カイト夢
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「どうしたの、そんな顔して」
我に返って、ああ、と答える。
「考えていた」
「何を?」
漠然と考えていたことを言葉にしてみようと組み立ててみるが、いざ明確にすると気恥ずかしくなって、開きかけた口を閉じた。
「言えないようなこと?」
じー、と自分を見つめるセツナの視線が刺さるように痛い。
要らぬ誤解を与えるくらいなら、言ってしまった方がきっと幾分もマシだ。
「確率を考えていた」
「確率? 何の?」
「1人の人間と人間が、出会う確率」
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしくて、思わず視線を逸らした。ああきっと笑われる。
そう思った時には既にクスクスとセツナが笑っていた。
「わ、笑うな……!」
「ごめんごめん」
「まだ笑ってるじゃないか……!」
肩の震えが収まった頃、セツナが言った。
「で、どうなったの?」
「天文学的数字になって、値なんて出しようがない」
地球が誕生する確率、地球の生命として誕生する確率、人間として誕生する確率、その時代に誕生する確率、個体の元となる受精卵になる確率、無事に誕生する確率、出会った場所で遭遇する確率。
全て掛け合わせるのだから、その値は言うまでもない。そもそも、宇宙の誕生自体が奇跡のような確率なのだ。
「他にも存在する確率を掛け合わせたら、当然だが更に値は小さくなる」
「カイトらしいね、その考え方。でも」
「何だ?」
「そんな話をするなんて、カイトって結構……」
☆
「……と言われた訳なのだが」
俺の相談に乗ってくれと声を掛け集まった部屋で、神代凌牙はコーヒーを、遊馬は菓子を嗜みながら、俺の話を聞いていた。
「ふざけんじゃねぇ! そんなノロケ話聞かされに来たのか俺たちは!」
「相談に乗るぜと言ったのはお前じゃないか、神代凌牙!」
「でもさー」
モサモサと菓子を頬張りながら遊馬が口を挟んだ。
「それ俺たちにも言えるよね? 確率の話」
「遊馬、お前は空気読め」
「え、どういうこと? シャーク?」
「カイト、なんでコイツを呼んだんだ?」
部屋のノックと同時に、お菓子まだありますけれど、とセツナが顔を覗かせた。
「いや、いらない」
「俺食べたい!」
「お前何しに来たんだよ……」
セツナが新しい菓子を置いて部屋を出ようとした時。
「おい、セツナ、だったか?」
「はい」
「お前も大変だな、こんな、とんだロマンチストが相手でな!」
セツナははにかみつつも、幸せそうな笑みを浮かべて部屋を出て行った。
(了)
2014.6.19~20 初稿
2022.2.25 加筆修正
6月19日、ロマンスの日記念(遅刻)
カイトはどう考えてもロマンチストです。
甘いのも久方ぶりでした。カイトで甘は難しいです。
前半の会話のシチュエーションはご自由にどうぞ。
Lemon Ruriboshi.
我に返って、ああ、と答える。
「考えていた」
「何を?」
漠然と考えていたことを言葉にしてみようと組み立ててみるが、いざ明確にすると気恥ずかしくなって、開きかけた口を閉じた。
「言えないようなこと?」
じー、と自分を見つめるセツナの視線が刺さるように痛い。
要らぬ誤解を与えるくらいなら、言ってしまった方がきっと幾分もマシだ。
「確率を考えていた」
「確率? 何の?」
「1人の人間と人間が、出会う確率」
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしくて、思わず視線を逸らした。ああきっと笑われる。
そう思った時には既にクスクスとセツナが笑っていた。
「わ、笑うな……!」
「ごめんごめん」
「まだ笑ってるじゃないか……!」
肩の震えが収まった頃、セツナが言った。
「で、どうなったの?」
「天文学的数字になって、値なんて出しようがない」
地球が誕生する確率、地球の生命として誕生する確率、人間として誕生する確率、その時代に誕生する確率、個体の元となる受精卵になる確率、無事に誕生する確率、出会った場所で遭遇する確率。
全て掛け合わせるのだから、その値は言うまでもない。そもそも、宇宙の誕生自体が奇跡のような確率なのだ。
「他にも存在する確率を掛け合わせたら、当然だが更に値は小さくなる」
「カイトらしいね、その考え方。でも」
「何だ?」
「そんな話をするなんて、カイトって結構……」
☆
「……と言われた訳なのだが」
俺の相談に乗ってくれと声を掛け集まった部屋で、神代凌牙はコーヒーを、遊馬は菓子を嗜みながら、俺の話を聞いていた。
「ふざけんじゃねぇ! そんなノロケ話聞かされに来たのか俺たちは!」
「相談に乗るぜと言ったのはお前じゃないか、神代凌牙!」
「でもさー」
モサモサと菓子を頬張りながら遊馬が口を挟んだ。
「それ俺たちにも言えるよね? 確率の話」
「遊馬、お前は空気読め」
「え、どういうこと? シャーク?」
「カイト、なんでコイツを呼んだんだ?」
部屋のノックと同時に、お菓子まだありますけれど、とセツナが顔を覗かせた。
「いや、いらない」
「俺食べたい!」
「お前何しに来たんだよ……」
セツナが新しい菓子を置いて部屋を出ようとした時。
「おい、セツナ、だったか?」
「はい」
「お前も大変だな、こんな、とんだロマンチストが相手でな!」
セツナははにかみつつも、幸せそうな笑みを浮かべて部屋を出て行った。
(了)
2014.6.19~20 初稿
2022.2.25 加筆修正
6月19日、ロマンスの日記念(遅刻)
カイトはどう考えてもロマンチストです。
甘いのも久方ぶりでした。カイトで甘は難しいです。
前半の会話のシチュエーションはご自由にどうぞ。
Lemon Ruriboshi.
私はあれで考えてましたピロート(ry