後編
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「もうユウリ、何度言ったら分かってくれるの?この世界に存在する事こそが君の幸せで、君の理想なんだよ。僕のお気に入りのユウリなら、分かってくれるでしょ?」
そろそろこのやり取りにも飽きてきた。Xは私が自殺しても甘ったるくたしなめてくるばかりで、怒ったりも殴ったりもしない。私を止める文句なんて考えている暇があるなら、さっさと私に飽きて消してほしい。そしてまた次の新しいおもちゃを手に入れて、私の事などまるで最初からいなかったように忘れてしまえばいい。
「君、あの愚かな人間の子供として生まれたんでしょ?尚更いいじゃん?今君のそばにいるのは、愚かな人間じゃなくて僕。最高だと思わないの?」
うるさい。
「それに酷で散々な日々ともお別れだ。ここでは辛いことも苦しいこともない。この世界で過ごすデメリットとかある?」
うるさい。うるさい。
「だからユウリ、もう自殺なんて」
「うるさい」
「え?」
もう我慢の限界だ。
私の中で、何かが堰を切った。
「うるさいうるさいうるさい!!!
なんで私を殴らないのよ?なんで嫌わないのよ?所詮おもちゃでしかないくせに!!自分にとって都合のいい存在でしかないくせに!!!」
「……ユウリ」
「嫌うなら嫌ってよ!!私なんて愛される価値も意味もない!!代わりなんていくらでもいる!!私なんかさっさと捨てて従順ないい子ちゃんをお気に入りのおもちゃにでもすればいいでしょ?!」
「ユウリ」
「愛してる?お気に入り?笑わせないで!!私をありもしないエサで踊らせるための嘘なんでしょ?!あなたのせいで、あなたのせいで私はこんな気持ちなんか──」
「ねえ」
一際低く大きな声に遮られ、私の言葉はそこで止まる。
「僕の言うことが聞けないの?」
今まで聞いた事もない、地獄の底を這うような低く鬼気迫る声。
空間全体が張り詰めてビリビリと震え、周囲の時間はまるで停止したようにただ静けさだけが満ちる。
ああ。この感覚、何年ぶりだろう。
体がガタガタと小刻みに震え出す。背筋をぞくりと冷たいものが走り、手足はまるで棒になってしまったかのように動かない。
私の精神も、肉体も、ただ一つの「恐怖」だけに支配されていた。
表情が消えたXの顔。冷たく鋭い刃物のような赤い視線が、私に突き刺さる。
じりじりと私に迫り来るXの気配。その気配にさえ、私は押しつぶされそうな気がして恐怖を覚える。
私は後ずさりして、力の入らない足に鞭を打ってなんとか逃げ出そうとした。
「ひっ……こ、来ないで……っ!!」
今にももつれそうな足で逃げられるはずもなく、私はXに腕を掴まれた。
私を逃がすまいと、Xは私の腕を強く強く掴む。
「……だったらユウリ、思い出させてあげるよ」
刹那、私の視界は真っ白になった。