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AG

「しかし、すごい流行ようですね、コレ」

昼飯時の食堂のテレビはワイドショー番組を垂れ流し、今は絶賛放映中だというドラマ“14歳の母親”を特集していた。

「なんでェ、ザキにそんな趣味があるとはねィ」

山崎の横でカレーを食らう沖田が棒読みでからかう。

「勘違いしないでくださいよ? 14歳の女の子が真剣に葛藤するドラマなんですから。最近のドラマは惚れた腫れたなんだとそんなのばかりで面白みもないんで、そんな中で光る一作ですよ。あ、俺は見てないんで良く知らないですけど、見てないんで」
「ああ、ザキが見てることだけは良く分かった」

勘違いしないでくださいよ!? と一体何の誤解を解こうとしているのか不明な山崎はさておいて、沖田はぼぅっとテレビの画面に見入った。14歳って言ったら確か。

「万事屋んとこのチャイナ娘も14だったな」

危うく噴飯しそうになった。
山崎とは反対側に腰掛けた土方が沖田の脳内を覗いたが如く呟いたのだ。
土方がカレーにマヨネーズをかけようとした瞬間、沖田はそれを奪い取り、中庭に向かって放り投げる。

「何すんのお前ェェェ!」

中庭へとダッシュする土方を確認すると、懐から真っ赤なソースを入った瓶を取り出し、土方のカレーにふんだんにぶっかけた。
あまりの刺激臭に山崎が涙目になっているが知ったこっちゃないと沖田はほくそ笑んだ。





公園のベンチで沖田はチューパットをすすりながらサボりを満喫する。

(“14歳の母親”ねィ)

ふと脳裏で好敵手がニヤリと笑った。
大体土方のせいだ、と頭を抱える。

「オイ、サボりアルか? チューパット半分寄越せよ、残ってんだろ?」
「うおぉおぉああ!?」

意中の人物が突然現れたら誰でも驚くのは致し方ないとはいえ。
――タイミング良すぎねェ!?

「何アルか? そんなに驚いて。キモイアル」
「こっちにはこっちの事情があるんでィ」

ぷいと神楽から顔を反らしつつ、ほらよ、と片方のチューパットを手渡す。
神楽はいつものように食って掛かって来ない沖田に首を傾げた。

「お前らしくないアル、熱でもあんのかヨ?」
「ほっとけィ」
「……まさか!」
「何でェ、いいから早くしねぇと……」
「毒でも入れたアルか!?」
「入れてねぇよ!」

気が変わらねえうちに受け取れクソチャイナ、と悪態をつくのも忘れて、ぐい、と改めてチューパットを差し出すと

「……ありがとアル」

と神楽は受け取った。

「テメェも礼を言うなんざ、らしくないねィ」
「うるさいアル! お前がおかしいから調子狂うネ!」

神楽はベンチの端にどん、と腰を下ろした。
そっちの方に目を遣る。意思とは別に上から下まで眺めてしまう。
瞬間、視界が暗くなる。神楽が片手で沖田の目を覆うように掴みかかったのだ。

「何ジロジロ見てるアル!」

体に衝撃を感じて自分が地面に投げ出されたんだと理解する。

「もう行くアル! キモイアル! じゃあな変態クソサド!」

足音が遠のいていくのが聞こえた。五体投地、空を仰ぐ。
ははっと笑って今度は自分の手で自分の目を覆った。

「認めたかねェなァ」

と沖田は自嘲の笑みを浮かべた。

 (了)




2007.7.31 初稿
2021.2.7 加筆修正
2022.2.2 加筆修正

移転作業に伴い、大幅に修正。
前のは目も当てられなかった……
17巻の芙蓉編で沖田と土方が飯屋?でTV見ながら、
土方「おい、チャンネル変えんなよ、おやじ。戻せ」
沖田「14歳の母親、見せろよ」
とあったところから書いたらしい。

Lemon Ruriboshi.
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