城之内夢
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「なぁ、優利羽」
「何?」
「夜景見たくねぇか?」
「これはまた突然ね」
ふぅ、と溜め息をつく。
「にしても、どうして急にそんな」
よくぞ聞いてくれましたとばかりに、ニヤリと笑う城之内。
「すげぇこと思いついたんだ! レッドアイズ・ブラックドラゴンを召喚!」
目の前にリアルなレッドアイズ・ブラックドラゴンが現れると、城之内はそれに跨った。
「早く来いよ、優利羽!」
2人を乗せたレッドアイズ・ブラックドラゴンは、ふわりと宙に浮くと、闇に包まれた上空へと羽ばたく。
目下には、童実野町の夜景が広がり始めた。
「すごい、すごいよ克也!」
「へへん、どんなもんだ!」
町の中心の賑やかなライトアップ、温かな家々の光。
見上げれば、煌めく無数の星々。
夜の闇の中にいるのに、光が沢山に溢れていた。
「あれは、海馬コーポレーションのビル?」
と、指差した時。
白い閃光がこちらに向かって飛んで来るのが見えた。
「ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!?」
「海馬のやつ、同じこと考えてやがったのか!」
「瀬人も背中に乗ってる!」
どんどんこっちに向かって飛んでくる、海馬瀬人とブルーアイズ・ホワイトドラゴン。
「凡骨! 優利羽は俺のだぁー!!」
「やばい、ぶつかるっ!」
スコーン!
「痛っ!」
頭を少し上げると、机に白いチョークが落ちるのが見えた。
「#name2#! 起きろ!」
「へっ!?」
顔を上げると、黒板には見知らぬ数式。失笑が、教室に響いている。
「……あ」
☆
「だからってチョーク投げることないだろ、あのオッサン!」
予備校の帰り道。
今度、黒板消しでも扉に仕掛けてやろうか、なんてそんなくだらない事を私は考えながら歩いていた。
……まあ結局は、居眠りをした自分が悪いんだけれども。
コンビニの灯りが視界に入った。
気分でも変えよう、そう思い、自動ドアを潜ろうとする。
「お疲れ様でしたー!……でっ!」
「痛っ!」
誰かとぶつかった。
「ごめんなさい…! って、克也!」
「優利羽じゃねぇか。すまねぇ」
「大丈夫、私こそごめん。でも、どうしてここに?」
「ここでバイトしてんだよ。今日はもう終わったとこだけどな。優利羽は?」
「予備校の帰りだよ」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ」
☆
「なんだぁ? その夢!」
居眠りした時の夢を話すと、克也は腹を抱えて笑い出した。
「そんなに笑わなくてもいいでしょ!?」
私が考えたんじゃない、夢が勝手に考えたんだ、と私は頬を膨らます。
「悪ィ悪ィ。でもレッドアイズに乗って夜景を見るなんて、なかなか洒落てるじゃねぇか!」
「……そう?」
「ドラゴンの背中に乗って空飛ぶなんてカッケェじゃん!」
「そうだけどさ」
こんなに目を輝かせられると、少し子どもっぽい、なんてとてもじゃないが言えない。
夜道を歩く私たちの会話はそこで途切れて闇に溶けた。
「あーもう! ちょっとついて来い、優利羽!」
突然、腕を引っ張られる。歩きづらい。
「ちょっ、待ってって!」
☆
優利羽を連れて来たのは、俺の住む団地の屋上。
「うわあ……!」
優利羽の顔に笑みが浮かぶ。優利羽を連れてきてよかったと俺も笑顔になる。
「俺の秘密の名所」
「そりゃ、立ち入り禁止なんだから秘密も何も」
「でもいいだろ? 夜景も夜空も綺麗だし!」
優利羽はしばらく夜景を見つめていた。
いや、見とれていたのかもしれない。
「ありがとう、克也!」
小さい頃から変わらない、眩しい程の優利羽の笑顔が俺の体中に響く。
瞬間、何も聞こえなくなる。
沸き上がる衝動のままに優利羽を思いっきり抱き締めた。
ふわりと優利羽の柔らかな香りが鼻をくすぐる。
「克也!?」
「優利羽」
「な、なに?」
突然抱き締められるなんて思ってなかったのだろう。
完全に動揺している。
「好きだ」
同時に冷たい風が強く吹き付けてきた。反射的に抱き締める力が強くなる。
「克也、痛いって」
「わ、悪ィ」
しまった、と思った時にはもう遅かった。後先考えずに告白しちまった……!
☆
城之内は私を離すと顔を伏せ、慌てたように忘れてくれ! と自分の言葉を否定した。
「つか、風のせいで聞こえなかったよな? そうだよな?」
懇願するような目で私を見る。どんなに成長しても、変わらない優しい顔がそこにある。
さて、どうオトシマエをつけてもらおうか?
「克也」
「な、なんだよ」
私は背伸びして、自らの口を克也の口に重ねた。
その言葉を、夜の闇に溶かしてしまってたまるか。私だって、ずっと好きだったんだから。
(了)
2010.1.25(MON) 初稿
2021.2.25 加筆修正
2022.1.31 加筆修正
「非公式遊戯王ドリーム企画」参加作品
お題:“黒”→“夜空”“夜景”“真紅眼の黒龍”“闇”
海馬を絡ませたのは個人趣味、本命は城之内。
そして、初稿が城之内の誕生日にアップなのは偶然。
城之内君、誕生日おめでとう!!
Lemon Ruriboshi.
「何?」
「夜景見たくねぇか?」
「これはまた突然ね」
ふぅ、と溜め息をつく。
「にしても、どうして急にそんな」
よくぞ聞いてくれましたとばかりに、ニヤリと笑う城之内。
「すげぇこと思いついたんだ! レッドアイズ・ブラックドラゴンを召喚!」
目の前にリアルなレッドアイズ・ブラックドラゴンが現れると、城之内はそれに跨った。
「早く来いよ、優利羽!」
2人を乗せたレッドアイズ・ブラックドラゴンは、ふわりと宙に浮くと、闇に包まれた上空へと羽ばたく。
目下には、童実野町の夜景が広がり始めた。
「すごい、すごいよ克也!」
「へへん、どんなもんだ!」
町の中心の賑やかなライトアップ、温かな家々の光。
見上げれば、煌めく無数の星々。
夜の闇の中にいるのに、光が沢山に溢れていた。
「あれは、海馬コーポレーションのビル?」
と、指差した時。
白い閃光がこちらに向かって飛んで来るのが見えた。
「ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!?」
「海馬のやつ、同じこと考えてやがったのか!」
「瀬人も背中に乗ってる!」
どんどんこっちに向かって飛んでくる、海馬瀬人とブルーアイズ・ホワイトドラゴン。
「凡骨! 優利羽は俺のだぁー!!」
「やばい、ぶつかるっ!」
スコーン!
「痛っ!」
頭を少し上げると、机に白いチョークが落ちるのが見えた。
「#name2#! 起きろ!」
「へっ!?」
顔を上げると、黒板には見知らぬ数式。失笑が、教室に響いている。
「……あ」
☆
「だからってチョーク投げることないだろ、あのオッサン!」
予備校の帰り道。
今度、黒板消しでも扉に仕掛けてやろうか、なんてそんなくだらない事を私は考えながら歩いていた。
……まあ結局は、居眠りをした自分が悪いんだけれども。
コンビニの灯りが視界に入った。
気分でも変えよう、そう思い、自動ドアを潜ろうとする。
「お疲れ様でしたー!……でっ!」
「痛っ!」
誰かとぶつかった。
「ごめんなさい…! って、克也!」
「優利羽じゃねぇか。すまねぇ」
「大丈夫、私こそごめん。でも、どうしてここに?」
「ここでバイトしてんだよ。今日はもう終わったとこだけどな。優利羽は?」
「予備校の帰りだよ」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ」
☆
「なんだぁ? その夢!」
居眠りした時の夢を話すと、克也は腹を抱えて笑い出した。
「そんなに笑わなくてもいいでしょ!?」
私が考えたんじゃない、夢が勝手に考えたんだ、と私は頬を膨らます。
「悪ィ悪ィ。でもレッドアイズに乗って夜景を見るなんて、なかなか洒落てるじゃねぇか!」
「……そう?」
「ドラゴンの背中に乗って空飛ぶなんてカッケェじゃん!」
「そうだけどさ」
こんなに目を輝かせられると、少し子どもっぽい、なんてとてもじゃないが言えない。
夜道を歩く私たちの会話はそこで途切れて闇に溶けた。
「あーもう! ちょっとついて来い、優利羽!」
突然、腕を引っ張られる。歩きづらい。
「ちょっ、待ってって!」
☆
優利羽を連れて来たのは、俺の住む団地の屋上。
「うわあ……!」
優利羽の顔に笑みが浮かぶ。優利羽を連れてきてよかったと俺も笑顔になる。
「俺の秘密の名所」
「そりゃ、立ち入り禁止なんだから秘密も何も」
「でもいいだろ? 夜景も夜空も綺麗だし!」
優利羽はしばらく夜景を見つめていた。
いや、見とれていたのかもしれない。
「ありがとう、克也!」
小さい頃から変わらない、眩しい程の優利羽の笑顔が俺の体中に響く。
瞬間、何も聞こえなくなる。
沸き上がる衝動のままに優利羽を思いっきり抱き締めた。
ふわりと優利羽の柔らかな香りが鼻をくすぐる。
「克也!?」
「優利羽」
「な、なに?」
突然抱き締められるなんて思ってなかったのだろう。
完全に動揺している。
「好きだ」
同時に冷たい風が強く吹き付けてきた。反射的に抱き締める力が強くなる。
「克也、痛いって」
「わ、悪ィ」
しまった、と思った時にはもう遅かった。後先考えずに告白しちまった……!
☆
城之内は私を離すと顔を伏せ、慌てたように忘れてくれ! と自分の言葉を否定した。
「つか、風のせいで聞こえなかったよな? そうだよな?」
懇願するような目で私を見る。どんなに成長しても、変わらない優しい顔がそこにある。
さて、どうオトシマエをつけてもらおうか?
「克也」
「な、なんだよ」
私は背伸びして、自らの口を克也の口に重ねた。
その言葉を、夜の闇に溶かしてしまってたまるか。私だって、ずっと好きだったんだから。
(了)
2010.1.25(MON) 初稿
2021.2.25 加筆修正
2022.1.31 加筆修正
「非公式遊戯王ドリーム企画」参加作品
お題:“黒”→“夜空”“夜景”“真紅眼の黒龍”“闇”
海馬を絡ませたのは個人趣味、本命は城之内。
そして、初稿が城之内の誕生日にアップなのは偶然。
城之内君、誕生日おめでとう!!
Lemon Ruriboshi.