僕たちが結婚した日
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休日の昼下がり。
ユウとエースは喫茶店のテラス席でとりとめのない話をしていた。
「そんで、アズール先輩とはどうなの?同棲始めてもう5年くらいだろ?そろそろ結婚とかさあ」
「そう、聞いてよエース…!アズールったら全然プロポーズしてくれないの!!」
ユウとアズールは、かれこれ5年ほど同棲をしている。
学生時代、なんやかんや周りの助けもあって付き合いだした二人は、卒業後すぐに同棲を始めた。
その頃は惚気を聞いては結婚式は呼べよーなんてからかっていたものだったが、最近は愚痴を聞くことの方が多くなっている。
「この間両親に会ってもらったって言ってたじゃん。その後何にもないの?」
「そう、そうなの!うちの両親にも会ってもらったし、アズールのご実家にも挨拶してきたし、これはもうそろそろだと思ってたのに…!」
「ちなみにアズール先輩の実家ってどんな感じだった?」
「やばい。もう聞いてた以上に高級リストランテだったし、ご両親もなんかザ・紳士淑女!みたいな感じだった」
「お前んちは?」
「アズールの実家に先に行ってたら連れていけなかった。お母さんなんかこっそり『イケメンじゃない!絶対に逃がすんじゃないわよ』とか言ってきたし」
「ははっ。なんつーか、らしいな」
エースは思わず笑う。
「…やっぱり、私じゃ奥さんにするには頼りないって思ってるのかな」
「いや、そんなことはないだろ」
アズールは卒業後起業して、今やかなり有名な青年実業家としてたまに雑誌の取材を受けていたりする。
仕事の方もかなり忙しいらしく、それを少しでも支えるために監督生は秘書の資格などなどを取ったのだと話していた。
「んー、なんかさ、プロポーズしやすい雰囲気作ってみるとかどう?」
「この間やってみた…」
「お、どうなったの?」
「向かい合ってきちんと話し合おうと思って、とりあえず正座して向かい合ったんだけど」
「…おう」
「全然関係ない話で盛り上がっちゃって、気がついたときには足がしびれて動けなくて。二人で悶絶してたからプロポーズどころじゃなかった」
「突っ込みどころが多いな…」
ユウはわりとこういう不思議なところがある。
長年の付き合いですっかり慣れたエースはもう一つ一つ突っ込むことはしなくなっていた。
「二人でそうやって笑うのも楽しかったんだけどね…」
確かに、付き合いだしてかなり長い二人がそんなことで笑い合えるのはかなり仲が良い証拠だ。
これまでの様子も散々聞いてきたエースは、アズールがユウと結婚したくないと思っているとはとても思えなかった。
大方プロポーズの方法を凝りすぎて悩んでいるとか、そんなところだろうと頭の中で結論付ける。
「ま、そんなに落ち込むなよ。もし本当にお前が頼りないって思ってるなら、あの人の性格的にもうとっくに別れ話されてるだろ」
それがないってことはそんなこと思ってないってことだよ、としょぼくれたユウの頭をポンポンと撫でる。
「うん、ありがとう」
ユウは眉を下げて困ったように笑った。
ふと時間を見ると、そろそろ戻らないといけない時間だったので、会計を済ませて店を出る。
「お前どっち方面だっけ?近ければ送ってくけど」
「あ、大丈夫!アズールから迎えに行くって連絡来たから」
「そうか。じゃ、またなー!」
「うん、またね!」
手を振って歩きだす。
わざわざ迎えに来るほど愛されているのに一体何を不安がることがあるのだろう、とエースは思った。
それから程なくして、アズールが迎えに来る。
「お待たせしました」
「いえ、ありがとうございます」
ユウは慣れた手つきでアズールの車の助手席に乗り込む。
この車の助手席が、ユウの特等席になってから何年が経っただろう。
隣にいるのが当たり前になるくらいの時間を二人で過ごしてきた。
「エースくんとは、何を?」
「んー、いつも通り近況とかですね」
「…そうですか」
アズールの顔はどこか浮かない表情だったけれど、二人の関係について悩んでいたユウは気がつかなかった。
それきり二人は口を開かず、車内にはオーディオが奏でる音楽だけが流れる。
家についてすぐ、アズールは少し用事があると出掛けていった。
ユウは洗濯物を畳みながら考える。
アズールはとても多忙な人だ。
そんな人がせっかくの休日にわざわざ車を出して迎えに来てくれるのだから嫌われているわけがない。
そんなことはユウにも分かっていた。
それでも不安なのは、自分がアズールに見合うだけの人間なのか自信がないからに他ならない。
結局は自分が安心したいだけなんだよね、とユウはため息をついた。
アズールは車を飛ばしていた。
頭に浮かんでいるのは先ほど偶然見てしまった光景。
エースがユウの頭を撫でている光景だった。
彼らは昔から、それこそ学生の頃から距離が近めなところがあったし、それは今更気にすることではない。
もちろん少なからず嫉妬はしているけれど。
そんなことよりアズールを焦らせているのは、ユウの不安そうな顔だった。
最近彼女がどこか浮かない表情をしていることには気がついていた。
しかし無理に聞き出そうとしても話してくれないことはこれまでの付き合いで分かっていたので、彼女から話してくれるのを待っていたのだが。
あの光景を見た瞬間、彼には相談するのに、僕には相談してくれないのかと嫉妬が胸に渦巻いた。
彼女が一番に頼るのは自分であって欲しいと、アズールは強く思う。
その権利がこの方法で手に入るのか、確証はなかった。
それでもアズールを突き動かしたのは純然たる独占欲で、その車を通い慣れたジュエリーショップの駐車場に止めた。
「今日の夕飯は、レストランに行きませんか」
アズールの突然の提案に、ユウはぱちくりと瞬く。
今日の夕飯はアズールの担当だったので外食したいならそれでも特に問題はない。
ユウははいと返事をして、出掛ける準備を始めた。
ついた場所は夜景が綺麗だと有名なレストランで、しかも綺麗に見える窓際の席が予約されていた。
「わあ…!」
あまりに美しい眺めにユウの口からは思わず声が漏れる。
キラキラと瞳を輝かせるユウをアズールは愛おしそうに見つめた。
少し経って料理が運ばれてくる。
アズールは表に出すことこそないものの緊張で料理の味が分かっていなかった。
ユウも、こんな雰囲気の良いレストランに連れてこられた期待感に胸を高鳴らせる。
「あ、あの、ユウ…」
「お料理をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます」
「ユウ、お話が…」
「お誕生日、おめでとうございます!」
「わあ、今日お誕生日の方がいたんですね!」
「そう、ですね…」
そんなこんなでアズールは言い出す機会をなくし、そのまま食事は終わって帰路につく。
ポケットにしまったそれを確かめて、仕方ないから今日は諦めて仕切り直すかと内心ため息をついた。
家に帰ってきて、もう眠る準備も済んだ頃。
お互いにリラックスした服装でのんびり過ごす。
「そろそろ寝ますか?」
ユウはぐいーっと伸びをする。
こうして二人で寝るのが当たり前になったのはいつからだっただろうか。
最初はお互いに緊張して、こんな風にゆったりした時間を過せるようになるなんて想像もしていなかった。
「そうですね」
アズールが昔を思い出して目を細めながら返事をすると、ユウは電気を消そうとリモコンに手を伸ばす。
その様子を見たアズールは、なぜか急にユウのことをたまらなく愛おしく思った。
そして、今日は言わないつもりだったその言葉を今言いたい、そんな気持ちが胸を突き上げる。
「ユウ」
「はい?」
アズールはユウに近づく。
そしてその頬にキスをして、耳まで真っ赤にしながら告げた。
「これからも一生、僕の傍にいてください」
ユウは一瞬ぽかんとした。
その瞳にじわじわと涙がたまっていく。
「やっと言ってくれた」
そして、今までで一番美しい笑顔をアズールに向けた。
白いベールを被った美しい花嫁が、沢山の花で飾り付けられたチャペルを父親に手を引かれながら歩いてくる。
アズールはその様子を見つめて、心の底から、今世界で一番幸せなのは自分だと思った。
花嫁はゆっくりとアズールの目の前に立つ。
目が合った彼女は、アズールの顔を見て笑った。
「泣き虫、戻っちゃったんですか?」
「誰のせいだと思ってるんです」
責任取ってくださいよ、と笑うと、彼女はまっすぐアズールを見つめ、そして微笑んだ。
「ええ、私の一生をかけて!」
ユウとエースは喫茶店のテラス席でとりとめのない話をしていた。
「そんで、アズール先輩とはどうなの?同棲始めてもう5年くらいだろ?そろそろ結婚とかさあ」
「そう、聞いてよエース…!アズールったら全然プロポーズしてくれないの!!」
ユウとアズールは、かれこれ5年ほど同棲をしている。
学生時代、なんやかんや周りの助けもあって付き合いだした二人は、卒業後すぐに同棲を始めた。
その頃は惚気を聞いては結婚式は呼べよーなんてからかっていたものだったが、最近は愚痴を聞くことの方が多くなっている。
「この間両親に会ってもらったって言ってたじゃん。その後何にもないの?」
「そう、そうなの!うちの両親にも会ってもらったし、アズールのご実家にも挨拶してきたし、これはもうそろそろだと思ってたのに…!」
「ちなみにアズール先輩の実家ってどんな感じだった?」
「やばい。もう聞いてた以上に高級リストランテだったし、ご両親もなんかザ・紳士淑女!みたいな感じだった」
「お前んちは?」
「アズールの実家に先に行ってたら連れていけなかった。お母さんなんかこっそり『イケメンじゃない!絶対に逃がすんじゃないわよ』とか言ってきたし」
「ははっ。なんつーか、らしいな」
エースは思わず笑う。
「…やっぱり、私じゃ奥さんにするには頼りないって思ってるのかな」
「いや、そんなことはないだろ」
アズールは卒業後起業して、今やかなり有名な青年実業家としてたまに雑誌の取材を受けていたりする。
仕事の方もかなり忙しいらしく、それを少しでも支えるために監督生は秘書の資格などなどを取ったのだと話していた。
「んー、なんかさ、プロポーズしやすい雰囲気作ってみるとかどう?」
「この間やってみた…」
「お、どうなったの?」
「向かい合ってきちんと話し合おうと思って、とりあえず正座して向かい合ったんだけど」
「…おう」
「全然関係ない話で盛り上がっちゃって、気がついたときには足がしびれて動けなくて。二人で悶絶してたからプロポーズどころじゃなかった」
「突っ込みどころが多いな…」
ユウはわりとこういう不思議なところがある。
長年の付き合いですっかり慣れたエースはもう一つ一つ突っ込むことはしなくなっていた。
「二人でそうやって笑うのも楽しかったんだけどね…」
確かに、付き合いだしてかなり長い二人がそんなことで笑い合えるのはかなり仲が良い証拠だ。
これまでの様子も散々聞いてきたエースは、アズールがユウと結婚したくないと思っているとはとても思えなかった。
大方プロポーズの方法を凝りすぎて悩んでいるとか、そんなところだろうと頭の中で結論付ける。
「ま、そんなに落ち込むなよ。もし本当にお前が頼りないって思ってるなら、あの人の性格的にもうとっくに別れ話されてるだろ」
それがないってことはそんなこと思ってないってことだよ、としょぼくれたユウの頭をポンポンと撫でる。
「うん、ありがとう」
ユウは眉を下げて困ったように笑った。
ふと時間を見ると、そろそろ戻らないといけない時間だったので、会計を済ませて店を出る。
「お前どっち方面だっけ?近ければ送ってくけど」
「あ、大丈夫!アズールから迎えに行くって連絡来たから」
「そうか。じゃ、またなー!」
「うん、またね!」
手を振って歩きだす。
わざわざ迎えに来るほど愛されているのに一体何を不安がることがあるのだろう、とエースは思った。
それから程なくして、アズールが迎えに来る。
「お待たせしました」
「いえ、ありがとうございます」
ユウは慣れた手つきでアズールの車の助手席に乗り込む。
この車の助手席が、ユウの特等席になってから何年が経っただろう。
隣にいるのが当たり前になるくらいの時間を二人で過ごしてきた。
「エースくんとは、何を?」
「んー、いつも通り近況とかですね」
「…そうですか」
アズールの顔はどこか浮かない表情だったけれど、二人の関係について悩んでいたユウは気がつかなかった。
それきり二人は口を開かず、車内にはオーディオが奏でる音楽だけが流れる。
家についてすぐ、アズールは少し用事があると出掛けていった。
ユウは洗濯物を畳みながら考える。
アズールはとても多忙な人だ。
そんな人がせっかくの休日にわざわざ車を出して迎えに来てくれるのだから嫌われているわけがない。
そんなことはユウにも分かっていた。
それでも不安なのは、自分がアズールに見合うだけの人間なのか自信がないからに他ならない。
結局は自分が安心したいだけなんだよね、とユウはため息をついた。
アズールは車を飛ばしていた。
頭に浮かんでいるのは先ほど偶然見てしまった光景。
エースがユウの頭を撫でている光景だった。
彼らは昔から、それこそ学生の頃から距離が近めなところがあったし、それは今更気にすることではない。
もちろん少なからず嫉妬はしているけれど。
そんなことよりアズールを焦らせているのは、ユウの不安そうな顔だった。
最近彼女がどこか浮かない表情をしていることには気がついていた。
しかし無理に聞き出そうとしても話してくれないことはこれまでの付き合いで分かっていたので、彼女から話してくれるのを待っていたのだが。
あの光景を見た瞬間、彼には相談するのに、僕には相談してくれないのかと嫉妬が胸に渦巻いた。
彼女が一番に頼るのは自分であって欲しいと、アズールは強く思う。
その権利がこの方法で手に入るのか、確証はなかった。
それでもアズールを突き動かしたのは純然たる独占欲で、その車を通い慣れたジュエリーショップの駐車場に止めた。
「今日の夕飯は、レストランに行きませんか」
アズールの突然の提案に、ユウはぱちくりと瞬く。
今日の夕飯はアズールの担当だったので外食したいならそれでも特に問題はない。
ユウははいと返事をして、出掛ける準備を始めた。
ついた場所は夜景が綺麗だと有名なレストランで、しかも綺麗に見える窓際の席が予約されていた。
「わあ…!」
あまりに美しい眺めにユウの口からは思わず声が漏れる。
キラキラと瞳を輝かせるユウをアズールは愛おしそうに見つめた。
少し経って料理が運ばれてくる。
アズールは表に出すことこそないものの緊張で料理の味が分かっていなかった。
ユウも、こんな雰囲気の良いレストランに連れてこられた期待感に胸を高鳴らせる。
「あ、あの、ユウ…」
「お料理をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます」
「ユウ、お話が…」
「お誕生日、おめでとうございます!」
「わあ、今日お誕生日の方がいたんですね!」
「そう、ですね…」
そんなこんなでアズールは言い出す機会をなくし、そのまま食事は終わって帰路につく。
ポケットにしまったそれを確かめて、仕方ないから今日は諦めて仕切り直すかと内心ため息をついた。
家に帰ってきて、もう眠る準備も済んだ頃。
お互いにリラックスした服装でのんびり過ごす。
「そろそろ寝ますか?」
ユウはぐいーっと伸びをする。
こうして二人で寝るのが当たり前になったのはいつからだっただろうか。
最初はお互いに緊張して、こんな風にゆったりした時間を過せるようになるなんて想像もしていなかった。
「そうですね」
アズールが昔を思い出して目を細めながら返事をすると、ユウは電気を消そうとリモコンに手を伸ばす。
その様子を見たアズールは、なぜか急にユウのことをたまらなく愛おしく思った。
そして、今日は言わないつもりだったその言葉を今言いたい、そんな気持ちが胸を突き上げる。
「ユウ」
「はい?」
アズールはユウに近づく。
そしてその頬にキスをして、耳まで真っ赤にしながら告げた。
「これからも一生、僕の傍にいてください」
ユウは一瞬ぽかんとした。
その瞳にじわじわと涙がたまっていく。
「やっと言ってくれた」
そして、今までで一番美しい笑顔をアズールに向けた。
白いベールを被った美しい花嫁が、沢山の花で飾り付けられたチャペルを父親に手を引かれながら歩いてくる。
アズールはその様子を見つめて、心の底から、今世界で一番幸せなのは自分だと思った。
花嫁はゆっくりとアズールの目の前に立つ。
目が合った彼女は、アズールの顔を見て笑った。
「泣き虫、戻っちゃったんですか?」
「誰のせいだと思ってるんです」
責任取ってくださいよ、と笑うと、彼女はまっすぐアズールを見つめ、そして微笑んだ。
「ええ、私の一生をかけて!」
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