かに抱きとめられたのだった。
「……?」
恐る恐る目を開ける。
私を抱きとめてくれたのは、赤いキャップを被った1人の少年だった。
静かな空気を纏っているのに、その瞳は強い意志を宿しているのが分かる。
(だれ……?)
彼は私を一瞥し、男と私のパートナーを見やる。
それだけで、全てを悟った様だった。
「なんだ?お前」
「…………」
少年は答えない。その代わり、帽子のツバを握った。
そこから先は、あっという間の出来事だった。
彼はリザードンを繰り出すと、一瞬で男を蹴散らしたのだ。
捨て台詞を吐き、逃げていく男には目もくれず、私のフシギダネを優しく抱き上げた。
そのまま優しく私の膝におろし、傷薬を使う。
その様を呆然と見やる私の頬を気遣わしげにフシギダネの蔓が撫で、そこでようやく私は危機が去ったと理解できた。
「………ぁ」
一度引っ込んでいた涙がボロボロと溢れ出す。
安堵感と恐怖、無力感がごちゃごちゃに混じり合い、私はみっともなく声を上げて泣いた。
よかった、くやしい、なにもできなかった。
ただただフシギダネを抱きしめることしか出来ず、私は声が枯れるまで泣き続けた。
そんな私に静かに付き添ってくれた彼――レッドは。無言のまま私の背を撫でる。
恐怖と、屈辱と、圧倒的な安心感を抱き。
こうして私はひとりの伝説的トレーナーとの邂逅を果たしたのだった。
「クコちゃん!!」
思わず駆け寄ろうとしたが、それを阻み、男が立ちはだかった。
「お前の負けだ!大人しくこのフシギダネを渡すんだな!!」
「そんな……っ」
そんな無茶苦茶な。
けれど目の前の男はそんな暴挙を力づくで通そうとしていた。
――ここ人工島パシオでは、現在ワールドポケモンマスターズ、通称WPMが開催されている。トレーナーとポケモンが一対一でコンビを組み、バディーズとして他のトレーナーと競い、手を取り、栄光の座を目指す。
そんなトレーナー達の祭典に参加することになった私は、パートナーのフシギダネと共にチームメイトを探していた。……そんな私に声をかけたのが、この男だ。
怪しい仮面を付けた「ブレイク団」と名乗るこの男は、私を見るなり信じられない言葉を放ったのだ。
『そのフシギダネを渡せ』と。
勿論反抗した、のだが……問答無用の勝負の末に、こうして私はパートナーを力づくで奪われかけている。
「ふざけないで……!他人のポケモンを盗るなんて犯罪よ!!第一この子は物じゃない!!渡すとか渡さないとかそういう問題じゃっ」
「うるせぇ!!お前はもう勝負に負けてるんだよ、わーわー喚くな!!」
「な……っ」
話にならない。無茶苦茶だ。
頭に血が上って目の前が真っ赤だ。心臓が耳に移動したのではないかと思ってしまう程の煩さで気が狂いそう。
けれど身体の芯はどこまでも冷たく、握り締めた拳の痛みがこれは現実だと訴えかけてくる。
――このままじゃ、本当に
男が傷ついた私のパートナーに近づいていく。咄嗟に私は男へと飛びかかった。
「やめて!!」
「チッ!邪魔だ!!」
「っ!!」
力任せに振り払われ、大きくバランスを崩す。
大きく視界が傾ぐ様がまるでスローモーションのように流れていく。
――くやしい、くやしい。
急激に視界が歪み、鼻がツンとする。
このままなす術なく地面に叩きつけられるのだ――痛みを予感してキツく目を閉じた。
……けれど。予想に反して、私は温かな何かに抱きとめられたのだった。
「……?」
恐る恐る目を開ける。
私を抱きとめてくれたのは、赤いキャップを被った1人の少年だった。
静かな空気を纏っているのに、その瞳は強い意志を宿しているのが分かる。
(だれ……?)
彼は私を一瞥し、男と私のパートナーを見やる。
それだけで、全てを悟った様だった。
「なんだ?お前」
「…………」
少年は答えない。その代わり、帽子のツバを握った。
そこから先は、あっという間の出来事だった。
彼はリザードンを繰り出すと、一瞬で男を蹴散らしたのだ。
捨て台詞を吐き、逃げていく男には目もくれず、私のフシギダネを優しく抱き上げた。
そのまま優しく私の膝におろし、傷薬を使う。
その様を呆然と見やる私の頬を気遣わしげにフシギダネの蔓が撫で、そこでようやく私は危機が去ったと理解できた。
「………ぁ」
一度引っ込んでいた涙がボロボロと溢れ出す。
安堵感と恐怖、無力感がごちゃごちゃに混じり合い、私はみっともなく声を上げて泣いた。
よかった、くやしい、なにもできなかった。
ただただフシギダネを抱きしめることしか出来ず、私は声が枯れるまで泣き続けた。
そんな私に静かに付き添ってくれた彼――レッドは。無言のまま私の背を撫でる。
恐怖と、屈辱と、圧倒的な安心感を抱き。
こうして私はひとりの伝説的トレーナーとの邂逅を果たしたのだった。
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