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凪木は学校に来なくなった。
ぼんやりと染岡は空席を見つめる。
帝国学園が負けて、3日が過ぎていた。
(あいつ…どうしたんだ)
最近様子がおかしいとは思っていた。
以前から、自ら離れいていくようなそぶりを見せていたが、帝国戦以来、向こうから話しかけてくることが無くなった。
こちらから声をかけても短く切り上げられて終わる。
そしてついに3日前、学校を休んだ。
それから一度も見ていない。
(…風邪…じゃねえよな)
教師達は風邪だといっていた。けどそんなのどうとだって言える。
最後に見たときの顔を思い出す。
いつもと変わらず寝ていたと思う。
授業の半分以上を睡眠に費やしている凪木。教師陣ももう起こすことを諦めていた。
いつもと変わった様子はなかったように思う。
(じゃあ帝国で何かあった?)
試合の後、いつも知らない間に帰っている凪木。
そして翌朝の教室で昨日はお疲れ様と声をかけてくれる凪木。
帝国戦のあともそうだった。
いつもより楽しそうに「染岡、昨日はお疲れ様」と…
普段と何も変わったことは…
「…染岡ってば」
「あ?」
「何ぼーっとしてんだよ、授業終わったぞ」
「…は?」
眉を吊り上げた半田に言われて教室を見渡せば、教室にはもうまばらにしか人が残っていなかった。
マックスが隣に座って頬杖をつきながらぼやく。
「どーせ染岡ってば凪木のこと考えてたんでしょ」
「…どう考えてもおかしいじゃねえか」
「風邪ってせんせー言ってたじゃん」
「だけど!」
「いや、たしかに最近凪木おかしかったよ、マックス」
半田の言葉に視線だけ投げかけるマックス。
そしてため息をついた。
「おかしかったって?余所余所しかったってこと?凪木は前からああだよ」
「いや、違う、凪木はもっと、…もっと」
そこで言葉を切って言いよどむ半田。
もっとなに?と視線だけでマックスが問うと半田は俯く。
「染岡は?凪木がおかしいって言ったけど、じゃあ凪木のいつもってどんなの?」
それは、……?
凪木の、いつも?
言葉に詰まった自分に驚いた。
凪木はいつも、何をしている?
何を考えて、どこで何をしている、あいつのいつもって、なんだ?
黙りこくる二人にマックスはもう一度深くため息をついた。
「そういうこと。凪木のいつもなんて分からないんだよ」
「……けど」
「多分ね、2人が思ってる以上に凪木のこと知らないよ。もちろん僕もね」
しん、と静まり返る。
だからそんなこと考えてるなら、部活してたほうが有意義だと思うけどねーと机に垂れながらマックスがぼやいた。
その言い方にイスをひっくり返して勢いよく立ち上がる。
「マックス!お前!」
「僕なんも間違った事言ってないよ、そうこうしてる間に試合になるんだから。…今はそっちに集中したほうがいいでしょ」
「…ちっ」
「染岡…マックスも…」
「ほらほら、皆待ってるから早く部活いこ」
マックスの言い分は最もだった。
もうすぐ千羽山中との試合だ。
敗北した帝国も気になるが、それより自分達はちぐはぐしてしまったプレイをどうにかしなくてはいけない。
もう一度凪木の席を見て、机の中身を勢いよく引き出した。
そんな染岡と、間でどうしていいか分からなさそうな顔をしている半田を、マックスはいつもの調子で見返した。
(僕だってどうしたらいいかわかんないってば)
ポケットから携帯を取り出す。
着信もメールの受信もない。
(はぁやっとそこまで来てたのに)
センター問い合わせを押して、受信がないことを確認するとマックスは深いため息をついて、鞄の中へ乱暴に放り投げた。
(せめてメールくらい返せ馬鹿凪木)