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pkmn


「アナタみたいなトレーナー、久しぶりだわ」

オレのインテレオンを抱きしめながら、このジムのジムリーダーであるカスミさんが嬉しそうに目を細めた。思わずオレは「久しぶり?」と尋ねてしまう。

「マッドショットで水面を叩きつけて水しぶきを上げる、それを目眩ましにして攻撃するなんてこと、土壇場でやりそうなの一人しか浮かばなくてね」
「あ、いえ……」

オレが褒められている訳ではないのはわかっているけれど、申し訳なくなった。というのも、多分オレが考えた作戦じゃない。

ーーこんな時、サトシなら?

あのピンチの中で、サトシのバトルを思い浮かべていた。だからオレの作戦というよりサトシの戦法を真似したようなものなのだ。もし褒められるならオレじゃなくてサトシだ。

「サトシなら、こうするかなって思っただけで……」
「サトシ?」
「あ、オレの友達でこの前まで一緒に」
「もしかしてリサーチフェローの?」

オレは目を見開いた。顔を上げるとカスミさんも目を見開いていた。
リサーチフェローの役目はサトシと共に終えたことを説明しつつ、いつかサトシが話してくれたことを思い出す。

「もしかしてサトシと一緒に旅をしてた……」
「改めて自己紹介ね。ハナダジムジムリーダー、おてんば人魚のカスミよ、よろしくねゴウくん」

オレは確信した。





「わたしのこと、サトシからはなんて聞いてる?」

ブルーバッジを渡された後、オレはジムの中を案内してもらっていた。ジム内に貼られた水中ショーのポスターを見つけ、コハルに教えてやろうなんて考えていたら、不意にカスミさんからサトシのことを尋ねられた。オレは眉を寄せて考え込む。

「ええっと……、そうですね……?」
「どーせ、サトシのことだから"勝ち気"とか"かわいくないヤツ"とか言ってたでしょ?」

当たっている。ええと、とオレが迷う間に「まったく」とカスミさんは口を尖らせた。

「でも!」

サトシのことを誤解させたままでいる訳にはいかない。そんな不安は不要かもしれないけれど思うより先に口が動いていた。

「多分サトシはカスミさんのこと、尊敬してると思います」
「尊敬? サトシが?」

旅立って一番最初に出会ったトレーナーで、まだまだ未熟だったオレを厳しい言葉で鍛えてくれた。喧嘩もいっぱいしたけど、いつもオレに真っ直ぐにぶつかってくれた。

「大事な仲間で、尊敬してる先輩だ、って」
「……先輩、ねぇ」

オレの方を驚いた表情で見ていたカスミさんは少し遠くを見るように呟く。少し寂しそうに見えて、オレは再び口を開くもすぐに噤んだ。きっとオレが言っていいことじゃない。サトシ自身がカスミさんに言うべきことだ。

「他にももっと言ってたと思いますけど、全部は覚えてなくて……」
「そりゃそうよね。アイツ、長いこと旅してるもんね」
「でも一緒にいて、色々教えてもらいました」

間違いない事実、オレの大事な自慢の親友の話。だからオレは胸を張って答えた。すると今度は、ふーん? とオレのほうをまじまじと眺めてからカスミさんは挑むように笑顔を見せた。

「サトシの後輩ならわたしの後輩。そんな後輩くんに改めてバトルを申し込みたいわ」

バッジ関係なしのリベンジマッチ。サトシなら間違いなく断らない。オレはサトシじゃないけれど、サトシに教えてもらったこと信じているから。

「はい、是非!」

 (了)




2023.1.1 初稿
2023.1.27 加筆修正
ゴウがハナダジムに行ったらしきシーンから思いついたことをつらつら。
カスミがリサーチフェローのこと知ってるのは何かしら連絡をしていたということで…(カスミはポケギア持ってるし…!)

Lemon Ruriboshi.
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