Phototaxis
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病室から出てきた看護師さんとすれ違いに入れば、上体を起こしていた源田と目が合った。
お邪魔します、といえば佐久間も身体を起こしてこっちを見た。
「凪木、」
「きてくれたのか」
「源田君、佐久間君、今日はお土産持ってきたんだよ」
お菓子の箱を取り出せば、佐久間が「おおっ」と嬉しそうな声を上げた。
うん、やっぱり花にしなくて正解だった。
包装をあけて好きなのどうぞと差し出せば、佐久間はちょっと悩んでココア味のものを持っていった。
「源田君は?」
「そうだな…イチゴはあるか?」
「あるよー、はい。」
「ありがとう。」
2人が袋をあけているのを眺めながら病室を見回す。
あれだけ沢山居た帝国イレブンも、もうみんな通院になっていて、病室の中はすっからかんだった。
逆に言えばこの二人はそれだけ傷ついたって事で。
「…凪木?」
「え?」
「お前も食べろよ」
佐久間にバニラ味を投げ渡された。慌ててそれを受け取って、封を開ける。甘い匂い。
あ、美味しい。
「…美味しいね、これ」
「ああ、どこの店だ?」
源田が箱にプリントされた店の名前を見ながら聞いてきた。
雷門町に新しく出来たお店なんだよと言えば、源田は今度行ってみたいなと零してそれから自分の発言に固まった。
「…源田君、甘いもの好き?」
「……」
「っぷくく、源田は部一番の甘党なんだよ…!」
「そうなんだ…」
私と佐久間の視線を受けて源田は顔を逸らした。頬がほんのり赤い。
それにまた佐久間が爆笑する。
目じりに涙が浮かぶほど爆笑したあと、佐久間は退院したら買いに行くかといった。
「あ、じゃあ私案内するよ」
「いいのか?」
「うん、結構入り組んだところにあるから、雷門町初めてだと迷うかも。」
商店街から少し離れた抜け道沿いに出来た店だった。
虎丸が使っているとは思わなかったけれど、交通量も少ないし、たしかにあそこの道を使えば早く移動できるかもしれない。
なんて思いを馳せていたら、源田が頬を掻きながら「じゃあ、退院したら頼む」と弱弱しい声で言ったものだから、ついに私も噴出してしまった。
「凪木、」
「ん?」
「元気になってよかったよ」
源田の言葉に、私はようやくそこで彼らにも気を使われていたのだと気付いた。
そうか、佐久間も源田も、……私が考えこみすぎないように明るくふるまってくれていたんだ、と思った。
ガン、と頭を殴られたみたいな衝撃があって、それから申し訳なさが出てくる。
「え、と、あの…ごめ」
「ごめん、はナシな。」
「え」
「そしたらお前が病人の前でウジウジしてたことも水に流してやるよ」
「……わか、った」
「よし」
佐久間はそういうと満足そうにうなずいて、それから2個目のお菓子に手を伸ばした。
敵わないなあと笑う私に、源田は「そうだろう」と嬉しそうに頷いて見せた。