Phototaxis
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帝国戦が始まる。
円堂達が緊張した面持ちで入場してくる。
鬼道は小さく首を動かして辺りを見回している。
(気づいたかな、鬼道)
私は天井を見上げる。
アップの時に宍戸君にボルトが落ちてきた。
それは宍戸君にも他の子たちにも幸いあたることなく済んだ。
あとは罠に気づくヒントとなってくれるはず。
そんな事を考えながら見上げた天井は高くて暗く、そこに何があるかなんてちっともわからない。
(…大丈夫、だよね)
選手が挨拶をする。
何かを耳打ちする鬼道が見えた。
気づけた、んだろうか。これで間違ってたらどうする?
そもそも、鉄骨の数が多くて当たったらどうする?
(どう、しよう…本当に大丈夫…かな…)
脳裏に最初の帝国戦が蘇る。
ボロボロで倒れるみんな。不適に笑う声。
こ、わい。
「…凪木ちゃん?」
「秋ちゃん…?」
「大丈夫?顔色あんまり良くないけど」
「だ、大丈夫。」
雷門イレブンからのキックオフ。
染岡がボールを持ってセンターマークにつく。
もう一度天井を見上げる。ドキドキドキ心音が五月蝿い。
角馬くんの声がする。
「フットボールフロンティア地区大会決勝!雷門中対帝国学園の開始です!!」
ピーーーッ!
笛の音が鳴り響く。
がらん、
金属音に顔を上げる。
がらがら
連続する。
風を切る音が聞こえる。
巨大な鉄の塊を目視する。
直感だった。
あ、れ、あの位置だと染岡が
何も考えずベンチを飛び出す。
だめ、間に合わない
「ッ染岡下がれぇえええっ!!」
声を張り上げる、のと
ズドン!
そこに鉄骨が落下するのは殆ど同時だった。
もうもうと土煙が立ち込めて、2本、3本、もっと大量の鉄骨が突き刺さる。
なにもみえない。
サイドライン手前まで飛び出して足が止まる。
目の前に鉄骨が突き刺さる。
すさまじい轟音を立てて落ちてきた鉄骨に足がすくんだ。
こんなの、あたったら、しんじゃう。
「そ、めおか…?」
声が震える。
何も、見えない。
角馬くんがなにかを叫んでる。
土埃が目に入って痛んだけれど、そんなの気にしていられなかった。
染岡、染岡が。
徐々に土煙が晴れてきた。
染岡がいた位置に目を凝らす。薄暗い中に大きな影が見える。
ついさっきまで染岡のいたそこには鉄骨が突き刺さっていた。
「―――!」
まさか
そん、な
目を見開いた。
息が出来ない。
頭の中が真っ白になる。
「う、そ…だ…」
声を絞り出す。目を逸らせない。
手が震えて、足も震えて。
そめおか、が まさか
「…!」
煙が薄くなる。
ふと、鉄骨のすぐ傍に人影を見つけた。
地面に座り込んでいる影。
「そめおか…っ」
染岡は無事だった。
地面に尻餅をついているけれど、鉄骨を凝視しているけど、無事だった。
一気に体中の力が抜けていく。
整備された芝生の上に座り込む。
完全に腰が砕けていた。
土煙の晴れたフィールドを見回すと、みんなポカンとしていたが無事だった。
誰も怪我は、してなさそうだ。
(よかった…本当に良かった…)
呼吸をする。大きく息を吸う。
原作どおり、みんな無事だった。
「ッ凪木ちゃん!!!!!」
切羽詰った秋ちゃんの声。
振り返ろうとして、視界に違和感。
そのまま顔を上げると大きく倒れこんでくる鉄骨があって、
あ。立てない。
つぶれる。
鈍い痛みが全身に巡って私は意識を手放した。