首輪より指輪が欲しいです!
「先生、おはようございます!好きです!」
「ああ、おはよう仔犬」
今日も繰り返されるやりとり。
「うわ、監督生またやってるよ……」
「アイツもよくめげないよなー」
さらりとかわされた告白に動揺することもなく、監督生は愛を告げ続ける。
最初は好奇の目で見ていた人達ももはやいつものこととして受け止めていた。
「好きです!」
「先生、大好きです!」
繰り返される愛の言葉に、告げられた相手――この学園の教師であるデイヴィス・クルーウェルは素っ気なく返す。
「先生!今日も大好きです!」
「ああ」
廊下で、すれ違いざまに監督生が言うと、クルーウェルは監督生を一瞥して短く言葉を返した。
見かねたエースが声をかける。
「お前さ、嫌にならないワケ?」
「何が?」
「あんな素っ気なくされて、告白適当に返されてさ」
「ぜーんぜん。むしろ毎日言わせてもらえて嬉しいよ」
監督生は本当に微塵も辛いなんて思っていない顔で笑う。
エースはその表情にそうかと呟いて諦めたように笑った。
それから毎日毎日監督生が告白を続けていたある日のこと。
監督生は突然学園長に呼び出された。
学園長に突然呼び出されるのはいつものことで、今度はどんな厄介事だろうと考えながらドアをノックする。
迎えた学園長はハイテンションだった。
「監督生さん、ついに見つかりましたよ!」
「もしかして……」
「ええ、元の世界に帰ることが出来ます!」
監督生が帰るという話は瞬く間に学園中に広まり、その日のお昼休み、監督生はたくさんの人に囲まれていた。
「ねー小エビちゃん、元の世界に帰るってマジ?」
「あ、はい。本当です」
そんな話をしていると突然監督生を囲んでいた輪が開ける。
何が起こったのかと後ろを振り向くと、そこにはクルーウェルがいて監督生は腕を掴まれた。
「え、せんせ……」
クルーウェルは何も答えず、ただ監督生を引っ張って歩く。
掴まれた部分が熱くて、監督生は頬を染めた。
やがてクルーウェルの研究室に着くと、内側から鍵をかけて監督生をソファに座らせた。
「そこで待っていろ」
クルーウェルは監督生の方を全く見ずに一度奥の部屋に行く。
そして戻ってきた彼の手には首輪が握られていた。
首輪の先にはじゃらじゃらと重そうな鎖が繋がっている。
それは何ですか、と口を開きかけた監督生はクルーウェルの冷たい瞳を見た。
監督生の知る限りデイヴィス・クルーウェルは生徒にこんな視線を向ける人ではなく、監督生は初めて恐怖を覚える。
「せん、せ?」
「仔犬、」
クルーウェルはゆっくりと監督生に近づき、その首に触れた。
そしてそのまま首輪を取り付けた。
首輪は監督生の首より少し大きくて、苦しさは感じない。
「俺から逃げられると思ったのか?」
首輪をうっとりと見つめ、それからそっと頬に触れて監督生の顔を上げさせる。
「散々好きだと言っておいて、元の世界に帰るつもりだったのか?」
クルーウェルと目が合った監督生は、その瞳に独占欲と怒り、それからほんの少しの悲しみを見た気がした。
監督生は思わず口を開く。
「え、え、待って、先生って私のこと好きだったんですか!?」
「……いつ俺がお前の告白を断った」
監督生はこれまでのことを思い返す。
「ああ」とか「そうか」とか素っ気なく返事をされていたが、確かに否定の意味を持つ返事を返されたことはなかった。
これまで戸惑っていた監督生の表情がぱっと明るくなる。
「やったー!!」
思い切りガッツポーズする監督生にクルーウェルはやれやれといった表情でため息をついた。
「……まあいい。とにかく元の世界へは返さないからな」
すると監督生はキョトンとした顔でクルーウェルを見る。
「え、先生、私の両親に挨拶してくれないんですか?」
「まあ、ゆくゆくはそういうことも……って、どうやって仔犬の世界に行くんだ」
「学園長が元の世界に戻れる鏡をこの世界と自由に行き来できるように改造してくれたらしいのでいつでもいけますよ!」
「は?」
クルーウェルは思わず目を丸くする。
その様子を見て、監督生は首輪につながれた鎖に触れた。
「あれ、先生もしかして私が戻ってこないと思って……?」
クルーウェルはしゃがみ込んで大きなため息をついた。
「俺としたことが……」
そんなクルーウェルを見て監督生は微笑む。
「ねえ、先生?」
「……なんだ」
「先生と一緒にいられるなら首輪でもいいけど、でも、どちらかといえば――」
その言葉を聞いたクルーウェルは、全く仕方ない仔犬だ、と呟いて監督生の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ああ、おはよう仔犬」
今日も繰り返されるやりとり。
「うわ、監督生またやってるよ……」
「アイツもよくめげないよなー」
さらりとかわされた告白に動揺することもなく、監督生は愛を告げ続ける。
最初は好奇の目で見ていた人達ももはやいつものこととして受け止めていた。
「好きです!」
「先生、大好きです!」
繰り返される愛の言葉に、告げられた相手――この学園の教師であるデイヴィス・クルーウェルは素っ気なく返す。
「先生!今日も大好きです!」
「ああ」
廊下で、すれ違いざまに監督生が言うと、クルーウェルは監督生を一瞥して短く言葉を返した。
見かねたエースが声をかける。
「お前さ、嫌にならないワケ?」
「何が?」
「あんな素っ気なくされて、告白適当に返されてさ」
「ぜーんぜん。むしろ毎日言わせてもらえて嬉しいよ」
監督生は本当に微塵も辛いなんて思っていない顔で笑う。
エースはその表情にそうかと呟いて諦めたように笑った。
それから毎日毎日監督生が告白を続けていたある日のこと。
監督生は突然学園長に呼び出された。
学園長に突然呼び出されるのはいつものことで、今度はどんな厄介事だろうと考えながらドアをノックする。
迎えた学園長はハイテンションだった。
「監督生さん、ついに見つかりましたよ!」
「もしかして……」
「ええ、元の世界に帰ることが出来ます!」
監督生が帰るという話は瞬く間に学園中に広まり、その日のお昼休み、監督生はたくさんの人に囲まれていた。
「ねー小エビちゃん、元の世界に帰るってマジ?」
「あ、はい。本当です」
そんな話をしていると突然監督生を囲んでいた輪が開ける。
何が起こったのかと後ろを振り向くと、そこにはクルーウェルがいて監督生は腕を掴まれた。
「え、せんせ……」
クルーウェルは何も答えず、ただ監督生を引っ張って歩く。
掴まれた部分が熱くて、監督生は頬を染めた。
やがてクルーウェルの研究室に着くと、内側から鍵をかけて監督生をソファに座らせた。
「そこで待っていろ」
クルーウェルは監督生の方を全く見ずに一度奥の部屋に行く。
そして戻ってきた彼の手には首輪が握られていた。
首輪の先にはじゃらじゃらと重そうな鎖が繋がっている。
それは何ですか、と口を開きかけた監督生はクルーウェルの冷たい瞳を見た。
監督生の知る限りデイヴィス・クルーウェルは生徒にこんな視線を向ける人ではなく、監督生は初めて恐怖を覚える。
「せん、せ?」
「仔犬、」
クルーウェルはゆっくりと監督生に近づき、その首に触れた。
そしてそのまま首輪を取り付けた。
首輪は監督生の首より少し大きくて、苦しさは感じない。
「俺から逃げられると思ったのか?」
首輪をうっとりと見つめ、それからそっと頬に触れて監督生の顔を上げさせる。
「散々好きだと言っておいて、元の世界に帰るつもりだったのか?」
クルーウェルと目が合った監督生は、その瞳に独占欲と怒り、それからほんの少しの悲しみを見た気がした。
監督生は思わず口を開く。
「え、え、待って、先生って私のこと好きだったんですか!?」
「……いつ俺がお前の告白を断った」
監督生はこれまでのことを思い返す。
「ああ」とか「そうか」とか素っ気なく返事をされていたが、確かに否定の意味を持つ返事を返されたことはなかった。
これまで戸惑っていた監督生の表情がぱっと明るくなる。
「やったー!!」
思い切りガッツポーズする監督生にクルーウェルはやれやれといった表情でため息をついた。
「……まあいい。とにかく元の世界へは返さないからな」
すると監督生はキョトンとした顔でクルーウェルを見る。
「え、先生、私の両親に挨拶してくれないんですか?」
「まあ、ゆくゆくはそういうことも……って、どうやって仔犬の世界に行くんだ」
「学園長が元の世界に戻れる鏡をこの世界と自由に行き来できるように改造してくれたらしいのでいつでもいけますよ!」
「は?」
クルーウェルは思わず目を丸くする。
その様子を見て、監督生は首輪につながれた鎖に触れた。
「あれ、先生もしかして私が戻ってこないと思って……?」
クルーウェルはしゃがみ込んで大きなため息をついた。
「俺としたことが……」
そんなクルーウェルを見て監督生は微笑む。
「ねえ、先生?」
「……なんだ」
「先生と一緒にいられるなら首輪でもいいけど、でも、どちらかといえば――」
その言葉を聞いたクルーウェルは、全く仕方ない仔犬だ、と呟いて監督生の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
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