「トリック・オア・トリート！　優利羽！」
「は……？」

クラスのやつに「２年の城之内が呼んでる」って言われて、廊下へ飛んでいった私が馬鹿だった。

「は？　じゃねえよ！　トリック・オア・トリート！　今日はハロウィンだぜ？」

クラスに貼られたカレンダーを見る。
確かに今日は１０月３１日、ハロウィン。

「久しぶりに来たと思えば……」

克也とは家が近くて長い付き合い、まあいわゆる幼馴染みなんだけれども。
遠い親戚より近くの他人。
困った時はいつも、お互い助け合ってきた。
だから、今日もそういうことなんだろうと思ったのに。
『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ～』なんて騒ぐお祭りのために来たなんて。

「……一瞬でも心配した私が馬鹿だった」
「心配？　俺を？」
「当たり前でしょ！？　最近全っっ然顔見せないし、突然来るから何事かと――！」

克也はニヤニヤしながら、私を見ていた。

「ほぉ～、心配ねぇ……。じゃあ嬉しいか？　俺が来て」
「馬鹿！　別に一言も嬉しいなんて言ってないから！」

……そういいながら、嬉しかったことを心の内では認める。

「でも、お菓子なんか持って来てないわよ？　アンタみたいに子どもっぽく、お菓子ねだる奴が来るなんて思ってなかったんだから」
「俺は菓子なんかいらねえよ！　強ぇカードねだってんだ！」
「菓子ねだる子どもよりタチが悪いわ！」

だいたい、私はデュエルはしていない。
克也の影響でなんとなく買ったから少しは持ってるけど、コイツが思うようなカードは持ってない。持ってるはずがない。

「何もないなら……、イタズラするぜ？」

ヤバい、口元が笑ってる。
ロクなこと考えてないなコイツは……！

「……いい加減にせんかあ！！」

足が出た。
それは克也の腹に命中する。

「何すん」

お腹を抱えてオーバーリアクションを取るがそんなに強くは蹴り入れてない、ハズ。その証拠に顔が少し笑っている。
こいつ、相変わらずだ。
私はため息をつく。

「学校終わったら」
「へ？」
「ウチに来なよ。……“トリート”あげるから」

悪戯かお菓子か。


**おまけ**

「な、なあ、優利羽、その“トリート”って、つまり……？」
「お菓子焼いてあげるよ。あ、そうだ！　静香ちゃんも連れておいでよ！」
「……まあいいけどよ」
「何か問題ある？」

　（了）

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2009.10.16 初稿
2013.12.23 加筆修正
2022.1.31 加筆修正
2022.2.23 加筆修正

初の城之内夢。
ハロウィン販促に釣られた。
2022に城之内呼びから克也呼びに変更…

Lemon Ruriboshi.