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AG

attention!


『トシミツは純粋・純潔!』
という信念を持つ方にはオススメ出来ません!

『どんなトシミツも、大丈夫!』
という方はどうぞ。









お前が死んでから幾月も過ぎた。


俺はあの時。
お前が息を引き取る瞬間は、
総悟とお前、2人だけにしてやりたくて、

俺は1人、病院の屋上にいた。


けど、本当は……




【四葉の白詰草】

 一輪目 面影




往来で子どもの泣く声がする。
非番の日ぐらい勘弁して欲しいものだと内心で頭を抱えるが、顔見知りに「助けてやって欲しい」と案内されちゃ動かざるを得ない。

「迷子は専門外なんだがな」

そう呟き頭をかきながらしゃがみ込み、子どもの目線に合わせる。
子どもは服からして女の子のようだ。
おい、と声をかけると子どもが顔を上げる。土方は息を飲んだ。

「ミツ、バ……?」

涙を浮かべるその女児はかつて恋い慕った女の面影があった。
違う、似ているだけだ、と土方は頭を振り、いつもの調子を取り戻そうとする。
懐から警察手帳を取り出し、改めて声をかけた。

「あー、こう見えてもおまわりさんだ。どうした?」
「“しろ”を追いかけてたら、帰り道、わかんなくなっちゃった」
「名前は? 家はどこだ?」
「“早川呉服店”の“早川四葉”です……」

目を赤くしながらも、しっかりと答えるそのいじらしい姿にさえ、“彼女”の面影を感じでしまう。
咳払いをし、携帯電話を取り出すと、早川呉服店の位置を調べて行こうかと土方は立ち上がった。

「待って!」
「どうした?」
「“しろ”、見つけてないの」

四葉は再びボロボロと涙を流し始める。再び目線を合わせ、土方は尋ねた。

「“しろ”?」
「飼ってる猫ちゃん。真っ白なの」
「猫か」

飼い猫探しなんて、もっと専門外だ。だが、無理矢理にこの迷子を送り届けるのも難しそうだ。その時、土方の脳裏にいやらしい笑みを浮かべる天パ頭の男の顔が浮かぶ。奴に頼るのは癪に障るが……。

「猫は探してやる」
「本当?」
「ああ。だから家に帰るぞ」
「はい!」
「よし、いい子だ」

ぽん、と四葉の頭に手を乗せてわしゃわしゃと撫でた。土方と四葉の顔に笑みが浮かんだ。





「えっと、どちらさまでしょう?」

店主の妻らしき人が、門戸から顔をのぞかせた。
翌日、早川呉服店の裏手にある店主の家の門前に万事屋の三人+一匹は立っていた。

あの後、保護した四葉を自宅まで送り届けた足で土方は万事屋に猫探しの依頼をしたのだ。(相当な抵抗感はあったが。)
四葉から借りた“しろ”の首輪の匂いを辿れば、定春はあっという間に白猫を見つけ出したのだった。

「昨日来たクソ警察の土方に頼まれて、猫を探しました万事屋の坂田銀時って言います。ご依頼の猫、お届けに参りましたー」

すると家の奥から女の子が飛び出してきた。その女の子を一目見て、銀時は目を丸くした。

「しろ!」

新八からしろを受け取ると、もうどこにも行かないでね、と子どもらしく猫に語りかける。

「おばさま! しろだよ!」
「よかったねぇ。ほら、お礼を言いなさい」

ありがとうございました、と深々と頭を下げる四葉に、どうもと万事屋一同もつられる。

「娘がお世話になりました、ありがとうございました」

土方さんにも宜しくお伝えください、と店主の妻が娘とともに家の中へと消えたが、銀時の表情は固まったままだ。

「土方さんに連絡しておきますね、って銀さん?」
「銀ちゃん? どうしたアルか?」
「いや、何でもねぇよ」

依頼の時の違和感はこれだったのかと銀時は悟ったのだった。

(あれ? 娘?)





「おい、トシ」
「土方さーん」

呼ばれていることに気づいて、土方は我に返った。

「あ?どうした?」
「携帯、ずっと鳴ってますぜ」

振動を続ける携帯電話に出ると、聞き慣れた声が忙しかったですかね? と問うた。

「いや、大丈夫だ」
『依頼のほう、無事に終わりました。土方さんにも宜しくとのことです』
「そうか、世話かけたな」
『いえいえ、こちらこそ依頼ありがとうございました!』

新八の声が明るいのは支払った依頼料の額が相場以上だからだろう。現金な奴らだと改めて土方は思う。

「なあトシ、今の新八くんだよな!? お妙さんに何か!?」
「違うから安心してくれ近藤さん、頼んだ野暮用が終わったって報告だ」
「土方さんが万事屋に依頼なんて明日は槍でも降るんですかねィ」
「ほっとけ。それより、だ」

会議の途中であったことを思い出した土方は話を戻す。

「この町中の張り紙の出処、まだわかんねぇのか?」

広げられた紙には“倒幕”や“攘夷”といった言葉が並んでいた。そして特徴的なのは。

「何なんですかねィ、この絵は」

手が本物の鎌になってるカマキリの絵だ。

「奴らのトレードマークであろうことは確かだろう」
「局長!」

その時、ドタドタと廊下を走る音とともに山崎が局長室の襖を勢い良く開けた。

「大変です! 犯行予告の通報が!」


 (続) 二輪目【疑惑】へ
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