Phototaxis
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「凪木」
「鬼道」
放課後の教室に鬼道がいて足を止めた。
あれ?部活は?と聞けば日直でな。と返事。
教室に踏み込めば、中には鬼道しか残ってなくて、黒板や机が綺麗に整頓されていた。
「一人だったの?」
「いや、もう一人いたが先に送り出した。」
机の上の日誌を覗き込めば「鬼道有人」のとなりに「木野秋」と書いてある。
無茶する奴らばかりだからな、先に行ってもらっている。とのこと。
(鬼道だって十分無茶しいなんだけどね、私からすれば)
「…そういえばこうして2人きりになるのも随分久しぶりだな」
「そういえば…確かに。世宇子戦以来?」
「ああそうだな」
そして無言。申し訳なさに少し俯く。
鬼道は鬼道でゴーグルの下で何を考えているのか良く分からない。
外から元気なサッカー部の声がしている。
「…凪木」
「…ん…?」
「一緒に戦ってくれること、感謝する」
「…なにそれ」
苦笑しながら返せば鬼道は口端を持ち上げていた。
夕日に顔が染まっていて教室の中がとても赤い。鬼道のゴーグルには赤い教室とそれから赤く染まった私が映っている。
返答にちょっと悩んで私は「意味わかんないよ」と返した。
「凪木はずっと雷門を応援していたな」
「…」
「こうして直接凪木からの応援を貰うのは、これが始めて…になるな」
「…」
世宇子戦の時はそんな状態じゃなかったからな、と冗談めいて言う鬼道。
そんな自虐的な言葉に反論しようと思ったけど言葉が見つからなくて口を閉ざす。
鬼道は私を見て、いいんだ、と頭を振った。
「帝国が負けたのも、俺が出れなかったのも事実だからな」
「でも」
「…だからこそ、次の試合負けるわけには行かないんだ」
「…!」
静かで強い声。
「帝国イレブンの屈辱を晴らすだけじゃなく、俺は俺を許したい」
「…」
「あの日、何も出来ずベンチから見ていることしかできなかった自分を許したいんだ」
「っ…」
「…一応俺も、お前の気持ちが分かっているつもりなんだがな」
だから、凪木には感謝しているんだ。
またあの場所に来てくれることに。
一瞬ゴーグルの奥の瞳が見えた気がして私は鬼道から目を逸らした。恥ずかしくて彼を直視できない。
そんな私に鬼道はくくく、と喉で笑った。
「…手伝うから、早く部活行ってきなよ。…勝つんでしょ?世宇子中に」
「ああ」
当たり前だ、と笑う鬼道に私は赤い顔をごまかすように笑って返した。