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知ってるよ、好きだから

「エース、デュース!」

「お、監督生。どうしたんだ、そんなに急いで」

「へへ、二人の姿が見えたから走ってきちゃった」

「なにー?俺たちのこと大好きじゃん」

4人で廊下を歩く。

「うーん、朝から魔法史は眠いんだゾ…」

「グリム、この間も爆睡してトレイン先生に怒られてたろ」

「そういうデュースもかなり危なかったけどね」

他愛もない話をして、みんなで笑って。
一人を見つめてしまう自分のことも、他のやつと頬を染めて話すそいつのことも気づかないふりをして笑う、そんな毎日。

そんな日常が続いて欲しいという俺の願いは、無情にもあっさり破られてしまった。




「あのね、エース。ちょっと相談があるんだけど…」

そう言ってはにかむ監督生の頬は柔らかく桃色に染まっていて。
それだけで何の話か察してしまった自分が嫌になる。

「なになに?お前から相談なんて珍しいじゃん」

やめろ、言うな。何も言わないでくれ。
そう叫ぶ心とは裏腹に、嘘をつくことに慣れきってしまった口は平然と続きを促した。

「へへ…、あのね私、好きな人がいるの」

「…知ってるよ。デュースだろ?」

「え、なんで分かるの!?」

「バーカ、見てれば分かるよ」

監督生の頭をぐしゃりと撫でる。

「え、え、私そんなに分かりやすかった!?どうしよ、デュースにもバレてるかな…?」

「…あいつは多分気づいてねーよ。鈍感だし」

「そ、っか。うん、そうだよね!」

「ああ」

「それでね、相談なんだけど、エースに協力して欲しくて」

監督生の相談は、デュースに告白したいから二人っきりの時間を作って欲しいということだった。
俺が分かったというと監督生は嬉しそうに笑って、今日はこれからバイトだから、詳しい話はまた今度ねと言って去っていった。

俺はそれを見送って、空を見上げる。

(…知ってるよ、好きだから)

ずっと、お前のことばかり見ていたから。
あいつを目で追うお前のことも、あいつと話しているときのお前の笑顔も。
お前のことなら何だって知ってるのに、それなのに、なんで俺じゃないんだろうな。

視界が滲んで、目元を腕に当てる。

「くっそ…」

俺の頬を一筋、涙が伝った。
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