前編
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「全く、君は何を考えてるの?
君も含め、ここに導いた人間の魂は僕の管理下にあるから、魂さえあれば器がなくなっても何度でも再生成できるから問題ないけど………」
先程と同じ、聞き慣れた声。
…という事は、やっぱりダメだったらしい。
「でもユウリ、僕は『死』が大嫌いなんだ。死っていうのは魂そのものが消滅し、永遠に失われること。こんなに美しくて、楽しませてくれる存在が消えちゃうなんてもったいないじゃん?
死は僕の世界にふさわしくない。そして死を思わせるような行動もね。
君は僕のお気に入りの人間なんだから、君はその期待に応えればくれればいい。だからもう、二度と自殺なんて真似はしちゃいけないし、器を無駄にしてもいけないよ。いいね?」
「余計な事しないでよ」
「余計?そんな事ないよ。僕が君の器を再生成したんだから、君は今こうして自分の意志で行動できて言葉も話せてるじゃん。」
この自称神様の自分勝手さには気が滅入る。正直、お母さんよりもたちが悪い。
首元に手を当ててみる。あんなに深くえぐったはずの傷は、きれいさっぱり消えている。その傷から吹き出し、床にぶちまけられたはずの血も、まるで何事もなかったかのようになくなっていた。よくもまあここまで綺麗に作り直したもんだと、私はため息混じりに真逆の意味で感心する。
私はもう、ほとんど諦めかけていた。また自殺して仮の体……器と意識を消し去っても、その度にXに作り直されるだけ。ましてや私は彼に気に入られてしまっているので尚更だろう。そんないたちごっこが目に見えた。
──本当に、たちが悪い。
救うわけでも、楽にしてくれるわけでもない。信じる者しか救わないずるい神様より、よっぽどたちが悪い。
私の目には、相も変わらないXの不敵な笑みだけが腹立たしいほどはっきりと映っていた。