Phototaxis
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鉄塔広場に来た。
前から狙ってはいたけれど、思うよりもここの日差しが良すぎてハシゴなんて触れたもんじゃないから寒くなるのを待っていたのだ。
季節は巡ってあっという間に木枯らしの吹きすさぶ秋。
風に体を煽られながら鉄塔広場の不安定な鉄梯子を上る。ローファーがかつんかつん音を立てて、このリズムを壊したら真っ逆さまに落ちてしまうんじゃないかなんて錯覚をおぼえる。
どう考えても危ない。これ子供が上れないようにしたほうがいいんじゃなかろうか…
怖いと思う思考をなんとか振り切って、ようやく中間の足場に足をつけた。
ここからさらにもう一段登れるけれど、すでに結構な高さがある。
よくアニメやゲームで見ていたのはそのもう一段先だなぁ、なんてイナズママークを見つめる。
ビュオオオ、風が強い。
煽られて振り返れば夕日の稲妻町が見える。
「おぉお…これは絶景」
いい眺めだ、たしかにここはすごく素敵な場所。考え事をするにも、1人になるにも、それからいいことがあった1日を締めくくるのにもうってつけだ。
ぶわ、一層強い風が吹いた。
「……あれっ」
「…は?」
誰かの声がした。
振り返って見上げて再び稲妻マーク。
そこに、嬉しそうな顔をしたバンダナの人が居た。
認識した途端頬が引き攣るのを感じる。
ジーザス。つんだ。終わった。
少なくとも見上げなければ良かった。認知しなければ良かった。
「よっ!君、雷門中だよな!俺は円堂守!君は?!」
そこにいたのはわれらが主人公円堂守だった。
主人公とエンカウントしてしまったなんてこったい!
今日は部活の日じゃないの?染岡今日もあるって言ってたのに!!
なんでここに居るんだよお前ー!
「おお…神よ……」
「んー?!なんだって?ごめん聞こえなかった!待ってろ、今そっち降りるから!」
そして円堂の姿が一瞬消えた。
その隙に私は自分でも驚くほどの速さで鉄梯子に足をかけ、三段飛ばしぐらいの勢いで梯子を降りた。
だ、大丈夫あの距離じゃ顔まで見えてないはず、うん、逃げろ私、私は誰とも会ってない!
地球にはこんな言葉があるでしょ、逃げるにしかず!!
階段を折りきった私は死角になりそうな所に身体を滑り込ませる。
少しして「あっれー?おかしいな…誰かいたと思ったんだけど」と言いながら円堂が下りてくる。
私は息を殺す、そして再びカツンカツン、昇っていく音が聞こえて静寂。
「行った…?」
そろりと顔を出す、誰も居ないことを確認して私は逃げるように鉄塔広場を後にした。
彼には悪いが、ダントツ要注意人物なのである。
私が、私を守るためにも彼と付き合うのは避けたい、そう心の底から思っている。
秋の風がとても冷たい。
そろそろマフラー出さないと凍えて死んでしまいそうだった。
私はしばらくその冷たさに震えて、それからゆっくりと細道を使って裏山を下った。
次の日学校で円堂とすれ違う。
向こうがあからさまに「あれ?」って顔をしたので目線も合わせず教室に逃げ込んだ。
「凪木さん、人でも殺したみたいな顔してるけど?」
「マックス君……気のせいだよ」
とりま、もう二度と行かない。