Phototaxis
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放課後。
私は図書室に寄ろうと足を向けていた。
放課後で少なくなった校内を歩く。
雷門の図書室は一階にある。
どの学年の生徒も利用しやすいようにとの配慮らしいが、私のクラスからは一番遠い位置なので結構辛い。
何冊も借りてしまったときには後悔しかない。
けれど一階の落ち着いた雰囲気は本を読むのに最適で、結局五分五分くらいなのだけど。
一階について廊下を曲がろうとしたら人影が飛び出してきた。
「わっ」
「うわっ!」
避け切れなくて衝突する。
あまり勢いが無かったおかげかお互いにちょっとよろめいただけで済んだ。
しかし、同時にバラバラと何かが地面に転がる。
慌ててそれを拾えば、衝突相手の腕から零れたのはバトンだった。
(ん?バトン?)
拾いながら顔を上げると金髪とやけた肌、それから陸上部のユニフォームがせっせとバトンを拾い上げている。
間違いない、宮坂だった。
風丸の後輩で、陸上部。風丸に憧れていて、…あとはよく知らない。けど、犬属性だとおもう。
「あ、あのすいませんでした」
「え?ああううん、こっちこそごめんね」
「いえ、」
軽く頭を下げて、へにゃりと笑う。
風丸が居ないとこんな感じなんだなぁとぼんやり考えて、バトンを手渡そうとした。
既に宮坂の手の中には大量のバトンが握られていて、私のを加えると溢れてしまいそうだった。
「ええと、陸上部だよね」
「?はい」
「運ぶの手伝うよ」
「えっ、そんな大丈夫ですよ!見ず知らずの人に手伝ってもらうなんて」
「凪木っていうの、君は?」
「み、宮坂です」
「ほらこれでいいでしょ?」
「……はい、じゃあ、校庭までお願いします」
ちょっと無理やりだったかもしれない。ごめん。
宮坂の腕の中からいくつかバトンを引っこ抜いて抱える。
それから「こっちです」と言われて宮坂と並んで歩いた。
「なんかすいません」
「いいよ別に、私も暇だったし」
「…凪木先輩って三年生ですか?」
「ううん、二年だよ」
「そうなんですか?」
「…見えない?」
「というか、中学生に見えないです」
(それはそれで凹む)
なーんて、冗談ですよと笑う宮坂。
その笑顔は女顔負けに可愛い。
これで男の子なんだから世間は不平等だ。
まじまじと笑顔を見つめていると、照れたのかあんまり見ないでください、といって顔を赤くさせた。
う、うわぁ…可愛い…
「ずるい」
「え?」
「なんでもないよ」
校舎裏を突っ切って、最短距離で校庭に着いた。
上履きのままジャリを踏んで、陸上部の物品が置いてあるところまで進む。
「この辺に下ろしといてください」
「うん」
腕の中のバトンを地面に置く。
数の確認をしている宮坂を横目に校庭を見やる。
タイムの計測をしているマネージャーがいて、走っている選手が居て、それからそれを見ている部活メンバー。
(みんな頑張ってるなぁ)
「よし、数もぴったり!凪木先輩ありがとうございました!」
「ううん大したことじゃないよ」
にこりと笑う宮坂につられて笑う。
笑顔の可愛い子だなあと思いながらじゃあねと手を振る。
「はい、また」
「部活頑張ってね」
「もちろん!」
宮坂と歩いた道を逆向きに進んで、上履きの砂を落とす。
細かい砂を土落としで払って私は図書室に向かうのだった。