pkmn
「これ、なんて花?」
故郷へ帰ってきたサトシは見慣れた庭に沢山咲く、見慣れない小さな白い花を見つけた。
幾月も前、旅に出た頃はなかったはずだ。
「あ、それは」
サトシが帰ってくると聞いて遊びに来ていたカスミが口を開く。
が、サトシの母のハナコはその口を手で押さえて彼女の言葉を遮った。
「それね、カスミちゃんと蒔いたのよ。可愛いでしょう?」
ハナコはニッコリと笑って答えた。
「ああ! 可愛いな! 小さくて、白くて」
カスミは自分の心臓が跳ねた気がした。
……なんだか、少し嬉しい。
「あらいけない! お鍋の火、消してこなきゃ!」
ハナコは慌てて家に戻っていったが、何処かわざとらしいその足取りは軽く見えた。
「で、名前は?」
サトシは再び尋ねた。今度はカスミの目を見て。
「……か、カスミ草」
目を逸らして答えたカスミの頬は、少し赤みを差しているようだった。
「へー、カスミと同じ名前なのかー」
「で、でも!小さいし、地味だし……」
「カスミは好きじゃないのか? カスミ草」
嫌いじゃない。
嫌う理由も、カスミには無い。
「別に、嫌いじゃないけど……。特別好きでもないわ。……そういうサトシは、どうなのよ?」
聞き返されるのが予定外だったのか、一瞬びっくりしたような顔をしたが、
「俺は好きだぜ! 確かに小さくて地味な花かもしれないけど、こうやってカスミ草はカスミ草らしく咲いて頑張ってるじゃん! 俺は俺らしくトレーナーやって、カスミはカスミらしくジムリーダーの仕事してるみたいにさ!」
そう言うとカスミ草を1本手折り、少し悲しげな顔をしているカスミの髪に挿した。
「そんな顔すんなって!」
サトシは無邪気な笑顔をカスミに向けた。
(了)
2009.3.3 初稿
2013.12.23 加筆修正
2022.2.2 加筆修正
某所にて出していたもの。
Lemon Ruriboshi.
故郷へ帰ってきたサトシは見慣れた庭に沢山咲く、見慣れない小さな白い花を見つけた。
幾月も前、旅に出た頃はなかったはずだ。
「あ、それは」
サトシが帰ってくると聞いて遊びに来ていたカスミが口を開く。
が、サトシの母のハナコはその口を手で押さえて彼女の言葉を遮った。
「それね、カスミちゃんと蒔いたのよ。可愛いでしょう?」
ハナコはニッコリと笑って答えた。
「ああ! 可愛いな! 小さくて、白くて」
カスミは自分の心臓が跳ねた気がした。
……なんだか、少し嬉しい。
「あらいけない! お鍋の火、消してこなきゃ!」
ハナコは慌てて家に戻っていったが、何処かわざとらしいその足取りは軽く見えた。
「で、名前は?」
サトシは再び尋ねた。今度はカスミの目を見て。
「……か、カスミ草」
目を逸らして答えたカスミの頬は、少し赤みを差しているようだった。
「へー、カスミと同じ名前なのかー」
「で、でも!小さいし、地味だし……」
「カスミは好きじゃないのか? カスミ草」
嫌いじゃない。
嫌う理由も、カスミには無い。
「別に、嫌いじゃないけど……。特別好きでもないわ。……そういうサトシは、どうなのよ?」
聞き返されるのが予定外だったのか、一瞬びっくりしたような顔をしたが、
「俺は好きだぜ! 確かに小さくて地味な花かもしれないけど、こうやってカスミ草はカスミ草らしく咲いて頑張ってるじゃん! 俺は俺らしくトレーナーやって、カスミはカスミらしくジムリーダーの仕事してるみたいにさ!」
そう言うとカスミ草を1本手折り、少し悲しげな顔をしているカスミの髪に挿した。
「そんな顔すんなって!」
サトシは無邪気な笑顔をカスミに向けた。
(了)
2009.3.3 初稿
2013.12.23 加筆修正
2022.2.2 加筆修正
某所にて出していたもの。
Lemon Ruriboshi.