Phototaxis
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私は、木戸川の試合を見るためにスタジアムに居た。
客席から、フォーメーションにバラける両校を眺める。
(木戸川は…武方3兄弟の3TOP…それから西垣君が右バックサイドにいる。…雷門は…そうか、一之瀬がきたから、半田ベンチスタートだ…)
雷門も豪炎寺と染岡のFWとMF中心にDF含めて攻撃型のサッカーをするけれど、木戸川も攻撃的なサッカーが特徴だったはず。
武方兄弟以外にも強い選手が育っているチーム。
(雷門なら、大丈夫。勝てる。)
マックスがこっちを見ていたので小さく手を振ると満足そうに笑って正面を見据えた。
…本当は今回の試合も、マックスはベンチに誘ってくれていた。
けれど、まだ私は3人以外の雷門イレブンにはちゃんと謝れていない。
だから断った。
ピピーーッ!
大きく長く笛が鳴り、試合が始まった。
木戸川からのキックオフ、攻めあがる武方3兄弟に、染岡のスライディング。
しかしそれは交わされる。
「上手い…!」
さすが名門というか。
安定したバランスで豪炎寺も抜き、プレスに入ったマックス達をパスで抜く。
「バックトルネード!!」
「爆裂パンチ!!」
円堂の必殺技が推し負けて、木戸川が先制を決めた。
再び木戸川の猛攻、ゴッドハンドでそれを止める円堂。
(…ゴッドハンド、強くなってる)
鬼道たちにマークされ、パスカットされたのを見て木戸川の監督が「持ち込め!」と指示を出した。
「バックトルネード!」
しかしこれは、爆裂パンチで防ぐ。
守備力が以前とは比べ物にならないほど上がっていた。
木戸川の生徒が雷門を抜く。
武方3兄弟ばかり推されているけれど、どの選手も等しく安定した強さを持っている。
(あの監督さんすごい…ええと、二階堂さん)
視線を落とせば、二階堂監督はじっとフィールドを見ていた。
雷門は木戸川にボールを奪われ、攻め込めずにいる。
攻め込むたびに円堂が、DFがそれを弾いて武方兄弟を焦らせていることも解かっている。
武方兄弟たちが孤立するのにはそう時間はかからなかった。
前に出すぎたFWにパスが繋がらない。
尚の事焦る武方三兄弟。
そして、鬼道と一之瀬の作戦が決行される。
「トライ・ペガサス!!」
鋭いシュートが、ゴールに突き刺さる。
1-1で、同点に追いついたと同時に前半戦が終了した。
「…ふぅ…」
前のめりになりすぎていた姿勢を戻す。
久しぶりの観戦で熱が入りすぎてるのかもしれない。心臓がバクバクと五月蝿い。
ああでも、やっぱり
「雷門、大好きだ。」
「…お前さんもか」
「えっ」
顔を上げるとそこには、鬼瓦さんが楽しそうに笑っていた。
びっくりして瞬きをしていると、鬼瓦さんがクツクツと声を押し殺して笑う。
「やっぱり誰かと観戦したくなっちまった。…隣いいか?」
「えっ、…はい」
「俺は鬼瓦っつーもンだ」
初めましてと握手を求められたので、私も名乗りながら手を差し出した。
けれど、鬼瓦さんは笑って「ああ、知ってる、凪木だろ?」と言う。
(えっ、私鬼瓦さんとは面識ないはず…だよね)
眉間に皺を寄せた私に鬼瓦さんはまた声を上げて笑った。
「お前さん、以前帝国学園との試合の時にベンチに居ただろう?」
「…ええ」
「そのときのゴタゴタで怪我をした女子生徒が居たと聞いたからな」
それで知ってたんだと鬼瓦さんは笑った。
ああそうか、地区大会の決勝戦。鬼瓦さんは私の眼をじっと見た。
「怪我はもう良いんだな」
「はい、おかげさまで。…帝国イレブンのみんなが良いお医者さんを紹介してくれました」
「そうかそうか」
鬼瓦さんはとても機嫌が良かった。
(そうだよね、たしか鬼瓦さんって伝説の雷門イレブンのファンなんだから)
もちろん今、快進撃を続ける雷門イレブンのファンでもある。
「お前さんサッカー大好きだろう?」
「ええ。サッカーが…雷門イレブンのサッカーが大好きです。」
胸を張って今なら言える。
これからも応援し続けます。皆がサッカーを続ける限り、ずっと。
私の返事に鬼瓦さんは嬉しそうに笑った。
「そうか、なら俺と一緒だな。あいつらのこと、良く見ててやってくれ」
「…はい!」
笑顔で返事を返したところで後半戦を告げるホイッスルが大きく鳴り響いた。