Phototaxis
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
フィールドには、神がいた。
綺麗な顔をした、神だった。
「リフレクトバスター!!」
白を基調としたユニフォームがとても似合っていた。
「ダッシュストーム!」
使う必殺技はどれも美しく完成されていた。
「ディバインアロー!」
ゴミ掃除なんてものじゃない。
ただただ、魅せられて、蹴散らされていく。
保健室で悪かったと頭を下げてくれた皆が。
大きな手で握り返してくれたゴールキーパーが。
照れたように笑っていた参謀が、吹き飛ばされて弾き飛ばされて。
試合中だというのに、しんと静まり返っていた。
あまりの強さに。あまりに強大すぎる力に。
「…ヘブンズタイム」
凛とした神の声だけが、呻く選手の声だけが聞こえる異様な空間。
吐気がする。
「…せっかくだから、みせてあげるよ」
そういって神は美しく微笑んだ。
舞い上がるのを視線だけで追いかける。
ふわりと、羽が舞う。
私は、忘れていた。この試合は。
微笑を浮かべたまま、神は歌う。
「…ゴッドノウズ。」
凶悪な力が、帝国学園のゴールをひしゃげて吹き飛ばす。とめようとしたキーパーもろとも。
ぐきゃり。
嫌な音がスタジアムに響き渡ってそれから爆音。
フィールドとスタンドの壁に、おおきく、おおきくゴールがめり込んだ。
地面をこれでもかと抉りつけて、神は地上に降りた。
うつくしい髪が揺れて、すべてが地に伏せて静まり返ったフィールドで、彼はただ一人当たり前のように立っていた。
私は、忘れていた。
彼らは酷い怪我を負うことを。
……いいや、忘れていたのではない。
思い出そうとすら、しなかった。
「こ、これ以上は試合続行不能と判断し!世宇子中の勝利!!」
ピ、ピ、ピーーーーーッ!!
静まり返ったスタジアムにその笛の音はやたら大きく響いた。
無名の中学、世宇子中と、40年間無敗の帝国学園は10-0で世宇子中が勝利した。
私は、目をそらせない。
息が、できない。
いつの間に、こんなに近くにきてしまったのか。
担架が帝国イレブンを運んでいくのを一瞥して、神々は悠々とベンチの奥に消えていく。
どうして、私は。
思い出そうともしなかったのか。
息ができなくなって、私はそこに立ち尽くす他なかった。