Phototaxis
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「あ、凪木さん。」
「?…あ、一之瀬君」
「こんにちは」
図書室のカウンターの中で本を読んでいたら、一之瀬が笑って立っていた。
こんにちは、と挨拶を返して読んでいた本を閉じる。
「秋たちから聞いたよ」
「え?」
「凪木さん、次の試合ベンチにくるんでしょ?」
「…うん。」
本のバーコードを読み取ってパソコン画面と照らし合わせる。彼が借りる本はなんというか、やっぱりというか、サッカー関係の本。
一週間です、と事務的に返して本を手渡す。
「俺あまり凪木さんのこと知らないけど、円堂や土門を見ていて感じるんだ」
「なにを?」
「…凪木さんならきっと大丈夫だって」
「……」
俺もね、と一之瀬は本の表紙を撫でて小さく笑う。
落ちてきた前髪を指で払うと、私は一之瀬の顔を思わず凝視した。
だって、一之瀬がすごく大人っぽい雰囲気で笑うから。
「色々あって、すごいどん底に居た時、色んなものが怖かった。人の視線とか、囁き声とか。」
「……」
「サッカーだって怖かったんだよ」
へへ、と笑う一之瀬。
何を思い出しているのかその目はすごく優しい色をしている気がする。一之瀬のふわふわとしていて掴み辛い雰囲気がこの辺りを包んでいた。
雰囲気に飲まれた私は何もいえない。
なんで、私のことを知ってるんだろう。
「…この間円堂と鉄塔広場にいたの見ちゃったんだ、」
表情で通じたのかごめんね、と一之瀬は笑う。
人懐っこい笑顔はどこか円堂にも重なる。
「俺に秋や土門、それからアメリカのチームの皆がいるようにさ、凪木さんにも雷門イレブンの皆がいるんだよ」
「うん…」
「もちろん俺もね」
だからさと、一之瀬は私の手を取った。
「次の試合、よろしくね」
「…こちらこそ」