Phototaxis
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明日はいよいよ世宇子戦だ。
図書委員の仕事を終えて帰る途中、私は春奈ちゃんと遭遇した。
何故か気まずそうな顔をする春奈ちゃんに首をかしげる。
少し黙ったあと、春奈ちゃんが「あの少しいいですか」といつかのように呟いたから、私も「いいよ」と頷いた。
「私、先輩のこと誤解してました」
「…」
「ごめんなさい」
そう言って頭を下げる春奈ちゃん。
私は瞬きをして、これまで私が春奈ちゃんにしてきたことを思い出す。誘いを冷たく断った。
最後まで一緒に居れなかった。
私は春奈ちゃんから嫌われても仕方ないようなことをしてきたというのに。
「…私こそごめんなさい。…酷いことした」
「え?先輩が?いつですか?」
「春奈ちゃんがせっかく声をかけてくれたのに、すごい冷たく返したりしたよ。…本当にゴメン」
「…いいえ、それについては先輩から事情を聞いて納得したんです。」
「?」
そよそよと窓から風が入り込んでくる。
今日はそんなに風も強くないらしい。
日差しが強いから比較的暑い日だ。
「私、思ったんです。それが先輩なんだなぁって」
「え?」
「不器用で、分かりにくくて、すごい遠慮しいなのが先輩なんですよ」
「え?えぇ?」
「私には分からない事だらけなんです。」
先輩のことも。よくよく考えたら先輩と殆ど話した事無くて、そりゃあ分からないですよね。
にこり、と私が画面越しに見ていた笑顔を浮かべた春奈ちゃん。わからない、わからない、…そう、分からない事だらけだ。
私だって春奈ちゃんのこと『イナズマイレブン』の春奈ちゃんしか知らない。
「だから、もっと先輩の事知りたいんです。先輩がどんなことを考えて、何を見て、何をするのか」
「…」
「私凪木先輩のこと好きになりたいんです。もっと先輩と居たいんです」
「…そ、れって」
「あ、なんかすごい恥ずかしい事言っちゃいました」
でも本気ですよ、私。
先輩の親友になれるくらい先輩と一緒にいますから。春奈ちゃんの髪も笑顔も香りも声も全部風に乗って私の元まで届く。
名前の通り春のような暖かさと笑顔で春奈ちゃんは笑っている。
「私だって」
「?」
「春奈ちゃんがもっと話して笑って、それからいっぱい頼ってくれて、…お互いの考えてる事だって分かるくらいに仲良くなりたい」
「せ、んぱ」
「だって、私、ずっと前から…ずっと、本当にずっと前から春奈ちゃんのこと、大好きだったから」
「っ」
私の顔は今きっと赤い。
けれど春奈ちゃんだって赤いからお相子だ。
風が葉を揺らす音が聞こえてくる。
さわさわ、細くて弱いけれど確かな音だった。
そして、どちらともなく笑う。
恥ずかしいですね、すっごく。
うん、ほんと、すっごい恥ずかしい、春奈ちゃん顔真っ赤だよ
凪木先輩だって赤いですよ
また笑う。
きっと私と春奈ちゃんは今ここから本当に始まったんだと思う。
ドキドキと五月蝿い心臓はきっと嬉しいからこんなに五月蝿いんだと思えた。