AG
五月五日。
「おう! トシ!」
「何だ? 近藤さん」
「トシ、今日はお前の誕生日だったな! おめでとう!」
「あ、ありがとな、近藤さん……(何か慣れねぇな)」
「照れるなって! しかしトシも○歳か。大きくなったなぁ」
さめざめと泣く様を、土方は呆れた目で見る。
「……近藤さん、本当に俺を○歳だと思ってんのか?」
「当たり前じゃないか! そんな事よりもプレゼントプレゼント!」
近藤は、トシに大きく膨らんだレジ袋を渡した。
(まさか、今買ってきたんじゃ?)
「まぁ開けてみてくれよ」
「あ、ああ……」
ガサガザと袋を開ける。
「乾燥ブルーベリー……?」
数えたところ、計15袋。
「お前のその開きっ放しの瞳孔が治るかもしれん、と思ったんでな。
ほら、TVCMでも、ブルーベリーは目に良いって言ってるだろ?」
「わ●さ生活!?」
土方の頭の中で、手足の生えたお目目パッチリのブルーベリーが歌に合わせて踊り出した。
「局長、瞳孔開きっ放しが治った副長は、最早副長じゃないですよ~」
「山崎ィィィィィィ!!」
「うわぁぁぁぁあああ!!」
山崎の襟首を掴み、愛刀の切っ先を喉元に向ける。
「ままま待ってください副長! 俺も副長に誕生日プレゼントを……!!」
山崎の指差す方向に、大きめのダンボールが1つあった。
恐る恐る、開けてみる。
「……何だこれ」
「ミントンセットです、副長! ミントンラケットに、シャトル(※羽のこと)、そしてユニフォームも揃った、山崎退お勧めの一品! 因みにユニフォームは青●学園テ●ス部の……!」
「そうか山崎、お前は俺とミントンやりたいのか。……誰がやるかァァアア!!」
と山崎に殴りかかった時、待ちなせぇ、と誰かに肩を掴まれた。
「土方さん、山崎なんかより、俺の話を聞いてくだせェ」
「何だ、総悟」
「土方さん、誕生日おめでとうごぜェます。プレゼントでさァ。はいよ」
「?」
沖田が手渡したは縦3cm×横8cm程の、ホッチキスで留められた紙の束。
「“肩一(ひと)叩き券”?」
「その券1枚につき、利き腕の肩を1度だけ叩いてあげまさァ。カナヅチで思いっきり」
「ふざけんじゃねェェェェ!!
さり気なく優しい素振りして、何恐ろしい事企んでんだテメェは!?
しかも何で小学生のお手伝い券風!? 父の日じゃねェんだよ!
つうか、お前みたいなヤツを子どもにした覚えはねェ!!」
「俺だって、土方さんみたいな瞳孔開きっ放しの父親なんて嫌でさァ!」
「テメェは父親を何だと思ってんだァ!!」
そんな騒がしいやりとりをよそに、山崎は他の券を見ている。
「沖田隊長、コレは何をするんですか? “ツボ押しwith五寸釘”?」
「それですかィ? 針治療五寸釘バージョンみたいなもんでさァ。 五寸釘をツボに」
「誰かァァアア!!! コイツの頭を針治療で治してくれェェ!!!!」
バタンバタンと騒がしい中に、突然澄んだ声が響いた。
「今日も相変わらず騒がしいですね」
ふふふと笑う彼女はまさに天女だ。
「姉上!!」
「これはこれはミツバ殿! いつ江戸に?」
「先程です。病院の検査の前に、ここへ来たんです。
……そういえば今日、十四郎さんのお誕生日、でしたよね?」
「お、おう……」
「そう思って、プレゼントを持ってきたんです。“特製ミツバスペシャル”です!
十四郎さんの大好きなマヨネーズと、辛味を一度に味わえる代物です」
「あ、す、すまねェ……な」
照れる2人に沖田は1人ムッとする。
「姉上、それ、ちょっと貸してくだせェ」
「どうして?」
「美味しさが引き立つ秘密の物質を、土方さんの誕生日を祝って特別に追加してあげまさァ」
沖田は土方に冷たく黒い笑みを向けた。
土方の背筋が、一瞬で凍る。
「待て待て待て! そのままで良い! そのままで良いから!!」
「でも、せっかく総ちゃんが」
「いいから!!」
部屋は静かになった。
近藤、山崎、沖田が部屋を出る時だった。
「ちっ……、青酸カリ混入作戦失敗かぁ……」
「え、今、沖田隊長、何て……?」
<完!>
2008.6.20.初稿
2013.12.12 加筆修正
2021.2.5 加筆修正
2022.2.2 加筆修正
引越の準備で片付けしてたら昔の原稿が偶然出てきた。
Lemon Ruriboshi.
「おう! トシ!」
「何だ? 近藤さん」
「トシ、今日はお前の誕生日だったな! おめでとう!」
「あ、ありがとな、近藤さん……(何か慣れねぇな)」
「照れるなって! しかしトシも○歳か。大きくなったなぁ」
さめざめと泣く様を、土方は呆れた目で見る。
「……近藤さん、本当に俺を○歳だと思ってんのか?」
「当たり前じゃないか! そんな事よりもプレゼントプレゼント!」
近藤は、トシに大きく膨らんだレジ袋を渡した。
(まさか、今買ってきたんじゃ?)
「まぁ開けてみてくれよ」
「あ、ああ……」
ガサガザと袋を開ける。
「乾燥ブルーベリー……?」
数えたところ、計15袋。
「お前のその開きっ放しの瞳孔が治るかもしれん、と思ったんでな。
ほら、TVCMでも、ブルーベリーは目に良いって言ってるだろ?」
「わ●さ生活!?」
土方の頭の中で、手足の生えたお目目パッチリのブルーベリーが歌に合わせて踊り出した。
「局長、瞳孔開きっ放しが治った副長は、最早副長じゃないですよ~」
「山崎ィィィィィィ!!」
「うわぁぁぁぁあああ!!」
山崎の襟首を掴み、愛刀の切っ先を喉元に向ける。
「ままま待ってください副長! 俺も副長に誕生日プレゼントを……!!」
山崎の指差す方向に、大きめのダンボールが1つあった。
恐る恐る、開けてみる。
「……何だこれ」
「ミントンセットです、副長! ミントンラケットに、シャトル(※羽のこと)、そしてユニフォームも揃った、山崎退お勧めの一品! 因みにユニフォームは青●学園テ●ス部の……!」
「そうか山崎、お前は俺とミントンやりたいのか。……誰がやるかァァアア!!」
と山崎に殴りかかった時、待ちなせぇ、と誰かに肩を掴まれた。
「土方さん、山崎なんかより、俺の話を聞いてくだせェ」
「何だ、総悟」
「土方さん、誕生日おめでとうごぜェます。プレゼントでさァ。はいよ」
「?」
沖田が手渡したは縦3cm×横8cm程の、ホッチキスで留められた紙の束。
「“肩一(ひと)叩き券”?」
「その券1枚につき、利き腕の肩を1度だけ叩いてあげまさァ。カナヅチで思いっきり」
「ふざけんじゃねェェェェ!!
さり気なく優しい素振りして、何恐ろしい事企んでんだテメェは!?
しかも何で小学生のお手伝い券風!? 父の日じゃねェんだよ!
つうか、お前みたいなヤツを子どもにした覚えはねェ!!」
「俺だって、土方さんみたいな瞳孔開きっ放しの父親なんて嫌でさァ!」
「テメェは父親を何だと思ってんだァ!!」
そんな騒がしいやりとりをよそに、山崎は他の券を見ている。
「沖田隊長、コレは何をするんですか? “ツボ押しwith五寸釘”?」
「それですかィ? 針治療五寸釘バージョンみたいなもんでさァ。 五寸釘をツボに」
「誰かァァアア!!! コイツの頭を針治療で治してくれェェ!!!!」
バタンバタンと騒がしい中に、突然澄んだ声が響いた。
「今日も相変わらず騒がしいですね」
ふふふと笑う彼女はまさに天女だ。
「姉上!!」
「これはこれはミツバ殿! いつ江戸に?」
「先程です。病院の検査の前に、ここへ来たんです。
……そういえば今日、十四郎さんのお誕生日、でしたよね?」
「お、おう……」
「そう思って、プレゼントを持ってきたんです。“特製ミツバスペシャル”です!
十四郎さんの大好きなマヨネーズと、辛味を一度に味わえる代物です」
「あ、す、すまねェ……な」
照れる2人に沖田は1人ムッとする。
「姉上、それ、ちょっと貸してくだせェ」
「どうして?」
「美味しさが引き立つ秘密の物質を、土方さんの誕生日を祝って特別に追加してあげまさァ」
沖田は土方に冷たく黒い笑みを向けた。
土方の背筋が、一瞬で凍る。
「待て待て待て! そのままで良い! そのままで良いから!!」
「でも、せっかく総ちゃんが」
「いいから!!」
部屋は静かになった。
近藤、山崎、沖田が部屋を出る時だった。
「ちっ……、青酸カリ混入作戦失敗かぁ……」
「え、今、沖田隊長、何て……?」
<完!>
2008.6.20.初稿
2013.12.12 加筆修正
2021.2.5 加筆修正
2022.2.2 加筆修正
引越の準備で片付けしてたら昔の原稿が偶然出てきた。
Lemon Ruriboshi.