カイト夢
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時計の針が12の文字のところでぴったりと重なって、夜更けになったことを示していた。私は読みかけの本に栞を挟む。もう少し借りていても良いか、クリスさんに聞いてみよう。
「明日、来るって言ってたよね」
まあ正確には今日なのだが。
私も早く寝なくては。その前に、少し喉を潤そう。そう思って私は廊下に出た。
廊下は至って静かだった。いつもと違うのは、どこからか光の筋が伸びていて、いつもより少し明るいということだ。誰か起きているらしい。
その筋を目で辿ると、カイトの部屋からだということがすぐにわかった。
「カイト?」
ノックをしても返事はない。廊下に静けさが戻るだけだ。
「カイト、開けるよ?」
部屋の電気は落とされ、机のスタンドライトだけが煌々と点いている。暗さに慣れた目に刺さるように眩しい。
カイトは机の上で伏していた。すうすうと寝息を立て眠るその顔にはまだあどけない少年っぽさが残っている。
机の上にはよく分からない部品が散らばっていて、設計図らしいもの――オボミタル7とカイトの字で書いてある――が広げられている。
私は部屋に戻りブランケットを1枚持って、再びカイトのところに戻った。
「全く、熱中しすぎるのは相変わらず、か」
そっとブランケットをかけようと広げた時。
「こ、い……」
寝言か、いや待て、今何と? 今カイトはなんて言った?
こい、って何ですか。どれですか。
広げかけたブランケットを持ったまま私は凍りついたように立ちつくした。
そのくせ、頭の中はグルグルと色々なことが巡って、あっという間にオーバーヒート寸前だ。
鯉ですか、故意ですか、どの字ですか。
まさか、恋ですか? カイトサン? カタブツなあなたが恋ですか? 誰にですか。
まだ何もわかっても決まってもいないのに、誰だ、というところから離れられなくなった頃、カイトは確かにこう言った。
「味が、濃すぎ、ない、か? スー、プ」
今夜のスープは確かに濃かったねぇ! ごめんね!?
そう心で呟いた私の中に、行き場のなくなった羞恥心が転がった。
眩しくて、目が覚めた。見慣れない窓から朝日が私を照らしている。
慌てて私は起き上がる。
昨晩、カイトにブランケットをかけに来て。
何か色々あって安心して、ソファーに座ってそれから……。
「おはよう」
その声は明らかに気だるそうだ。
「お、おはよう、カイト」
「お前、馬鹿か」
「馬鹿って……!」
「夜更けに男の部屋に来るヤツがあるか」
思わず、自分にかかっているブランケットを引き寄せる。
私もわかってはいるのだけれど、カイトがそんな人でないことは。
「待て、何もしてないぞ俺は!」
自分で言った言葉の重みを理解したらしい。
そして、そもそも勝手に部屋に来たお前が、とブツブツ言っていたのが少し可愛いらしく見えた。
「何を笑ってる?」
「別に?」
「とにかく、それは返すからな」
指さされたのは、私にかかっているブランケット。よく見れば、昨晩、私が部屋から持ってきたものだった。
あの後、目が覚めたカイトが眠ってしまった私にかけてくれたのだろう。
「ありがとう」
「何がだ」
「かけてくれたんでしょう?」
「……お前が風邪をひいたらハルトが心配するからな。ハルトにうつされても困る」
カイトが、鼻でふんと笑った。
半分本当なんだろうけれど。そういうことにしておこう。
「だが、礼は言う」
あとは蚊の鳴くような声だった。微かだが、確かに聞こえた。
顔を背け、少し頬を染めて、ありがとうと言うカイトに私は少し面食らった。余りにもレアだ。
「気が済んだら、さっさと部屋に帰れ。俺は行く」
静けさを先に破ったのはカイトの方だった。沈黙に耐えられなかったらしい。
時計を見れば結構な時間だった。完全に寝坊だ。
そういえばクリスさんに本のことを聞こうと思っていたんだった、と思い出し、
「待って、私も!」
と慌てて、ソファーから立ち上がる。そんな私の姿を見たカイトは
「ば、馬鹿! 着替えてから来い!」
と逃げるように部屋を後にした。
自分が寝間着だということを忘れていた私は確かに馬鹿だ。が、そんな反応することないじゃないか。
部屋に戻った私が着替えようと上半身の寝間着を脱いだ所で、ようやくカイトの反応の意味するところを知った。
(了)
2014.5.17(23時)~18 初稿
2022.2.25 加筆修正
呟きイベ。517=こいな=濃いな。駄洒落。(514=こいよ、やったとこだし)
2時間弱かかったけどね!
Lemon Ruriboshi.
「明日、来るって言ってたよね」
まあ正確には今日なのだが。
私も早く寝なくては。その前に、少し喉を潤そう。そう思って私は廊下に出た。
廊下は至って静かだった。いつもと違うのは、どこからか光の筋が伸びていて、いつもより少し明るいということだ。誰か起きているらしい。
その筋を目で辿ると、カイトの部屋からだということがすぐにわかった。
「カイト?」
ノックをしても返事はない。廊下に静けさが戻るだけだ。
「カイト、開けるよ?」
部屋の電気は落とされ、机のスタンドライトだけが煌々と点いている。暗さに慣れた目に刺さるように眩しい。
カイトは机の上で伏していた。すうすうと寝息を立て眠るその顔にはまだあどけない少年っぽさが残っている。
机の上にはよく分からない部品が散らばっていて、設計図らしいもの――オボミタル7とカイトの字で書いてある――が広げられている。
私は部屋に戻りブランケットを1枚持って、再びカイトのところに戻った。
「全く、熱中しすぎるのは相変わらず、か」
そっとブランケットをかけようと広げた時。
「こ、い……」
寝言か、いや待て、今何と? 今カイトはなんて言った?
こい、って何ですか。どれですか。
広げかけたブランケットを持ったまま私は凍りついたように立ちつくした。
そのくせ、頭の中はグルグルと色々なことが巡って、あっという間にオーバーヒート寸前だ。
鯉ですか、故意ですか、どの字ですか。
まさか、恋ですか? カイトサン? カタブツなあなたが恋ですか? 誰にですか。
まだ何もわかっても決まってもいないのに、誰だ、というところから離れられなくなった頃、カイトは確かにこう言った。
「味が、濃すぎ、ない、か? スー、プ」
今夜のスープは確かに濃かったねぇ! ごめんね!?
そう心で呟いた私の中に、行き場のなくなった羞恥心が転がった。
眩しくて、目が覚めた。見慣れない窓から朝日が私を照らしている。
慌てて私は起き上がる。
昨晩、カイトにブランケットをかけに来て。
何か色々あって安心して、ソファーに座ってそれから……。
「おはよう」
その声は明らかに気だるそうだ。
「お、おはよう、カイト」
「お前、馬鹿か」
「馬鹿って……!」
「夜更けに男の部屋に来るヤツがあるか」
思わず、自分にかかっているブランケットを引き寄せる。
私もわかってはいるのだけれど、カイトがそんな人でないことは。
「待て、何もしてないぞ俺は!」
自分で言った言葉の重みを理解したらしい。
そして、そもそも勝手に部屋に来たお前が、とブツブツ言っていたのが少し可愛いらしく見えた。
「何を笑ってる?」
「別に?」
「とにかく、それは返すからな」
指さされたのは、私にかかっているブランケット。よく見れば、昨晩、私が部屋から持ってきたものだった。
あの後、目が覚めたカイトが眠ってしまった私にかけてくれたのだろう。
「ありがとう」
「何がだ」
「かけてくれたんでしょう?」
「……お前が風邪をひいたらハルトが心配するからな。ハルトにうつされても困る」
カイトが、鼻でふんと笑った。
半分本当なんだろうけれど。そういうことにしておこう。
「だが、礼は言う」
あとは蚊の鳴くような声だった。微かだが、確かに聞こえた。
顔を背け、少し頬を染めて、ありがとうと言うカイトに私は少し面食らった。余りにもレアだ。
「気が済んだら、さっさと部屋に帰れ。俺は行く」
静けさを先に破ったのはカイトの方だった。沈黙に耐えられなかったらしい。
時計を見れば結構な時間だった。完全に寝坊だ。
そういえばクリスさんに本のことを聞こうと思っていたんだった、と思い出し、
「待って、私も!」
と慌てて、ソファーから立ち上がる。そんな私の姿を見たカイトは
「ば、馬鹿! 着替えてから来い!」
と逃げるように部屋を後にした。
自分が寝間着だということを忘れていた私は確かに馬鹿だ。が、そんな反応することないじゃないか。
部屋に戻った私が着替えようと上半身の寝間着を脱いだ所で、ようやくカイトの反応の意味するところを知った。
(了)
2014.5.17(23時)~18 初稿
2022.2.25 加筆修正
呟きイベ。517=こいな=濃いな。駄洒落。(514=こいよ、やったとこだし)
2時間弱かかったけどね!
Lemon Ruriboshi.