Phototaxis
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
04 大気圏を飛び越えて
じっと店先に並べられたお菓子を眺めていたら、「お姉さん!」と元気な声がした。
声のしたほうに視線を向けると、出前の箱を持った虎丸がかけてきている。
「こんにちは虎丸君。」
「お姉さんお久しぶりです!」
にぱっと笑う虎丸。
相変わらず元気だなぁと笑顔を返せば、虎丸はちょっとキョトンとして首をかしげる。
「…なんだかお姉さん雰囲気ちょっとだけ変わりましたね」
この間すれ違った宮坂にも同じことを言われた。
…なんだか、あれ以降すごく毎日が楽しい。
ちょっとしたことが幸せになる。
今だって虎丸がいるのがすごく嬉しいのだ。
「皆言うんだけど、…変かな?」
「!ぜんぜん!なんか俺今のお姉さんの雰囲気すごいいいなって思います!」
「あ、はは…ちょっと照れるなぁ、ありがとう」
ニコニコと虎丸君。
そういえば、とその手に握られている箱に視線を移した。
今出前中?と聞けば届けてきたところです!と返事。
「弟はちゃんと働いてる?」
「ええ!凪木にはすごく助けてもらってます」
弟は学校が終わると体力づくりもかねて虎丸の家を手伝うようになっていた。
体力筋力バランス力すげーつくんだよ!と嬉しそうに言ってたことを思い出す。
いつもありがとうございますと頭を下げた虎丸に、こちらこそサッカー教えてくれてありがとうと返した。
「お姉さんは買い物中ですか?」
「うん、お見舞いを買おうと思って。…友達が入院してるからさ」
「そうなんですか…」
「虎丸君が入院してたとしたら、お花とお菓子どっちが嬉しい?」
「お菓子です」
「だよねぇ」
即答。まあ私もお菓子のほうが嬉しいし。
皆は成長期だしきっとこっちのほうが喜ぶだろうなと思って箱入りのお菓子と、それから子袋のものを一つ。
箱入りのものを包んでもらっている間に、虎丸に子袋を渡した。
「え?」
「これ、弟の授業料だと思ってよ」
「ええええそんな悪いですよ!」
「じゃあ選んでもらった御礼ってことでどう?」
「…本当にいいんですか?」
「うん、」
「っありがとうございます!!」
勢い良く頭を下げた虎丸は、きっちり90度まで腰を曲げた後、満面の笑みでお菓子を受け取ってくれた。
うっうわぁぁ可愛い!!
この笑顔が見れただけで私だって十分に元気を貰ってしまっている。
デレデレしていたら店員さんに紙袋を渡された。
ありがとうございましたー!店員さんの声を背後で聞きながら店を出る。
「おっおおおお姉さん俺これ大事にします!」
「え?うん、早めに食べてね?」
「はい!!じゃっ、じゃあ俺はこれで失礼します!!!」
そして風丸も驚きのスピードで虎丸はあっと言う間に見えなくなってしまった。
いやぁいい笑顔貰っちゃったなぁと思い出しながら、私も帝国イレブンの居る病院へ向けて歩き出した。
(しかし虎丸君いつもほっぺ赤くて可愛いんだよなぁあ)