Ⅳ・トーマス夢
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「お前は今から、俺が良いと言うまで俺の着せ替え人形だ、いいな?」
いや良くない、と反論すべく口を開きかけたどころで、「因みに使用人のお前に拒否権はない」と断言してきた。
なんというパワハラ。
何故、どうして、この方、否コイツはどこかおかしいのか! アジアチャンピオンと呼ばれる程なのに!
いくら旧知の仲かつ恋仲とはいえ、相変わらずこの方、Ⅳ“様”が何を考えているのか分からない。
いやらしい笑みをこぼすⅣを恨みを込めて見上げるが、たじろぐ様子は微塵もない。
結局折れるのはいつも私だ。
「……かしこまりました」
「聞き分けがいいな。まずはこれを着ろ」
一体どうやって女物の服を持ってきたのだ? Ⅳの足元に置かれた沢山の紙袋の中身は全てそれらしい。思わずその量にぐったりした、まだ一着も着せられていないのに。
「おい、いつまでそこに突っ立ってやがる?」
「……申し訳ありません」
ゆっくりと歩いてⅣに近づく。その間に私は覚悟を決めた。
今日の私は彼の着せ替え人形なのだ。
彼の前に立ち、目を閉じて彼の気配に息を呑む。
が、何も起きない。
どうしたのだろうと目を開けようとした瞬間、顔に何か柔らかいものが投げつけられた。
私が着せられるはずの服だった。
「何してやがる」
不思議そうに見下ろしているのが腹立たしい。
「今日の私はⅣ様の着せ替え人形なのでしょう?」
「だから早く着替え……」
ああこの方、着せ替え人形が何か分かっていなかったのか?
私が気付いたのと同じくらいに、彼は顔を赤らめて大声で言った。
「違ぇ! 自分で着替えろ!」
「は、はい!」
着替えろ? 着替えて来いではない、つまりはここで着替えろと。
なんということ! 母よ、こんな不埒な娘になった私をお許しください……!
「馬鹿! ここで脱ぐな! バスルーム使え!」
半ば悲鳴だった。
さっきの大声に圧倒されて、私も気が動転していたのだ、きっと。
そう、きっとそうだ。
意識していた自分が馬鹿みたいじゃないか!
着替えてはⅣの前に登場するというファッションショーの真似事のようなことをしながら、冷めゆく思考が何度もそう繰り返した。
「結局、何が目的だったのですか? Ⅳ様」
終わる頃にはもうヘトヘトだったが、回らない思考の中で何とか一番聞きたかったことを尋ねた。
「……今日のご褒美だ」
渡されたのは、幾つかの紙袋。中を確認すると、ファッションショーで彼が頷いた時の服ばかりだった。
「俺と出掛ける時に、好きなの、着て来い」
(了)
2014.5.3 初稿
2022.2.25 加筆修正
呟き一行創作タグリク。
リ●ちゃんの誕生日なのは偶然だよ多分。
Lemon Ruriboshi.
いや良くない、と反論すべく口を開きかけたどころで、「因みに使用人のお前に拒否権はない」と断言してきた。
なんというパワハラ。
何故、どうして、この方、否コイツはどこかおかしいのか! アジアチャンピオンと呼ばれる程なのに!
いくら旧知の仲かつ恋仲とはいえ、相変わらずこの方、Ⅳ“様”が何を考えているのか分からない。
いやらしい笑みをこぼすⅣを恨みを込めて見上げるが、たじろぐ様子は微塵もない。
結局折れるのはいつも私だ。
「……かしこまりました」
「聞き分けがいいな。まずはこれを着ろ」
一体どうやって女物の服を持ってきたのだ? Ⅳの足元に置かれた沢山の紙袋の中身は全てそれらしい。思わずその量にぐったりした、まだ一着も着せられていないのに。
「おい、いつまでそこに突っ立ってやがる?」
「……申し訳ありません」
ゆっくりと歩いてⅣに近づく。その間に私は覚悟を決めた。
今日の私は彼の着せ替え人形なのだ。
彼の前に立ち、目を閉じて彼の気配に息を呑む。
が、何も起きない。
どうしたのだろうと目を開けようとした瞬間、顔に何か柔らかいものが投げつけられた。
私が着せられるはずの服だった。
「何してやがる」
不思議そうに見下ろしているのが腹立たしい。
「今日の私はⅣ様の着せ替え人形なのでしょう?」
「だから早く着替え……」
ああこの方、着せ替え人形が何か分かっていなかったのか?
私が気付いたのと同じくらいに、彼は顔を赤らめて大声で言った。
「違ぇ! 自分で着替えろ!」
「は、はい!」
着替えろ? 着替えて来いではない、つまりはここで着替えろと。
なんということ! 母よ、こんな不埒な娘になった私をお許しください……!
「馬鹿! ここで脱ぐな! バスルーム使え!」
半ば悲鳴だった。
さっきの大声に圧倒されて、私も気が動転していたのだ、きっと。
そう、きっとそうだ。
意識していた自分が馬鹿みたいじゃないか!
着替えてはⅣの前に登場するというファッションショーの真似事のようなことをしながら、冷めゆく思考が何度もそう繰り返した。
「結局、何が目的だったのですか? Ⅳ様」
終わる頃にはもうヘトヘトだったが、回らない思考の中で何とか一番聞きたかったことを尋ねた。
「……今日のご褒美だ」
渡されたのは、幾つかの紙袋。中を確認すると、ファッションショーで彼が頷いた時の服ばかりだった。
「俺と出掛ける時に、好きなの、着て来い」
(了)
2014.5.3 初稿
2022.2.25 加筆修正
呟き一行創作タグリク。
リ●ちゃんの誕生日なのは偶然だよ多分。
Lemon Ruriboshi.